機動戦士ガンダム ギレン、ハマーン、シャアの次なる答え――ジオンの最高頭脳、サナリィの最新ガンダムで宇宙世紀を総決算する   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

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ガンダム強奪【U.C.0120】

宇宙世紀0120年10月。

地球圏の軟弱な連邦市民どもが「宇宙世紀も120年だしキリが良いよね! 小型モビルスーツ最高! アナハイム・エレクトロニクス社一強の時代も終わってこれからはサナリィの時代だよ!」と、歴史の教訓をドブに捨ててピクニック気分で平和を満喫している、まさにその瞬間――。

 

火星のオリンポス・ベースを一望する極寒の岩陰。

火星独立ジオン軍(通称:オールズモビル)が誇る突撃機動部隊の最前線に立つ若きエース(自称)であり、その本質は「シャルル・ロチェスター閣下の『一年戦争は良かった、ジオン公国万歳!』という終わらない居酒屋の愚痴に毎日つき合わされた結果、脳内のジオン魂が変な方向に沸騰してしまった哀れな男」、ディーツ・ヴァルター少尉は、愛機である『RFザク』のコックピットの中で、興奮と緊張、そして重度の胃もたれで内臓がよじ切れる一歩手前だった。

 

「ひゃっほーーう! ついにこの日が来たぜ! 待ってろよ、地球連邦軍の温室育ちの坊やども! お前らが大事に育てた最新のガンダム、このオールズモビルが美味しくいただいてやる!」

 

ディーツが叫びながら操作レバーを握りしめると、シートを通じて最新型のジェネレーターが唸りを上げた。

彼の頭の中にあるのは、これまでの2年間に及ぶ地獄のような「レトロ浪漫教育」の記憶だ。

 

「おいディーツ! ザクのモノアイの残光は、もっとこう、連邦兵のトラウマを呼び起こすような『ヌラァ……』とした動きをさせんか! 今の輝きでは第1次ネオ・ジオン抗争の時にアクシズのキャラ・スンが乗っていたR・ジャジャのビームのようにチャラチャラしているぞ!」とか、「ゲルググのシールドは、背中に背負った時に『男の背中』を演出してこそジオンの伝統! サナリィのあのスタイリッシュなシールドなど、ただのまな板だ!」といった、シャルル閣下からの熱烈(物理的な修正つき)な指導。その洗脳に近い特訓の成果を披露する舞台が、今まさに目の前に広がっている。

 

「ディーツ少尉、悪ノリがすぎるぞ。通信を傍受されたらどうする」

 

通信ウィンドウに映ったのは、今回の作戦で『RFドム』を駆る先輩パイロット、エリック大尉だ。彼は一年戦争を全く知らない世代でありながら、火星の過酷な芋掘り労働から逃げ出すためだけにオールズモビルに入隊した、現実主義という名の確信犯である。

 

「大丈夫ですよエリック大尉! 連邦軍の奴ら、未だにこちらの『RFシリーズ』の機体識別信号を、30年以上前の『ただのザクII』とか『ドム』だと誤認して大混乱していますから! レーダーの画面を見て『おい! なんで骨董品ミュージアムから逃げ出した旧式が、ジェガンの3倍のスピードで接近してくるんだ!?』って、泡を吹いて気絶している頃です!」

 

そう、これこそがオールズモビルが長年蓄積してきた「テクノロジーの嫌がらせ」の神髄であった。

外見は完全に一年戦争のレトロモビルスーツでありながら、中身はアナハイム社から密輸した最新の駆動系とガンダリウム合金、そして高出力ジェネレーター。

つまり、連邦軍が「なんだ、ザクか。骨董品め」と油断して近づいた瞬間、中身が最新鋭の『RFザク』が、ジェガンを遥かに凌駕する超スピードで突撃し、高出力ビーム・サーベル(外見はただのヒート・ホークに偽装)で一刀両断にするという、最悪の初見殺しトラップなのだ。

 

「全機、突入! オリンポス・ベースの防衛網を食い破れ! サナリィの白い悪魔の首を、シャルル閣下への最高のプレゼントにするのだ!」

 

ディーツの絶叫とともに、オリンポス・ベースの防衛ラインに火線が走った。

 

ドガァァァン!!

 

ベースの対空レーザー砲座が、ディーツの放ったRFザクのビーム・ライフル(外見は旧式のザク・マシンガン風)の一撃で、一瞬にして爆辞(爆発して消滅)した。

連邦軍のジェガン隊が慌てて迎撃に飛び出してくるが、彼らの顔はコックピットのモニター越しでも分かるほど絶望に染まっている。

 

『う、嘘だろ!? なんでドムがあんな鋭いステップで俺のビームを避けるんだ!? しかもあのドム、ホバー移動じゃなくて全身の姿勢制御バーニアで星型を描くように動いてやがるぞ!』

 

『隊長! ゲルググです! ゲルググがビーム・ナギナタをジャグリングみたいに回しながら、こっちのシールドをバターみたいに切り裂いていきます! 宇宙世紀0079年にタイムスリップしたのか!?』

 

悲鳴を上げる連邦兵たちを、エリック大尉の『RFドム』が容赦なく拡散ビーム(の皮を被った最新の高出力大口径ビーム砲)で焼き払っていく。

 

「ふん、地球圏の流行に乗って『モビルスーツの小型化』などとほざくからこうなるのだ。全高15メートルのひょろひょろした体躯で、我がジオン伝統の『重量感(マッシブ)』に勝てるわけがなかろう!」

 

エリック大尉まで、すっかりシャルル閣下のレトロジオン構文に染まっていた。

そして、大混乱に陥ったオリンポス・ベースの中央格納庫のハッチを、ディーツのRFザクが力任せにブチ破る。

 

バリバリバリィィン!!

 

「見つけたぜ……! サナリィの最高傑作、フォーミュラ計画の申し子!」

 

崩れ落ちる隔壁の向こう、最新のメンテナンス・ベッドに鎮座していたのは、地球連邦軍がすべての威信をかけて開発した最新鋭小型モビルスーツ『ガンダムF90』の2号機であった。

1号機がどこへ行ったかは知らんが、目の前にある2号機の、これでもかと洗練された白い装甲、頭部のツインアイ、そして「僕、最新型です!」と言わんばかりのスマートなシルエットは、ディーツのジオン魂を最大級に逆撫でするに十分な美しさだった。

 

「へっ、随分と小綺麗にまとまってやがる。だがな、お前は今日から、この火星のむさ苦しいオヤジ残党どものアイドルになってもらうんだよ!」

 

ディーツは手際よくコックピットから飛び出すと、F90のハッチを開け、驚愕して腰を抜かしているサナリィのテストパイロットの首根っこを掴んで外へと放り投げた。

 

「おい、ちょっと待て! そいつのOSはサナリィの最新プロテクトがかかっているぞ! パスワードを解除しないと動かん!」

 

ハンスら整備班の声が無線から聞こえるが、ディーツは不敵に笑った。

 

「ハンスさん、俺たちオールズモビルを誰だと思ってるんですか? アナハイム社の裏ルートから事前に仕入れた『サナリィのパスワード漏洩リスト・完全版』を舐めないでください!」

 

ディーツはコックピットのコンソールに、あらかじめ用意していた違法データチップを『ガシャコン!』と力任せに叩き込んだ。

次の瞬間、F90(2号機)のツインアイが、まるで魂を奪われたかのように怪しく点滅し、システムが起動した。

 

『システム・オールグリーン。サナリィ・フォーミュラ90・2号機、起動します』

 

「よっしゃあ! ガンダム強奪、完全成功だ! おい連邦の坊やども、この機体は俺たち火星独立ジオン軍が、もっと『漢(おとこ)らしい』デザインにリフォームしてやるからな!」

 

ディーツがガンダムF90(2号機)の操縦桿を引くと、その驚異的なレスポンスに、彼の身体がシートへと激しく押し付けられた。

 

(う、ウソだろ……!? なんだこの加速は!? ジェネレーターが小さいくせに、我が軍のRFゲルググの倍近いパワーが出てるぞ! これが……地球圏の、サナリィの技術なのか……!?)

 

一瞬、ディーツの脳裏に「これ、わざわざ旧式のザクの形にするより、このままの形で量産した方が絶対に強いのでは?」という、オールズモビルの根本的な存在意義を揺るがす禁断の正論(事実)が浮かびかけた。

だが、彼は必死で首を振り、脳内の邪念をかき消した。

 

(いかんいかん! そんなことをシャルル閣下に言ったら、また『一年戦争のジオンの精神が分かっておらん!』って、生身でノーマルスーツを着せられて火星の地表に放り出される! ジオンはロマンなんだ! カッコよければそれでいいんだよ!)

 

「全機、撤退する! お宝は手に入れた! あとは基地に持ち帰って、こいつをジオンの伝統色(赤と黒の過激派カラー)に塗り替え、トゲ付きのスパイクでも肩に溶接してやるぜ!」

 

強奪されたガンダムF90(2号機)は、オリンポス・ベースの滑走路を蹴り、驚異的な跳躍力で火星の赤い空へと舞い上がった。

残された連邦軍の兵士たちは、燃え盛るベースの残骸の中で、ただ呆然と、自分たちの最新鋭機が「ザクやドムの群れ」に誘拐されていく、宇宙世紀の歴史上最も間抜けな光景を見上げるしかなかった。

 

宇宙世紀0120年10月。

地球圏のサナリィ本部が「我が方の新型ガンダム、火星で大活躍中!」という偽りの祝杯を挙げる準備をしていたまさにその裏で。

火星獨立ジオン軍(オールズモビル)は、連邦の最新技術の結晶を手に入れ、その狂気と妄執をさらに加速させていた。彼らはこれから、この強奪したガンダムを『火星独立ジオン軍仕様(オールズモビル仕様)』へと徹底的に、そして最高に悪趣味に改造する暗黒の儀式へと突入する。

一年戦争から40年。神話の亡霊たちが、ついに本物の「ガンダムの力」を手に入れた。この事態が、地球圏から巡洋艦『アドミラル・ティアンム』を中心とする第13実験戦術部隊という名の、本気の激怒(追撃の艦隊)を呼び寄せることになるとも知らず、ディーツたちは火星の地下ドックで、勝利の芋酒の樽を開けてバカ騒ぎを始めるのであった。

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