機動戦士ガンダム ギレン、ハマーン、シャアの次なる答え――ジオンの最高頭脳、サナリィの最新ガンダムで宇宙世紀を総決算する   作:寝て起きたら異世界じゃなくて会議室だった

22 / 24
追撃の艦隊【U.C.0120】

宇宙世紀0120年11月。

地球圏の平和ボケした連邦政府の上層部どもが「いやー、ガンダムF90の2号機が火星で強奪されたって報告書があるんだけど、何かのギャグかな? 犯人はザクやドムに乗った旧ジオンの亡霊? 宇宙世紀120年だぞ? 100年前のミイラが歩いてピラミッドを襲撃したって言われた方がまだ信じられるよ!」と、現実逃避の極致みたいな書類を回し合っている頃――。

 

火星へと向かう暗黒の宇宙空間を、怒りの超高速で爆進する地球連邦軍第13実験戦術部隊の急襲巡洋艦『アドミラル・ティアンム』。

その極限まで冷え切ったブリッジの特等席で、今回の奪還作戦の総指揮を執る地球連邦軍第13実験戦術部隊の指揮官、中将(自称・連邦軍の良心、本質は「エリートコースを歩んできたのに、なぜかサナリィの変態ハイテク玩具のケツ拭き役に選ばれてしまい、胃に穴が開きそうな哀れな男」)のナバロ・アーキントンは、自身の血管が『ラー・カイラム』の主砲並みの圧力で破裂する寸前だった。

 

「ええい! サナリィの技術者どもはどこだ! どこに隠れた! 今すぐ私の前に引きずり出して、あの『ガンダムF90(2号機)』のメインキーに『ジオン万歳』という文字列を打ち込んだだけでシステムが全開でハックされた理由を、一晩中問い詰めてやる!」

 

ナバロの罵声が、最新鋭のデジタル計器が並ぶブリッジに木霊した。

彼の脳内を占拠しているのは、地球圏のまばゆい社交界への未練と、それを一瞬で粉砕した「火星のレトロマニアども」への激烈な殺意であった。

 

本来であれば、ナバロは今頃、サイド1の高級リゾートコロニーでアナハイム・エレクトロニクス社の重役から「いやー、やっぱりこれからの時代も我が社のジェガンですよ、ハッハッハ」という接待ゴルフに興じているはずだった。

それがどうだ。サナリィがドヤ顔で火星に持ち込んだ最新鋭の小型モビルスーツが、配備されて数日で行方不明。しかも犯人は、地球圏では20年前に絶滅したはずの『ジオン』の名を騙る、通称『オールズモビル』とかいう、地下に30年も引きこもって芋を食っていた骨董品オタクの集団だという。

 

「ナバロ閣下、どうか落ち着いてください。サナリィのチーフメカニックは現在、1号機の擬似人格コンピュータ『AR(アムロ・レイ仕様)』の調整に忙しく、『過去の天才のデータをロード中なので話しかけないでください』と、部屋に引きこもって出てきません。それより、火星の周回軌道上に到達しました。連邦軍のプライドにかけて、あの強奪された2号機を即座に回収しなければ、我々は全員、来月から地球のパプアニューギニアのジャングルで、作業用モビルスーツのサビ取り係に左遷です!」

 

副官の若い大尉(グリプス戦役もシャアの反乱も全部シミュレータの歴史ゲームだと思っている、お気楽な20代)が、タブレット端末を片手に軽薄な声を上げた。

 

「分かっている! だからこそ、我が第13実験戦術部隊が誇る、現役最強の量産機『ジェガン』の改良型、およびサナリィが泣きながら調整した『ガンダムF90(1号機)』を現役に投入するのだ! 見ろ、あの火星のオリンポス山周辺の熱源反応を! 奴ら、強奪した2号機をあろうことか、全身真っ赤に塗り替えて、肩にトゲを溶接しようとしてやがるぞ!」

 

ナバロは、光学モニターに映し出された拡大映像を指差して歯ぎしりした。

 

画面の向こう、赤い砂塵が舞うオリンポス山の渓谷には、信じられない光景が広がっていた。

最新鋭のスタイリッシュな全高14.8メートルのガンダムF90(2号機)が、あちこち解体され、その上からわざわざ「重くて、空気抵抗が大きくて、宇宙世紀0079年の旧公国軍っぽいスパイクアーマー」を無理やりボルトでねじ込まれているのだ。その周りを取り囲むのは、中身は最新、見た目は完全にファーストガンダムの『RFザク』や『RFドム』の群れである。

 

「おのれ……! サナリィが何百億連邦ドルもの開発費を投じて、1グラム単位で軽量化した最新のガンダリウム合金装甲の表面に、わざわざ重たい鉄板を溶接するとは、どんな悪質な嫌がらせだ! アナハイムのデザイナーが見たら、ショックで泡を吹いて倒れるぞ! あいつらの脳内はどうなっているんだ!?」

 

「閣下、我が軍の戦術データバンクによると、火星のオールズモビル兵たちの間では『トゲが多ければ多いほど、モビルスーツの出力が3倍になる』という、一年戦争時代の謎の都市伝説が未だに信じられているようです。さらに、あの2号機のコードネームを、勝手に『火星独立ジオン軍仕様・シャルル専用ガンダム』に変更しようと登録申請を試みた形跡があります。もちろん我が軍のサーバーが弾きましたが」

 

「当たり前だ!! そんなふざけた登録を認めたら、私の退職金が文字通り宇宙の藻屑になるわ!!」

 

ナバロは頭を抱えた。

地球連邦軍の軍事官僚として生きてきた彼にとって、モビルスーツとは「効率」と「予算」と「スペック表」の乗り物であるべきだった。それなのに、火星の残党どもは「見た目がザクっぽいからカッコいい!」「ドムの十字モノアイこそが宇宙の真理!」という、完全に10代の暴走族のような『ノスタルジーとロマン』だけで、最新兵器のシステムを改造しているのだ。

 

「全機、降下作戦を開始せよ! ガンダムF90(1号機)を先頭に、ジェガン隊はオリンポス山の渓谷へ突入! 骨董品マニアどものプラモデル展示会を、本物の軍隊の力で木っ端微塵にしてやれ!」

 

『アドミラル・ティアンム』のカタパルトから、青い光を放ちながら『ジェガンAタイプ』の部隊が次々と火星の赤い大気圏へと飛び出していった。そしてその中心には、1号機のパイロット(連邦軍の超エリート、本質は「ガンダムに乗っているから自分が世界で一番偉いと勘違いしている」若者)が駆る、青と白の『ガンダムF90(1号機)』の姿があった。

 

「いくぞ、火星の芋掘り残党ども! 僕のガンダムF90の新型ミッションパック(ヴェスバー試作型)のサビにしてくれるわ!」

 

1号機のパイロットが通信回線で威勢よく叫び、オリンポス山の防衛線へと突撃する。

連邦軍の誰もが、この圧倒的なスペックの差で、火星のレトロモビルスーツなど一瞬でスクラップにできると確信していた。

 

だが、現実は甘くなかった。

 

ドガァァァァン!!

 

「な、なんだと!? 僕のジェガンのビーム・ライフルが、あの古臭いゲルググのシールドに弾かれた!? バカな、あのシールド、表面はただの鉄板なのに、中身に最新の『対ビーム・コーティング・ナノレイヤー』が3層も重ねて塗られてやがるぞ!」

 

『隊長! 助けてください! ザクです! ザクIIみたいな緑色の奴が、こっちのジェガンのバックパックを掴んで、そのまま火星の岩盤にスープレックスを仕掛けてきました! なんだあいつらの馬鹿力は!?』

 

『うわあああ! ドムだ! ドムの群れが、ジェット・ストリーム・アタックの軌道を描きながら、中身は最新の「熱核ジェット・エンジン」で時速400キロメートルでホバー接近してくる! 動きが速すぎて、ジェガンの照合センサーが「ただのバグ」として処理しちゃいます!!』

 

モニターから流れてくる第13実験部隊のパイロットたちの悲鳴は、さながら「最新のスポーツカーに乗ったお坊ちゃんたちが、中身をフルチューンした魔改造仕様の軽トラックの集団に、峠道で煽り倒されている」ような、最悪のパニック状態であった。

 

「ええい、何をやっているんだ現役兵どもが! 相手は30年前のザク(の皮を被った化け物)だぞ! なぜジェガンが次々とドブネズミのように叩き落とされるんだ!?」

 

ナバロはブリッジの机を叩いて絶叫した。

 

「閣下、データが出ました! 敵の『RFシリーズ』、外見こそ旧式ですが、アナハイム社の闇ルートから横流しされた『宇宙世紀0115年製・高密度ジェネレーター』を強引に2基並列(ツイン・ランナー)で搭載しています! そのせいで、機体バランスは最悪ですが、直線的な推力とパワーだけなら、我が軍のジェガンを完全に凌駕しています! あいつら、扱いやすさを完全に犠牲にして、パワーと見た目だけに全振りをしている、本物の狂人です!」

 

「アナハイムめ……! 後で絶対に会計監査の鉄槌を食らわせてやるからな……! だが、我が軍にはサナリィの最高傑作、1号機があるはずだ! 1号機はどうした!?」

 

ナバロが視線を向けたモニターには、ガンダムF90(1号機)が、ついに改造途中の2号機(シャルル専用ガンダム・プロトタイプ)と対峙する姿が映し出されていた。

 

『へっ、来たな連邦の双子ちゃん! 1号機の坊や、そのひょろひょろした体つきで、この火星の重力に耐えられるかな!?』

 

2号機のコックピットから聞こえてくるのは、オールズモビルの若気(悪ノリ)の至り全開のパイロットの声だ。

2号機は、まだ背面の換装プラグが剥き出しの未完成状態でありながら、強奪したサナリィの最新ビーム・サーベルを、あえて「ジオン伝統のヒート・ホークの柄」に強引に溶接した謎の武器を構えて、1号機に向かって突撃してきた。

 

『笑わせるな! 旧時代の亡霊が、ガンダムの真の性能を引き出せるわけがないだろう! 落ちろ!』

 

1号機がサナリィ自慢のビーム・ライフルを連射する。

しかし、2号機のパイロットは、サナリィの最新OSをハッキングしたことで「F90の照準アルゴリズムのクセ」を完全に把握していた。2号機は、まるで1号機の弾道があらかじめ見えているかのように、火星の赤い砂煙の中を最小限の動きでステップし、すべてのビームを紙一重で回避していく。

 

『な……なぜ当たらない!? 敵はガンダムの挙動に慣れていないはずなのに!』

 

『お前たちの最新OSのパスワードが「0079_SANARY」のまま放置されてるからだよ、このマヌケどもがァァァ!!』

 

2号機が、その驚異的な推力で1号機の懐に飛び込んだ。

そして、ジオン仕様に改造されたヒート・ホーク(中身は高出力ビーム・サーベル)の強烈な一撃が、1号機の盾を真っ二つに叩き割った。

 

ズガァァァン!!

 

『うわあああ!? ぼ、僕のガンダムが……!』

 

1号機はたまらず、火星の赤い大地へと無様に転がった。

その様子を周回軌道上のブリッジで見せつけられたナバロは、ついに持っていた高級ボールペンをへし折り、白目を剥きそうになっていた。

 

「お、終わりだ……。連邦軍の最新鋭機が、パスワードの管理不足で強奪された挙句、1号機まで返り討ちに遭うなんて……。この戦闘記録が地球圏の議会に提出された瞬間、私は来週から、サイド4の廃棄コロニーの『宇宙ゴミ(デブリ)回収船』の船長に就任することが公式に確定してしまう……!」

 

「閣下! 諦めるのは早いです! 敵の2号機も、無理な魔改造の負荷のせいで、機体各所の油圧回路から盛大にオイルが漏れ始めました! 奴ら、勝ち誇りながらも、じわじわと後退を始めています! オリンポス山の防衛戦は、我が軍のジェガン隊の数(物量)の前に、敵もこれ以上の追撃は不可能です!」

 

オペレーターの報告通り、2号機を回収したオールズモビルの軍勢は、それ以上の深追いを避け、オリンポス山の地下へと続く巨大なシャッターの向こうへと、煙を巻き上げながら一斉に引いていった。

 

「ひ、引いてくれたのか……? 助かった……。いや、助かってない! ガンダム2号機は完全に奴らの地下のオタク部屋(秘密基地)に持ち去られてしまったではないか!」

 

ナバロはブリッジの床に両膝をついた。

第13実験戦術部隊は、火星の独立ジオン軍をオリンポス山周辺の戦闘で一時的に退けた(という形にして書類上は『我が軍の勝利』と報告する)ものの、その代償はあまりにも大きかった。最新鋭のガンダムF90(2号機)は、今や完全にオールズモビルの手に渡り、彼らの妄執に満ちたカスタマイズによって、これからの宇宙世紀の常識を破壊する「最凶のレトロ・ガンダム」へと生まれ変わるための、完全なリフォーム期間を与えてしまったのだ。

 

宇宙世紀0120年11月。

地球連邦軍第13実験部隊による「ガンダム奪還作戦」は、公式記録には『敵の拠点を撃破し、火星圏の治安維持に貢献した』と華々しく記載されることになる。

しかし、その報告書の裏で、ナバロ中将がストレスで毎晩のように火星の特産ポテトチップスをヤケ食いし、胃薬を炭酸水で流し込んでいた事実を、地球圏の市民は誰も知らない。

そして、オリンポス山の地下深く、勝利の歓声に沸くオールズモビルのドックでは、シャルル・ロチェスター閣下が満面の笑みで「よし、あの白いガンダムの顔に、ジオンの魂である『動力パイプ』を3本ほど増設してやれ!」と、サナリィの設計思想を根本から全否定する、暗黒の魔改造指示を出し、さらなる大動乱(第二次オールズモビル戦役)の火種が、着実に赤く燃え上がっていくのであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。