チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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バーン!

「バーン!」

 

 唐突にでかい音と大きな声が聞こえてきて、私は慌ててドアの方を見た。そこにはオーバーオールを身に着けて麦わら帽子を被ったテオが立っていた。

 

 \(^o^)/オワタ

 

 私はがっくりと肩を落とし、串焼きのホルモンを食ってたホレスとジャスミンがびっくりした顔でテオを見る。でもテオはそんなことおかまいなしで、小屋に入ってくる。

 

「この間から美味そうな匂いがしてたっす!」

 

 嬉しそうに言うテオに私は叫んだ。

 

「どっから嗅ぎつけた!?」

「木に登った時っすね!」

 

 しまった! 煙突の形に作った結界の出口は、かなり高いところにした。それが逆に風に乗って遠くへ香りを運んでしまったらしい。

 私はorzになった。スカーレットやメイプルにバレてないと思ってたら、意外なヤツにバレた!

 

「くっそー! 私のちょっとした楽しみの時間が終わってしまった!」

「えー。俺にも食べさせてくださいっす!」

 

 会話になってねえ! 仕方なく私はテオに言った。

 

「食わせるのはいいけどさあ。黙ってろ……って無理だな」

「え!? もしかして内緒ってことですかね!? 俺、口は堅いっすよ!?」

「どの口が言うか、どの口が!」

 

 三人旅をしたから判る! こいつは口が軽いというか、何でも言う! 本人に悪気があるかどうかじゃない! 無意識だから余計にたちが悪い! 私はテオのズボンを引っ張って上下に揺すった。でもテオは全く動じていない。

 

「ジャスミンさんとホレスさんが食べてるの、何っすか!? 魚じゃないし、形が肉っぽくないし。あ、でも匂いは肉っぽい!?」

 

 ホントにおかまいなしで、テオがホレスとジャスミンに訊ねる。二人が顔を見合わせ、黙ったまま困ったように私を見る。あーあーあー! 判った判った! 二人には口止めしてるから、説明出来ないんだよね!?

 

「あー……ホルモン焼きだよ。よーするに内臓。これは牛」

「えっ!? 内臓って食えるんっすか!?」

「処理すれば食えるです」

 

 私は能面のような顔(多分)でテオに答えた。するとテオが目をキラキラさせて七輪の上で焼いてる串焼きを見る。しかも七輪を囲んで座ってるホレスとジャスミンと同じように、床に座った。図々しいな、コイツ! 今さらだけど!

 

「いい匂いっすねー。でも、最初に嗅いだ時から初めてな気がして」

「私が作った醤油だからな」

 

 私はまた淡々と返事をした。するとまたテオがキラキラとした目で私を見る。

 

「お嬢様は調味料も作れるんすね!」

「まあ、そうだけど……食う?」

 

 仕方なく丁度良く焼けたホルモン串を七輪から取り上げてテオに差し出す。するともの凄い速さでテオが串を受け取る。どんだけ欲しかったんか!

 

「うまっ、もぐもぐもぐ、すごく、もぐもぐもぐ、美味いっす! もぐもぐもぐ」

「食うか喋るかどっちかにしろし!」

「でも、もぐもぐもぐ、初めての、もぐもぐもぐ、味で、もぐもぐもぐ、嬉しい、もぐもぐもぐ、っす!」

 

 まだテオが食いながら喋る。あー……そいえばホルモンって、ものによっては噛む時間が長くなったりするよね。噛みきれないっていうか? だからもぐもぐが続いてるのかも知んない。ってか、何で間で喋ろうとするのか!

 

 前にホレスとジャスミンには訊いたんだけど、テオにも気になってることを訊いてみることにした。

 

「ねえ。テオは魚醤とか知らない?」

「ぎょ……? なんっすか?」

 

 ようやく飲み込んだテオがやっぱり不思議そうに言う。自動翻訳機があるから、色々な名前があっても魚醤で通じると思うんだよね。転生前世界日本で読んだ漫画には、しょっつるとか出てた。ガルムって言うぽい? そこだけ妙に覚えてるなあ。あの風呂漫画、続きが気になる!

 

 しまった。今はそういう話じゃない。

 

 とにかく醤油っぽいものがこの世界にないらしい、ということは判った。ホレス、ジャスミン、テオはそれぞれ別のとこにいたっていうから、ないものと考えてもいいと思う。もし存在するんなら、厨房で使っててもおかしくないし。前みたいな肉肉しい飯じゃなくて、今の料理なら使えると思う。あ、でも前みたいな米女子農婦もいるか?

 

 そんなことを考えてたら、テオが七輪で焼けたホルモンを次々に口に入れる。奪うように取られた串焼きを見て私は悲鳴を上げた。ごらあ!

 

「それ、私の!」

「えっ、そうだったんすか? まあまあまあ! また焼けばいいじゃないっすか」

「レア肉だからたくさんはねえんだよ!」

 

 そう言ってる間にテオが串焼きを口に運ぶ。私は立ち上がってテオにビンタをかまそうとした。でも私の手は避けられてしまう。がー! 私も訓練してるけどもバトルスキルは使用人の方が高いことが多いんだよ!

 

「くっそー! 覚えてろ!」

「ははは! お嬢様っていつも元気っすよね!」

 

 はー、とため息を吐いて、私はこれまで黙ってたジャスミンとホレスを見た。

 

「もう喋っていいよ。一応、ここで。テオが言い触らすのは時間の問題だと思うけど」

「リディアお嬢様の命令をきけないとは! 言語道断!」

 

 ジャスミンが絶対に言おうと決めていたのか、大きな声でテオに言う。けど、テオはどこ吹く風。いつもだけどね!

 

「仕方ないじゃろ。テオは鼻がいいからのお」

「くっ! 自分とホレス先輩だけの特権だったのに!」

「特権ってなんだよ」

 

 私はジャスミンに突っ込みを入れつつ、これで最後になるかも知れないホルモン焼きを口に入れた。スカーレットにバレたらどんだけ正座させられるんだろ、という不安に駆られる。でも美味しいものは食べる!




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