チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
転生前の私は現代(二年前)の日本で飽食時代に生きていた。主食の米も色んな料理になってたし、パンだって色んなものがあった。調味料もありとあらゆるものがあって、料理だって日本食以外にも色々あった。中には私が苦手なものもあったけど、それを食べずに別を食べる、という選択肢もあった。
なのにー!!
パン、ないんかい! それともパンがなければお菓子を食べれば、とかいう話か! だってケーキにはパンケーキのような何かを使ってるじゃん! だから主食はパンだと思い込んでたよ! おのれ。食改革を求む。
主食の他にはスープもあったりするけど、具はない。元は野菜が入ってる雰囲気があるんだけど、徹底的に潰されているか、煮崩れまくっている。つまり何が入ってたのか判らない状態になっているということ。煮えた野菜を潰して牛乳で延ばしたりしてるんだったら、ポタージュスープと言えなくもないけど、そこまで滑らかじゃない。ミルクの香りもしない。何ならこれ、離乳食だよね!? というものだ。ていうか、牛乳とバターはあるんだよね!? なんで使わない!? 特に牛乳なんて牛(の乳)を絞れば出るだろが!
そしておかずがつらい。とにかく肉肉肉肉。一年以上、オートミール粥だったから、最初に食べた時にはこんな美味しいものがあるのか、と本気で思った。……長い離乳食期間って怖いね★
でもそれが続いたらさすがに辛いんだよ! しかも牛オンリー! 何なの、この家、大量の牛飼ってるのか!? だから牛がやたらと出てくるの!? というくらいに、牛肉オンパレードなのだ。アラフィフ主婦(自称)に対する嫌がらせか!? 確かに転生して若くなってるけども、そんなに食べたら胃がもたれるってば! しかも出てくる部位によるのか、日によっては硬いのなんのって。幼児にこんなもん噛み切れるわけねーだろ! しかもこんな薄味でどーしろと!? ソースはどこよ!? という食生活が続いてる。
だがしかし、正直にマズ飯だと言ってもいいもんかも判らん! だってアーサーもスカーレットも普通にその飯を食ってるんだもん。もし彼らが美味しいと思ってるのなら、私の味覚の方が変ということになるし。
なので、私はまた(根性で)目をうるうるさせて、お勉強をしたい、とねだったのだ。何度も必死で頼んだらやっと書庫への入室許可が出た。OH...。むしろ必死で頼まないと許可が出なかったことに驚きだよ。転生前世界の日本だったらあり得ない気がするよ。教育方針にもよるけどさ。
私が最初に知りたかったのは植生について記されている本だった。草木にも食用のものがもっとあるはず! という希望を抱いて本を読み漁ることにしたのだ。
アーサーやスカーレット、使用人が着てる服とかから考えると、この世界は転生前世界の中世くらいのヨーロッパに似てるとは思う。私が着せられているのもふりふりの子供用ドレスだし。生地は妙にすべすべで柔らかい。この手触りは絹か? ……粗相したらどーすんだ、これ、と言いたい。ていうか、粗相しないように頑張ってる私を誰か褒めて。
つまりこの家は中流階級以上、アーサーとスカーレットはいわゆるお貴族様だろう。お家柄の話を聞いても間違いないと思う。だから多少、値が張っても食材もゲットしやすいだろうし、食事の改善の余地はありそうと私は考えた。希望的観測だけども。肉だけじゃなくて野菜も欲しいんだよ、切実に!
何ならこの世界が転生前世界の中世ヨーロッパじゃなくてもいい。何なら雰囲気は中世、実は近代でもオールオッケー。某ゲームでもその時代ではあり得ないクリッパーが出てたんだから文句はない。
……は? ジャガイモ警察? 知らんわ、そんなもん! 私は切実なんだよ! 最初は確かにジャガイモ警察を気にしてたけど、異世界なんだからジャガイモがあってもなくても、とにかく食事が美味しいなら何でも良い!
転生前世界の日本人の食の探究心と執着をなめんなよ。