チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
五人で楽しくホルモン焼きとおにぎりを食べてたところに、いきなりスカーレットが来て私たちは硬直してしまった。でも意外なことにスカーレットは正座祭を行わなかった。むしろ七輪の周りに五人と一緒に座っている。一体なにが起きたのか、私だけじゃなくてみんなも判んないらしい。スカーレットが小屋にさっさと入ってきて、私の隣にすぱっと座ったんだもん。てっきり叱られると思ってた私は、ビビりながら声をかけた。
「あ、あの、おかあさま? その、ええと」
「あら。リディア。そろそろこちらが焼けるのではなくて?」
にっこりと笑われた私はキョドりつつ、スカーレットの皿にホルモン焼きをそっと置いた。ホレス、ジャスミン、メアリーも私と同じようにビビっているのか、スカーレットをチラ見しながら動かない。唯一、テオだけがスカーレットと一緒に呑気にホルモンを食っている。空気読まない性格が羨ましいよ!
「まあ! とても美味しいですわ。とろっとした脂がいいですわね」
……スカーレットはどうやって食べながら喋ることが出来るのか不思議。逆にテオはもぐもぐしながら七輪に乗ってるホルモン串をひっくり返している。
「皆は食べないのですか? あ、リディア。貴女は後でこの小屋を改築なさい。もう少し広くないと」
だから何でもぐもぐしながらフツーに喋れるのか! いや、今はそんなことはいい! 私はヤケクソになって網で焼いた肉を皿に入れた。当然、醤油だれである。私が手を出したからか、他三人も恐る恐る食べ始めた。私はしばらく噛んでからホルモンを飲み込み、スカーレットに訊ねた。
「改築って、どうすれば?」
「ですから、ここを少し広くなさい。貴女が料理する場所と、冷蔵箱などを置くところと、食べる場所を広くするのですよ。食卓があった方が食べやすいでしょう? それに貴女が調理するのでしょう? もう少し広くないと、他の調理が出来ないのではなくて?」
やっぱり食べながらスカーレットが言う。言ってることは判るけども! ホルモン焼きと醤油を私が作ってたのがバレてる!? ていうか、食べてる時点で気付いてるとは思ったけど! しかも他の調理!? 何でバレてる!? スカーレットってテレパシーでも使えるんか!?
「近頃、リディアの肌の艶が増したと聞きましたの。きっと何かをしていると思いましたが、なかなか尻尾をつかめなかったのです」
「尻尾をつかむって。ていうか、肌の艶!?」
私がびっくりして自分の頬を触ってると、テオが頷く。
「近頃、もぐもぐ、お肌っゃっゃ、もぐもぐ、すよ、もぐもぐ、お嬢、もぐもぐ、様、もぐもぐ」
「いつの話か! いや、そうじゃなくてね!?」
転生前にプレイしてたゲームの懐かしい誤爆ネタを耳にして、ついつい突っ込んでしまう。ごまかす……必要はないか。言ったのテオだし。それにホレスも頷いている。
「そういえばホルモンを食べられた後は、つるぷるになっておられますのう」
「そうです! リディアお嬢様はさらに素敵に」
「お黙りなさい、ジャスミン」
スカーレットがさくっとジャスミンの叫びを止める。……確かに小屋の中で叫ばれると煩いからね。
「牛の内臓ということは、このホルモンとやらは多くはないのでしょう?」
「そうですなあ。牛を潰す時にとるくらいで」
「ん? 豚も使うんじゃないの?」
私がふと思い出してそう言うと、米女子農婦メアリーが何度も頷く。そしたらいきなりその場が凍り付いた。……というか、みんなの目が私に集中した。待て! メアリーも同意したじゃんか! 何で私!?
転生前世界日本で暮らしてた時に行ってた、食べ放題がある牛○に豚のホルモンもあったんだよ! ちょっち安い方の食べ放題にすると、豚メインになっちゃったりしてたし! あ、多少安い食い放題でも息子娘はガツガツ食ってた気がする! 主に肉だけども! ホルモンって焼くのに時間がかかったりするから、待てなかったらしい。だから私は自分用に焼いてこっそり食べたりしてた。争奪戦になる肉は食べられないから! それに息子娘はホルモンより肉派だったからね。
でもって安めの食い放題には鳥もついてくる。ぼんちりとか。やげんとか。その辺りは食わないのかな、この世界。あ、もしかして内臓枠じゃなくて、逆に肉枠になってるものもあるかも?
おっと、話が逸れてしまった。
ともあれ、豚ホルモンってこっちにないの!? だって豚肉も使うよね!? 今は! 賄いだけじゃなくて、食卓にも豚肉は出てくるし! だとしたら豚もつぶしてるはず!
「どういうことですの、リディア」
案の定、スカーレットに問い詰められた。しかもちょっと私の方に寄っている。あああ、目がマジ。私はその目から逃れようと、メアリーに話を振った。だって私だけ怖い思いしてるの、解せぬよ!
「えーと……メアリーのとこでは豚の内臓も食べてた?」
「はい。こちらみたいな処理は、その、出来なかったですけど、肉は貴重だったので、あたしの田舎では食べてました」
デスヨネ! 聞いた話だとメアリーのとこはあんまし豊かじゃなかったらしいし。当然、牛とか豚とかを仕方なくつぶして食べることもあったと思う。貴重なタンパク源だっただろう。
メアリーに話を振ったのに、スカーレットはまだ私に食いついてくる。おおーい!
「つまり、豚のホルモンも食することが可能なのですね?」
「おかあさま、おかあさま! 食い気味に来ないでください! 怖いです!」
ウマ飯スキー家族だからって、スカーレットがこんなに食いついたのは初めてだ。あら、と上品に笑ったスカーレットが姿勢を戻す。はー……。びっくりした。美人さんが迫ってくると、それだけで迫力あるなあ。ホント。