チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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作業は続くよどこまでも

 淡々と……と言うか粛々と……違うな。黙々と死んだ目(多分)で内臓をひたすら処理し続けた。豚ホルモンって言ってもブツ(材料)がねえだろ、と思ってたんだが……ご丁寧に豚の内臓を氷魔法で超凍らせたものがあったのである。つーか、内臓凍らせてるってどうゆうこと!? と思ったら、まとめて捨てるまではそうやって置いておくらしい。がー! そんなことがなければ! こんなことにはならなかった!

 

 しかも豚の内臓も一応はある程度の処理がされたものだった。OH...。確かに置いとくっても、内容物っていうか、中身っていうか? 色々ついたままだとアレだよね。その気持ちは判る。というか、それも堆肥にしてるらしいから、この島では色んなものをホントに無駄なく使ってるぽい。だから自給自足が出来るんだろうな。

 

 ちなみに海の幸もたまにテオがとってくるらしい。ちょっとは飛行魔法が使えるのと、風魔法が使えるから、島を取り囲む海の際で踏み場があるトコに降りてから風魔法で海の中から海産物をとってくるぽい。だけどそれじゃとれるのは限られる。手間もかかるし。だからこないだ、あんなにはしゃいでたんだな……。

 

 だからここでの魚類は淡水のものが多い。ていうか、ほぼ淡水魚。アシュフォード家肉祭が終了したので、鮭とかマスとかヤマメとかが食卓に出てくるようになった。魚料理もとても美味しいので、スティーブンが研究しまくってるんだと思う。……それか、賄いで作りまくってたか、だ! まあいい! 今は私も食えてるから!

 

 食品とかがあんまりにも島内で完結してるから、前にメイプルにも訊いたんだよ。交易……? 貿易? とかしないのかって。そしたら余ってるものかは外に出すことがあるぽい。詳しくは知らん、と言っていたので、そっち関係の使用人しか把握してないのかも。ここってメイドの他に執事とかもいるしなー。

 

 はー。アレコレ考えてないと、やってらんないよ! 内臓の処理と一緒に要らん部分を畳みまくって捨てて、処理済みの内臓を小分けにして作業台に出して、それをホレスとメイプルとテオ(テオはいつ食えるか判んないから来てる)が包んで、すぐに食べないのはまた凍らせる。フツーなら何回も凍らせたり解凍すると味が落ちると思ったら、氷魔法で凍らせるから問題ないという。便利だな、魔法! ちなみにメアリーがいないのは、米を炊いてないからだと思う! どんだけ米女子農婦か! 今日の侍女をメイプル決めたら、ジャスミンは血の涙を流すという表現がぴったりな感じで追いすがってきた。さすがに怖いわ!! 私もメイプルもドン引きした。

 

 保存前に結界処理もするとなお良し、と、ホレスにチラ見されたからやったよ! 何で私が処理せねばならないのかね!? 結界魔法を使えるのが私だけだから判るけどさ!? テオは転移と飛行魔法をちょろっとくらいしか使えないっていうし。亜空間魔法って言っても使える魔法は様々らしい……って、知ってたけどさ! テオも結界魔法を使えてもよくね!? 私のように特訓すべき!

 

「でもって、何でおかあさまがここにいるのかと小一時間」

 

 さっきから作業には加わらないけど、優雅に椅子に腰掛けてスカーレットがお茶をしばいているのである。しかもお菓子つきで! スカーレットの侍女も平然とお茶をいれたりしてる。私の侍女なメイプルは作業してるってのに!

 

「今日の執務は終えましたのよ。ですからリディアの成長ぶりを確かめに来ましたの」

「うそだー! ホルモン食いたいんだよね!? あっ、もしかして侍女もか!? じゃないと連れてこないよね!?」

 

 私は最近、スカーレットにも気を遣わず喋っている。ついつい丁寧にしなきゃと思ってたけど、もう知らん! 自動翻訳機ばんざい!

 

「あら。まだ食べられないのでしょう?」

「いちいち確認せんでよろしいわ!」

 

 スカーレットがお茶してるとこには、ビーチパラソルみたいのが立ててある。ビーチパラソルの豪華版? レースの縁取りとかがしてあるんだけど、何て名前なのかは知らん。その下で椅子に腰掛けてるんである。とにかくここは外なわけ! 何でわざわざ見る必要が!? しかも周りは背の高い草がぼーぼーに生えてるんだよ!? ある程度は草刈りもしたけどさ! こんなとこでどうして平然としてるんか訊きたい!

 

 とは思いつつも、作業が止まるとスカーレットが突っ込んでくるので、私は仕方なく作業を続けた。それにしても多くね!? 何頭分だよ、これ! 確かに豚は捨てるとこないって聞いたことあるけどさ!

 

 でもこれ、ホントにアーサーに言わなくていいのかと思う。スカーレットはいつも通りにしてるし、食卓でのアーサーも変わりない。私が作ったりすると、うーまーいーぞー! と叫ぶので暑苦しいけども。それにしてもこの家族、ウマ飯スキーがすぎる。私も含めて。私も美味しいものは好きだし、出来るだけのことはしようと思ってるし、小出しだけど知ってることは言ってると思う。砂糖も色々なのを作っちゃったし。あ、七輪と醤油もだな。

 

 でも今回のホルモンはホレスのせいじゃね!? 自分でこっそり食ってなかったら、私も知らなかったんだし! ご相伴にあずかれたのは嬉しいけどさ! 完全処理は私がしたんだから等価交換だろ! でもその先のことは私には関係ねえ! なのに私は作業してるんだよ! 見返りも欲しくなるよ! まあ、豚ホルモンを一緒に食うつもりだから、それが見返りと言われれば納得するしかないけどさ!

 

 確かに豚ホルモンの件は私が悪いかも知れないが、そもそもスカーレットが乗り込んでくるとか思わないし! しかも色々な注文つけられるとか思わないし!

 と、八つ当たりしないと気が済まない作業なう。これ、1日かかるくね!? と思ったけど、途中でスカーレットがストップをかけた。

 

「そろそろお茶にしましょう」

「おかあさまはずっとお茶してるくね!?」

「貴女たちも足が疲れているかと思ったのですが?」

 

 あ。確かにそう。中腰でずっと作業って、ホレスは特にくるのではなかろうか。私たちはスカーレットに言われた通り、大人しくお茶をすることにした。が! 侍女とか使用人が同じトコに座ることは出来ないので、離れたとこに他のテーブルを出してる。スカーレットの侍女とメイプルが微妙な顔をしてるのは、主人と同じ時に茶をしばくことに抵抗があるんだろう。まあ、仕方ないと思いたまえ! という言葉しか出てこん! それくらいスカーレットが自由すぎる。

 

「それにしてもリディアは新しいものを次々と生み出しますわね」

「はあ……」

 

 主に精神的に疲れ切った私は生返事をしつつお茶を口にした。あ、今日のお茶は私の好きなやつだ。スカーレットが用意してくれたぽいから、私の好みは把握してるんだろうな。そういうとこは母親なんだよなー。

 

「旦那様もとてもお喜びですのよ。先日は大きな鍋と一緒に転移されましたの」

 

 それを聞いた私は思わず吹き出しそうになった。ギリ、耐えたが! 鍋と一緒って! 他の言い方ないんか! 多分、たくさん料理を持ってったんだろうって判るけどさ! 転生前に見たラノベの本好○でも、大量の料理を持たせて送り出すみたいなシーンがあったしさ!

 

「こんなに楽しい時間を過ごせたことはありませんでした」

「それは愉快ってことかね」

「まあ。わたくしはそこまでは言っていませんわ。リディアが生まれてきてくれて、本当に良かったと思っていますの」

 

 あー! これ、どうにもならない空気になる! ヤバい! 私はこの手の話が超苦手! メロドラマは勘弁して欲しい! 転生前にアニメとか観るのは好きだったけどさ! 自分が話に入るのは嫌!

 

「ははは! そうですね! ウマ飯も食えるしね!」

 

 私があからさまに話を逸らしたことには気付いてるだろう。スカーレットはちょっとだけ間を置いて、そうですわね、と苦笑した。




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