チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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レバニラ炒めにチャレンジ

 レバニラ炒めを思いついた私が愚かだったのだろうか。試作しようとしたつもりだったのに、テーブルにはジャスミンとテオ、メアリー、でもって小屋の持ち主のホレスがついて待ち構えている。てか、皿が置かれてないのにフォーク持って待ってるってどゆこと!? メアリーなんかスプーンまで持ってて、白飯を食べる気まんまんなんですけど!?

 

「はい、出来たよー」

 

 私はフライパンからレバニラ炒めを皿に移してジャスミンに運んでもらった。味見したから大丈夫だろう、きっと。

 

「いただきます」

 

 皿が各自の前に並び、ついでにおにぎりと漬け物を添えた皿も別に置かれたところで、私は手を合わせてそう言った。その時には既にみんな食べ始めてた。ああもう、ウマ飯スキーもほどがあるだろ!

 

「美味しいっす! これ、内臓なんっすか!?」

「内臓なんです」

 

 私はテオに平坦に答えてレバニラ炒めを食べ始めた。うん、私にしてはいい出来では? スティーブンがどう言うかは知らんけど。

 

 今日はさすがに侍女はジャスミンを指名した。こないだの煮込みを食べられなくて血涙を流しそうだったから。メイプルはちょっとぶちぶち言ってたけど、まさかレバニラ炒めを作るとは思ってなかったから大丈夫だろう。ジャスミンが口を割らなければだが! 一応、命じたが! でないとおかあさまがすっ飛んで来そうだからね!

 

「はあー。白飯にぴったり! 幸せ~」

 

 メアリーが感動しすぎたのか地が出てる。まあ、判るよ。でもメアリーだけはおにぎりじゃなくて、器に白飯を盛ってるんだよね。本人たっての希望で。おにぎりも好きだけど、レバニラ炒めは塩がない白飯のが合うと思ったって。……何なんだ、その嗅覚は! 確かに私もそうかもと思ったけどさ!

 

 レバニラ炒めを食べてると転生前のことを思い出す。昔はレバーって安かったんだよね。だからレバニラ炒めって家庭で手軽に出来たし、コスパも良かった。でも段々と物価が上がって……特に肉はアレがヤバかったな。狂牛病。肉系が高くなったのはあの騒ぎ以降だった気がする。日本は食に対して厳しいから、当時は海外からの輸入がストップした……気がする。多分。牛丼チェーンもメニューから削除とかの騒ぎになったような。だから逆に豚丼とかが流行したんだけども。

 

 とにかくレバニラ炒めは手軽料理じゃなくなった。他のおかずを作ればいいんだけどさ。私が転生する前は肉高い野菜高いだったよ。どーすりゃいいのさ、みたいな感じだったなあ。ま、息子娘が独り立ちしてたからいいけども。

 

 あ。レバニラ炒めを食べてたら転生前のことを思い出してしまった。

 

 この調子ならレバニラ炒めを定期的に作ることは出来るかな。レバーは焼いてもいいけど、炒めても美味しいし。あと、ホルモンは他の部位もあるし。そもそもこないだ豚ホルモンを大量に処理したし!

 

 レバニラ炒めをみんなペロッと食べ終わって、おかわりを所望された。判ってる判ってる。初めての味だし、ご飯にもよく合うし、そう言われると思って中間材料は多目に作った。それを炒め合わせれば完成。簡単。

 

「これってレバーなんですよね? 豚の」

 

 メアリーが食べながら訊いてくる。うむ、と頷いて私はかまどの方を見た。

 

「レバーを使った炒め物、と言えばいいのかなあ」

 

 レバニラ炒めって言っていいものかどうか判んなかったので、私はそう答えた。ニラがね。行者ニンニクとは違うんだよね。でも美味しいから良し、と私は思っている。

 

「俺はこれ、好きっす!」

「……おまえは何でも食うだろ」

「え? お嬢様の飯は好きっすけど、何でもってわけじゃないっす」

 

 テオが不思議そうな顔をしてみせる。あれ? テオって何でも美味いって言って食べてるイメージだけどな。

 

「賄いも美味くなったからのお」

「そうそう!」

 

 ホレスの言うことにテオが同意する。あれ? 牛肉以外は賄いでも使ってたのでは? と思ったら、テオがまた私を見る。

 

「砂糖じゃないっすかね?」

「あー!」

 

 そっか! 私が砂糖を精製するまでは、黒糖オンリーだったわ! しかも悪魔がどーとかでほぼ使われてなかったって話だった。

 

「なるほどなあ……。確かに砂糖があるなしだと違うか。蜂蜜はあったぽいけど」

「俺、蜂蜜は嫌いっす」

「は!?」

 

 突然、テオが好き嫌いを主張したことにびっくりして、私は思わず声を上げた。するとテオが唇を尖らせる。

 

「あれって採るの大変だし、どろっとしてるし、食うと口の周りがベタベタになるし、味があんまり」

「は? 採る?」

「俺の仕事のひとつっす」

 

 ぶーたれた顔でテオが言う。口がベタベタとかは判る。でも味? 昔は貴重な甘味だったのでは?

 

「あれ食うくらいなら、サトウキビかじった方がマシっす」

「どんだけ嫌いなのか!」

「うーん。匂い?」

 

 テオが天井を見ながら首を捻って言う。匂い……あ!

 

「蜜ってどんな花から集めてる?」

「え、その辺に蜂の箱を持ってって集めるだけっすよ? 花はその辺ので」

「あーあーあー……そっかー。なるほど」

 

 ここでは蜂蜜の種類がないのか。それを言い出したらきりがないので、私は言葉を濁しておいた。違う味にするなら、一種類の花が大量に咲いてる場所を作るところから始めないといけないと思う。養蜂には詳しくないけども、レンゲとかアカシアとかあったし。たまにパンにつけて食べたりしてたなあ。

 

 その日はレバニラ炒めを食べて茶をしばいてお開きになった。危ない危ない。蜂蜜のことを考えてるってジャスミンに読まれなくて良かった。




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