チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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片手で!?

 ごきげんよう。元アラフィフ主婦で転生した斉藤奈美恵です。目の前にあるものが信じられないというか、どうしてこうなった!! と、幼女○記のタ○ニャのように叫びたい気持ちになっています。幼○戦記というのは転生前に私が観ていたアニメ作品のひとつです。ラノベ原作です。幼女というタイトルですが幼女? という感じの主人公の話なので面白いと思います。

 

 現実逃避したい。

 

「おおおー! 美味いぞー! リディアの料理は最高だー!!」

「……おとうさま。言ってはなんですけど、それ作ったのはスティーブンです」

「発案はリディアだと聞いたぞ?」

「まあそうなんですけども」

 

 なんということでしょう。ホルモン煮込み(スティーブン作)が、とうとう食卓に出てくるようになりました。って! 食卓に出さない条件でホレス小屋で作ってたのに!

 

 経緯を説明すると。

 

1.スティーブンが試作しまくってホルモン煮込みを作った。

2.ホレス、侍女のメイプル&ジャスミン、テオ、メアリー、でもってスカーレット、その侍女が食べていた。

3.スティーブンじゃないとホルモン煮込み(スティーブンレシピ)が作れないから、ホレス小屋にスティーブンがあらわれた!

4.これは鍋に大量に作れるのかとスカーレットに訊かれた。

5.多分、大丈夫と返事した。

6.食卓にホルモン煮込みが出てきた。

 

 5と6の間に何があったのか私には判らん。てか、スカーレットが勝手に決めた節がある。ホルモン焼きの方は食卓にあがらないところを見ると、煮込み料理ならアーサーが鍋で運べるという理由だと思われ。ていうか! 運ぶの前提のものならOKってどゆことよ! 小一時間ほど問い詰めたい!

 

 まあでも、出てくるようになったホルモン煮込みは美味しいわけで。しかも私たちの食卓に上がるようになったからか、つまみ食いが出来る使用人も増えたらしい。たまに賄いにちょっとだけ出てきたりするとも聞いた。うん、みんなでウマ飯いいよね!

 

 ……私が下処理するんじゃなかったらな!

 

 週に何日かホレスのところでホルモンの処理をするというのが、私のスケジュールに組み込まれた。……ねえ。私って一応、お嬢様なんだよね? 近頃は本当に疑わしい。ホレス小屋の拡張工事をしたりもしてるし。

 

 そして私は蜂蜜のことをぐるぐる考えている。いかん。いったん気になると、どーしても考えが頭を離れなくなる。もちろんホルモン焼きとかレバニラ炒めは作ったりするんだけども。レバニラ炒めを食べた時のメイプルが衝撃を受けた! みたいな表情になったのはちょっと笑った。もしかしてジャスミンにザマアみたいに言われてたからか。でもジャスミンには口止めしてたから、単に味に驚いただけかも。美味いって言ってたし。

 

 そして私に転機(?)が訪れた。蜂蜜のことを考えているとうっかりスカーレットにバレてしまい、それが何とアーサーまで話がいってしまったのだ。

 

「蜂蜜なら大陸の南にあると思うんだが、どうだろう、リディア! 私と一緒に来るというのは!」

「はい! 行きます! 外ですねわかります!」

 

 食事の時にアーサーに問われて私は即答した。まさかこんなことが起きるとは思わなかった。アーサーは野暮用があるから四六時中、私とはいられないらしい。つまり自由時間があるということ。というわけで、メイプル&テオが付いてくることになった。OH...。成り行きとはいえ、島外に出るのが前と同じメンツになるとは思わなかったよ。あ、アーサーもついてくるけども。

 

 スカーレットが言い出したことぽいし、アーサーも一緒だからなのか、今回は日付指定はされなかった。やったー! アーサーの用事が終わるまでは外! ホルモン料理の作業ばかりして泣きそうだった私へのご褒美だろうか! なんにしてもヒャッハー! である。

 

 ちなみにメイプルも侍女が控える部屋でヒャッハー! していた、とジャスミンが悔しげに言っていた。ま、まあ、落ち着け。ていうか、暗殺とか諜報が得意な侍女では、外での護衛は難しかろうとは思うぞ、私も。テオはまあ……いざという時の緊急避難用につけられることになったんだけど、ホレス小屋で会った時に異様にはしゃいでいた。……理由は何でもいいんだな、おまい。

 

「それでは行こうか!」

「……おとうさま。私たちより鍋の数が多いですが」

 

 転移陣がある部屋の前に置かれた鍋は10個以上あった。しかもでかい寸胴鍋。ピシッと整った格好をしたアーサーが不思議そうに私を見る。

 

「ん? 何かおかしいかな?」

「おかしいっていうか、何で!? 出かけるって鍋の用事!? ていうか、ホルモン煮込みが入ってるー!」

 

 ちょっとだけ蓋を開けて覗いたら、こないだスティーブンが開発したホルモン煮込みが入っていた。もしかして新作料理が出来たから外に出るってこと!? まあ、そうですかね、そうですよね! スカーレットは外に持ってけるホルモンの鍋料理が出来るのを待ってたのかも知れない。策士か!

 

 そして私は鍋の密閉をお願いされた。……はいはい。結界魔法ですね、わかります。万が一、蓋が外れたら零れるからってことらしい。結界魔法で閉じられない時はどーしたんだよ、と訊いたら、煮込み料理を鍋の半分くらいしか入れないって言われた。なるほど。今は8分目くらいまで入ってるから密閉しないとだよね!

 

「ですがおとうさま。密閉は出来るけど開けるのどーすんの」

 

 アーサーに対しても慎ましいというか丁寧というか、そんな言葉を遣うのがだるくなったので、ストレートに訊いてみた。するとアーサーが私を見下ろして何度か瞬きをする。

 

「空間魔法は他の者が解除できるだろう?」

「いや。私のは特殊らしいから。出来るかどうか判らんですよ?」

「ふむ。では試しにやってみよう」

 

 そう言ったアーサーが屈んで鍋を片手で持ち上げた。

 

「ふん!!!」

 

 かけ声と共にパキーン! と音がして私の結界が破れた。でもって鍋の蓋は開いた。ていうか! 片手で寸胴鍋を持ち上げた挙げ句、鍋底を手で支えて、もう片方の手で蓋を開けるとか! どんな力技……あー。アーサーは筋肉だったわ。そいえば。

 

 そして私は言われるままに鍋を全部吸引した。って、待て。これってもしかして、私は荷物持ちなんじゃ!? と気付いた時にはもう遅く、叫ぶ前に四人で転移した。




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