チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
アーサーに連れられたのはでかい城だった。は!? と最初はびっくりした。だって舗装されてない道の先に城があったんだよ!? フツーは城に続く道は綺麗に整えられてるくね!? アシュフォード家の周りだって整ってるんだけども!?
ついつい、ナンデダヨ、と質問した私にアーサーは不思議そうに答えた。
「ん? ここは辺境の城だからな。王都から遠いという理由もあるな」
「そうじゃなくてね!? って、王都とか関係あるの!? 街は整ってたじゃんか!」
それがボロい石畳だったとしても! 馬車の揺れはマシだったからね! でもアーサーはまだ不思議そうだ。
「このような辺境の男爵の城だぞ? 道の整備がされていないのは当然ではないか」
「それって辺境伯って言わない!?」
「ん? 彼は男爵だが?」
んー!? 転生前世界日本で私が見てたラノベとかアニメとか漫画とかでは、辺境伯ってこんな感じのとこの人だった気がするが!? でもアーサーは違うって言うし! どゆこと!? そんな私の疑問を無視してアーサーが説明してくれる。
アーサーはここの人(男爵?)と仲が良いらしい。だから訪ねることにしていたという。つまりはオトモダチということだろうか。詳しいことは判らんが、私たちの馬車はとっとと城門を通って城に辿り着いた。でも城が2個ある? 馬車がつけられたのは小さい方の城だった。
「さあ、リディア! ここが離れの城だぞ!」
は!? 離れってどういうこと!? 私は隔離されるってこと!? えええ!
「待て。私は男爵とやらに挨拶しなくてええんか」
「は? 何故、リディアをあやつに会わせなくてはならんのか! 駄目だ!」
馬車を降りようとしていたアーサーが急に喚く。はー!? どういうこと!? と思ってたら、馬車を降りるのを手伝ってくれたアーサーが眉間にしわを寄せる。
「大切な娘をどこの馬の骨とも判らぬ奴に会わせるつもりはないのだが?」
「待てい! 知り合いとかお友達とか言ってなかったか!?」
文句を言いつつも私は馬車を降りた。後ろについていた馬車からはメイプルたちも降りてくる。鞄とかを持ってるのは、ここには着替えが入ってますよー、というフリだ。本当は私やメイプル、テオの服とか小物は吸引して某白ポケットに入れてある。あ、アーサーのは吸引しなくていいと言われた。だからアーサー付の執事は大きな鞄を持っている。
って、吸引しなくていいってこういうことかよ! アーサーは城、私は離れだからか!
「友人とはお互いに利があると判断した時に縁を結ぶというものだが」
「それって友達って言わない!」
私は自分の常識で喚いた。でもアーサーが納得してくんない。ギリギリと歯軋りをしていた私は、はっ、と我に返った。そーいえばアーサーは社交が上手いってスカーレットが言ってた気がする。コネクションを築いたりとか、情報集めとかが得意とも言ってた。アーサーがいう友人というのは、そういう意味なのか!
だったらホントの友人って……? と思ってた私をアーサーが離れの城へと案内してくれる。ってか、執事とか侍女にさせろや! 案内くらい! 向こう様の使用人がびっくりしてるじゃん!
玄関は向こう様の使用人が開けてくれた。執事かな? でもって入ったらそこには侍女と執事がずらっと並んでいた。……あー、転生前によく見てたアレか。
「いらっしゃいませ。ようこそ、アシュフォード辺境伯」
よく声が合うよなあ。一斉に挨拶され、私は感動というか感心して周りを見た。って、待って! 辺境伯!? 今まで爵位とか気にしてなかったけど、おとうさまって辺境伯なの!?
って、辺境伯ってどんだけ偉いんだっけ。転生前に見たラノベとかによく出てきたけど、私は未だに判ってないんだよね。ま、いいか。
アーサーはうむ、と頷いてさっさと中に入ってしまう。向こう様の使用人を無視してとっとと階段を上がり、とっとと部屋に入る。そこには整えられたベッドやテーブルなどがある、でかい部屋だった。私がいつもいる自室くらいかな? もしかしてこれって客室なんだろうか。だとしたらかなり狭い。
アーサーが私に鍋をひとつ放出してくれ、とのんびり言う。……あー。あれね。ホルモン煮込みが入ってるやつね! 判ったよ! と、私は言われるままに寸胴鍋をひとつ放出した。うむうむ、とアーサーが嬉しそうに頷いて片手で鍋をつかんで、ひょいっと肩に載せる。さすがは筋肉。ものすごく重いんだけどね、鍋。
と、思ってたら向こう様の使用人が飛んで来た。
「アシュフォード辺境伯! どうかお待ちになってくださいませ! わたくし共がご案内致しますので!」
「何故、私が指示されなければならんのだ。メイプル、テオ。後は任せた」
さくっと向こう様の使用人の言うことを切り捨て、アーサーが私ににっこり笑って退室した。ついでとばかりに、さっきの使用人を蹴飛ばして部屋から追い出す。その後、アーサー付の執事が静かに扉を閉めた。
おーーーい!! それでいいんかーーーい!
「あの、メイプル。これ、フツー?」
「はい。旦那様はお嬢様をここで護衛するように、と出かける前に仰ってました」
「っすね! あと、飯も用意されたものじゃなくて、お嬢様が作るようにと。危ないって」
は!? もしかして毒とか警戒してんの!? でも私が作るっておかしくね!?
「何で私なんだよ! おかしいだろ!」
ぎー! と叫んだ私にメイプルがにっこり笑って頷く。なんか嫌な予感がする。
「本来は食事の用意をするのは私の役目なのですが、お嬢様の食事の方が美味しいからと。あ、旦那様も一緒に召し上がるということでしたね」
アーサーじゃなくてメイプルとテオだから、私は反射的に突っ込みを入れた。
「待てい!!! 出先でもウマ飯の方がいいってか!」
「俺も美味い方がいいっす!」
「おまえもか!」
テオへの叫びが部屋いっぱいに響いたのは言うまでもない。