チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
転生したら辺境伯令嬢でした。と、後から判ってびっくりしている、元アラフィフ主婦の斉藤奈美恵です。ごきげんよう。ラノベのタイトルになりそうな状況です。もしかしたら既にタイトルになっていた作品もあったかも知れません。
それはそーと。私は案内された部屋のベッドにうつ伏せで倒れていた。
「あのさー。辺境伯ってさー。どのくらい偉いのよ?」
と、訊いたら、メイプルとテオが二人揃って一番えらい、と抜かしやがったからである。一番って! 聞いたところによると辺境伯って辺境の伯爵って意味じゃないぽい。えっ、て私がびっくりしたら、逆にメイプルとテオにびっくりされた。悪かったな! 私はその手の知識はねーのよ!
しかも辺境伯って言ってるけど、実はそれも仮の爵位だという。的確に表せる爵位ってのがなかったらしい。確かにアーサーとスカーレットは王族に直で解せぬとか言うんだったよ! 忘れてたが!
あの島だけでなく、大陸の北の方はアシュフォードの領地だという。それだけではない。魔物がいる大陸も、王国で言えばアシュフォードの領地らしい。って、待てや! 魔物大陸が領地ってどゆこと!?
「他の者では魔物がいる大陸を管理することが出来ないのです。それに領地じゃないと、大陸の一部をお二方が抉ったり消滅させたりは難しいかと」
「その時点でおかしいわ! 消滅て!」
あ、でもスカーレットが同じようなこと言ってたな……。島から直で向こうの大陸に攻撃を飛ばしてたんだった。どんだけ離れてるのかは知らんけど。
「多分っすけど、大陸で一番えらいの、旦那様と奥様っすよ? お嬢様は知らなかったんすか?」
テオにまで言われて、私は飛び起きた。
「そんなん誰も教えてんくなかったよ!?」
「え。ステラさんが教えませんでしたか?」
メイプルの突っ込みを受けて私ははっとした。しまった。前にもこういう突っ込みをされた気がするわ。多分、猛烈特訓の前だな。聞き流してたっぽい。
「ごめん、忘れた」
「アシュフォードの領地は、いくつかの国をまたいでいるんですよ。だから爵位を授けるというのは難しかったみたいです」
「……はー!?!?!!?」
ちょっと待った! 爵位ってフツーは国の中でとか、そういう分け方じゃないのか!? 待て待て待て! アシュフォード家ってどんだけ!? 私が奇声を上げるとメイプルが困ったような顔でため息を吐く。
「ですから、一番えらい、ということになります」
「なるほどー」
私は考えるのを放棄すると決めて、メイプルに淡々と返事した。多分、目が死んでいると思う。知らなかったことを知ったからじゃない。あまりに話が荒唐無稽というか。想定外だったというか。だから島に誰も入れないと判ったというか。
「いやー。お嬢様でも知らないこと、あるんすね」
「あるよ! ありありだよ! むしろ知らないことのが多いよ! 子供に何を期待してるのか!」
「え。お嬢様は子供扱いしなくていいって言われたっすよ?」
でしたね! と叫んで、私は再びベッドに突っ伏した。この布団、もふもふでいいな。家のもいいけど。もしかしてこの布団は客用にもふもふにしてあるのか。羊毛じゃないな。羽毛か? でも私は転生前は羽毛の軽さが苦手だった。あれって軽いじゃん!? 掛けてる感なくね!? 子供の頃から羊毛布団だったから落ち着かなかったんだよ。転生直前には羊毛布団のが高かった気がするけどさ。
それはともかく!
「身分とかよく判らんが、おとうさまとおかあさまが凄いっていうのはよく判った」
「いえ……あの、お嬢様は前から実感されていたのでは?」
恐る恐る、という感じでメイプルが言う。布団に突っ伏したまま、私はため息を吐いた。そーいえばそーだったわ。スカーレットから話を聞いたりするたびに、凄すぎるって思ってた。アシュフォード家の特殊な役目もだけど、攻撃力とかがパネエし。魔法の威力がおかしい。使用人の能力もおかしいけど! 何しろ、一番弱いのが私っぽいし! 私には吸引とかの特殊スキルはあるけど、強い弱いってのはないからなあ。
「判るし判ってたけども! 改めて聞くと怖すぎる! 私が一番、弱いじゃん!」
私はそう言ってベッドでゴロゴロと転がった。するとメイプルとテオが私にガッ! と寄ってくる。
「そんなことはないです! 美味しいご飯は最高ですから!」
「美味い飯は凄いっす!」
……あ。この二人は強さ基準がおかしいから駄目だ。