チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
村の人々はとても優しいです。そして私はみんなの食事を作っています。この世界に転移してきた、元日本人でアラフィフ主婦だった斉藤奈美恵です。ごきげんよう。どうして私がみんなの食事を作っているのでしょう。はっきり言ってお嬢様がすることではないと思っています。
いますけども! いやもう、やるしかない状況に追い込まれたのである!
村の人々はアーサーと私たちを喜んで出迎えてくれた。あ、アーサーが手を突き刺した堤防はきっちり修復した。アーサーが。土魔法が得意だからなのか、さっくりと修復され、あと、ちょっと汚れてたところも綺麗さっぱり修復してた。OH...。まさかそんなにあっさり修復できるとは思ってなかったよ。
でもって私たちは村の小さな宿に案内された。小さいとは言っても私やアーサー、それとメイプル、テオ、執事の全員が泊まれるサイズだ。テオと執事は同室らしいけど、私の護衛のためにドアの前に立つらしいから、実際には寝ないぽい。あー、もう! こうなったら好きにすればよろしかろうである!
宿の1階には食堂と台所があった。台所にはかまどがあって、宿の奥さんが料理をしてくれるって聞いた。私は新しい料理が食べられるとワクワクしかけて……アーサーにガン見されていることに気付いた。あー! そいえばアーサーは私の飯を食べたいがために、遠回りするって言ってたね!
「で、でも、おとうさま。私は郷土料理というのを食べ」
「私はリディアの料理が食べたいのだ!」
アーサーが主張すると、メイプルとテオが頷き、ついでにアーサー付の執事まで頷きやがった。おのれ! しかもアーサーは宿の主人&奥さんに私の料理を自慢したのだ。なっ、何で!? 男爵的な何かのところでは、誰にも食べさせたりしなかったじゃん!
「それは是非! ご相伴にあずかりたいものですね!」
「そうだな! この村では食べられない料理というものに興味があります!」
……二人してノリノリである。しかも騒ぎを聞きつけたのか村人が宿屋に入ってくる。あー、もう! 少ないっても20人以上はいるんだよ、村人! 私が全員分の飯を作るの!? 確かに多少人数が増えても手間は変わんなかったりするけどさ! これだけの人数だとさすがにキツい! と思ったら、宿の奥さんが手伝ってくれるという。あーーー! 逃げらんない!
そんな訳で私はキッチンで黙々とフライパンでトンカツを作っている。材料を切ったりするのは奥さんがやってくれる。私が作ってるのはカツ丼である。豚肉はストック(某白ポケット入り)があったからね! 醤油味は慣れないだろうから、ソース味にしている。まずはアーサーと使用人の分を作る。彼らが食ってる間に村人の分を作る。子供の分はカツの切り方を変えてもらう。喉に詰まったらいけなからね。
卵は宿の主人が分けてくれたので助かった。さすがに某白ポケットに卵は入れてなかったし。ていうか! 私自身、某白ポケットのこと、荷物入れみたいにしてるくね!? まあいいか!
最後に自分のを作って終了。はー、しんどかった。
「お嬢様! おかわりをくださいっす!」
「ねえよ! てか、それは私のだからね!?」
「えっ、早い者勝ちでは?」
テオとメイプルが同時に私の皿に手を伸ばしていた。待てや! ついでに橫から手を伸ばしてたアーサーも待て!
「私のだって言ってるじゃん! 何でみんなで取ろうとするのか! おかわりが欲しかったら言えし!」
「欲しい(な)です!」
アーサー+その他三人が声を揃えて言う。私はため息を吐いて三人分のおかわりを作った。そいえばアーサーもかなり食べる方だったな。メイプルとテオは言わずもがな。まさかアーサーの執事がおかわりを要求するとは思わなかったけども!
腹がいっぱいになるまでみんなのおかわりを作りまくった後、私は自分のカツ丼を食べた。丼が欲しいなあ、と思ったけど深皿しかないので今はそれを使っている。そのうち丼も作るか? いや! 私の仕事が増える!
「んむ。ソース味もいけるかな」
キャベツをトンカツの下に敷き、前に作ったソースをかけてから私はやっと自分の飯を食べることにした。キャベツも某白ポケットに入れておいて良かったよ……。この村にはキャベツがないという。でもジャガイモとかニンジンはあるといわれた。土壌とかが関係あるのかも知れないけど、私には判んない。転生前世界日本のスーパーとかには、季節問わず野菜とかが並んでたからなあ……。小麦粉とかもいつもゲット出来たし、魚も旬はあるけど割とよりどりみどりだったと思う。冷凍技術も進んでたし。よく青菜とかも買ってたなあ。あ、でも転生する前というか、直前はジャガイモと玉ねぎの値段が一気に上がった。あれからどーなったのかは知らない。
って、違う! この村の野菜は美味しいけど、話が逸れてる!
私はもそもそとカツ丼を食べながら、食後の茶を優雅にしばいているアーサーに訊ねた。
「この村の人たちってどうやって生活してるの?」
外に売りに出せるようなものは、一見するとなかった気がする。畑には野菜は植わってたけど、売りに出せるような量じゃないと思う。村人だけで消費してしまうのではなかろうか。漁に出るっても、20人の内で10人くらいしか働けるような人はいなかった。老人もいたし子供も多かった。だから自分たちで食べる分くらいしか獲れないというか、獲らないのではないだろうか。そもそも保存する方法ないし。
そんな疑問をぶつけたら、アーサーがうむうむ、と頷いて答えてくれた。
「川を見張る役目があるからな。この村は私たちが保護しているのだ。無論、農業などをやりたい者もいる。そういう者の自由意志は尊重しているし、村の外に出たい、また村に入りたいという住民の世話もしている。他の村との交流もあるが、不審者が入らないようにチェックはしている」
「それって村長り役目では!?」
どうしてアシュフォードの当主がそんなことしてるんか! あ、でも治水がどーとか言ってたな……。
「ん? 村長はこの宿の主人だが? 私が常にみている訳にはいかんだろう」
「そうだけども!」
「この村は拠点として重要なのだ」
だから保護している、とアーサーは言った。うん、ふわっと理由は判った。要するにここは大事だから、アーサーが優先的に守ってるってことだろう。だから村人からの人気が高いっていうか、信頼度が半端ないことになってるんだと思う。
だっていくらアーサーの娘だからって、子供に料理させるとかなくね? キッチンで火を使うのは危ない、というのもあるけど、毒を盛られるとかあるじゃん。でも村人はみんなそういう心配はしてなかった。もちろんアーサーがそんなことしないって信頼してるからだろうけども。口に入れるものってある意味、怖いからね。信用してないと無理だと思う。
そして私たちが寝るために2階に上がると、1階では宴会が始まった。ナンデダヨ!