チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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地下茎大好きか

 私が最初に読んだ本の一ページ目に、まさかのジャガイモの絵と説明があった。それを見た私は思わず本を床に叩きつけてしまった。

 

 あるんじゃんか! 芋!!! はっはー! ジャガイモ警察よ、さらば! いや、待て。あるんならジャガイモを飯に出せよ! ベイクドポテトでもフライドポテトでもいいし、何ならもう、茹でただけの芋でもいいよ! どろどろじゃなくて、せめて形のあるおかずをプリーズ!

 

 と思ったけど、本を拾って改めて読んでいくと、書いてあったのは食用ジャガイモではなかった。OH...。食用以外のジャガイモってあるんか。

 

「地下茎なのは判るんだよね……」

 

 本を読みながら私は思わず呟いた。すると後ろから急に声が聞こえてきた。

 

「お嬢様。そちらの本をお読みになれるのですか? ちかけ、い……とはでしょう」

「めっ、メイプル!? 一人で読んでいいと言いませんでした!?」

 

 びっくりした私は慌てて振り返った。ピッチャーとコップの乗ったトレイを机に置いたメイプルが、椅子に腰掛けている私をじーっと見下ろしている。

 

「お飲み物を運んできたのですが……ちかけい?」

 

 そう言ってからメイプルが私が読んでいた本を覗き込む。しつこいな。地下茎好きなのか、もしかして。だけどメイプルは本を見て別のことを言った。

 

「じゃがいも、ですか? どちらに飾りましょう?」

 

 不思議そうに言うメイプルに、なにゆってんだおまいは、と、叫びたい気持ちを抑えて私は微笑んでみせた。一瞬、怒りに震えたのでちょっと引きつってたかも知んない。

 

「いえ。飾りたいのではなく、食用ではないのかと思って」

「は!? じゃがいもをですか!? 食べると大変なことになります!」

 

 ドン引きしたメイプルがひっくり返った声で喚く。……なるほど。本に書いてあるジャガイモは毒性が高いのか。主婦としてご飯を用意していた時も、ジャガイモの芽とかは気を付けないといけなかったなあ。そーいえば昔、戦争中に船とかで運ぶのに日保ちするからって、ジャガイモは重宝されていたという。皮が変色するとヤバいから、保存が利くって言っても早めに……。

 

 ん? 待って。食べると大変?

 

「メイプル。ジャガイモは飾るものなのですか?」

「は、はい。農園の使用人に頼めば手に入りますので、飾れます」

「そのジャガイモは緑色の茎と葉っぱがついているもの、で間違いありませんか?」

 

 私が質問すると、メイプルが少し考えるような顔をしてから頷く。

 

「はい。じゃがいもは花以外は全て緑色です」

「それだーーーー!!!」

 

 私は思わず叫んで本をまた床に叩きつけた。カラー本じゃなかったから色にまで気付かなかった。私は怒りに任せてさらに喚いた。

 

「緑色のジャガイモ食ったら大変なことになるに決まってるでしょーが!」

「えっ、そうなのですか?」

 

 私の言葉が乱れたことより、勢いに面食らったのか、メイプルが思わずという感じで訊いてくる。ホントは言葉遣いを注意されるべきところかもだけど、私は必死だった。

 

「ジャガイモは日にさらさない! 緑色になるから!」

「え? じゃがいもは花以外は天日干しにした後、鑑賞用にします。それか絵画などのモチーフにしたりとか」

「緑色のジャガイモとか誰得なの!」

「……あの、お嬢様、だれ、とく……とは?」

 

 そこじゃねえ! と突っ込みたいのを抑えて、私はメイプルのスカートをつかんで引っ張った。

 

「絵画のモチーフとかどうでもいい! 緑になる前のジャガイモってゲット出来るの!?」

「げっと……? とは?」

 

 不思議そうにメイプルが首を傾げる。そこじゃねー! 論点ちげーよ!

 

「あーもう! 緑色に変色する前のジャガイモは入手出来るのかって訊いてるの!」

 

 キレキレになってメイプルを問い詰めた結果、私は農園に連れて行ってもらえることになった。




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