チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
満天の星、まではいかなくてもかなりの星を見ながら私たちは食事を終えた。ほほーう。異世界でも星はあるのかな、という確認もしたかったし、料理をその場で食べたから空が見えたというか? でも私は転生前から星座には詳しくない。星の光り方とかもよく判んない。なので、ただ綺麗だなー、と見るだけだった。
……だって、魔獣座とか言われたら嫌じゃない? ていうか、少なくとも私は嫌。転生前世界のラノベとかアニメとか漫画でよく見る、エルフとかドワーフとか、そういう名前の星座なら何となく納得出来る。でもスカーレットが書庫で見せてくれた魔物大全にあった魔獣とかは嫌だと感じる。強く。
そんな訳で私は星について何も訊かず、しばらく星を眺めてから、とっとと小屋を放出して寝ることにした。もちろん外に作ったかまどとかの火は落として、作業台とかと一緒に吸引した。
ちなみにビーフシチューは思った以上に好評でした! 鍋がすっからかんになるまで食ったのにおかわりを要求されるほどに! しかもフランスパン数本と一緒に! 二人の胃がどーなってるのかと訊きたい! だって圧力鍋は10リットル以上のサイズだったんだよ!?
某白ポケットからは放出した時は私でもかまどの上に載せることは出来た。というか、かまどの上に放出したから問題なかった。でもそこから動かす時はメイプルに頼まないと無理だった。しかもイメージしたのは圧力鍋でも、私は金属しか合成出来ない。だから圧力鍋は蓋を超押さえて、小さい空気穴からちょっと蒸気が出てくるっていう感じのものだ。
しかも超分厚い。どの程度の強度にすればいいか判らなかったから、厚みが出まくったんだと思う。しかも転生前世界で私が使ってたみたいな、シリコンとかプラスチックとか、そういうのを使った感じの圧力鍋じゃない。放出したのは圧力鍋は取っ手まで金属製だ。
だってシリコンとかプラスチックが何で出来てるか知らんし! つまり、激しく重いんだよ! そんな重い圧力鍋を素手でひょいと持ち上げるメイプルもどうよ!? いや、私も慌てて鍋の周りを結界で包んだけども! 普通は火傷するだろ!
でも圧力鍋があれば豚の角煮とか楽に出来るよねー。煮込み料理とか。プリンも作れた気がする。他にも色々と使え……しまった。そういうことになると、圧力鍋をスティーブンに渡さねばならぬ。二度と私に戻ってこない気がする。ていうか、あれ、普通に使えるんだろうか。一発目は焦げたしさ!
そんなことを思いながら私はやっぱり小屋で爆睡した。子供の身体だからなのか、転生した私は寝付きがいい。転生前はここまで良くなかった気がする。よく苛々してたから寝るまで時間がかかってたのかも知んない。息子娘は寝付きが良かったから楽だったけども。
それはともかく。
起きるとメイプルが入れてくれた紅茶が出てくる。いつものことだから慣れているとはいっても、やっぱりありがたい。人のいれてくれたお茶は美味い!
「ありがと、メイプル」
「今日は蜂蜜を入れてみました」
「んー」
ぼーっとしながら飲んでいると、部屋の隅にいたテオが身震いする。
「俺は蜂蜜苦手っす!」
「だーかーらー! 探しに来てんだろ!」
「は?」
あれ。言ってなかったか。私は天井をちらっと見てから、テオに目を戻した。食事の時にアーサーと話をしただけで、テオの耳には入ってなかったのだろう。あの時の侍女って誰だったっけ。忘れた。まあ、いいか。
「テオでも食える蜂蜜を探しに来ているんだが?」
「えー! そうだったんすか!? でも蜂蜜、苦手っす!」
「だーかーらー! テオが苦手な蜂蜜と違うやつな! 説明はしない! めんどくさいから!」
テオが腕組みをして首を捻りながら唸る。いや。そこまで真面目に考えなくても。とは思ったけど、めんどうだから私は素知らぬ顔で茶を啜った。その後、メイプルが温めたタオルで私の顔を拭く。いつも思うけど温かいタオルっていいよね。
「とりあえずこれを入れて飛ぶか」
馬車がいなくなったので、私は外に出て小屋を見た。するとメイプルとテオが同時に悲鳴を上げる。
「怖いです!」
「嫌っすー!!」
あー、うるさいうるさい。徒歩で、と主張する二人を私は睨んで黙らせた。何を言っているのか、君たちは。歩いて街まで戻るとか、どんだけ時間がかかると思ってるんだ。直線で行けるんだから飛行魔法ならあと一日もかからない。半日、いや、数時間くらいでいける気がする。
「馬車だけ飛ばした時に、小屋ごとの方がマシって言ってたよね?」
私が二人を交互に見ると、音が聞こえるかと思うほどメイプルとテオはピキッと固まった。まさか私が忘れているとでも? 忘れっぽいのは事実だけども! 行きに馬車を飛ばした時にギャーギャー言ってたから覚えてる。あの時は昨日より速かったからなあ。仕方ないかもだけど。だから小屋ごとって提案したのに嫌がるとか! そんな権利はないのである!
二人が固まってる間に、私はとっとと飛行魔法を使って小屋を飛ばした。