チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
前は米を探していましたが、今は蜂蜜を探して三千里中です。ごきげんよう。元アラフィフ主婦の転生者、斉藤奈美恵です。店で探しましたが、望んでいた蜂蜜は見つかりませんでした。時間があったので街のあちこちで聞き込みをしましたが見当たりません。
って、解せぬ! 蜂蜜がない! というか、この辺りは無理と思う! って、私がキレた頃に一通の手紙がきた。テオが持ってた紙に書かれた転移陣を広げたら、その上に手紙が転送されてきたんだよね。って! そんな便利なものがあるんなら、使えばいいだろ! と言ったら、テオが持ってる転移陣とアーサーが持ってるものの間でしかやり取り出来ないらしい。OH...。糸電話か何かかな? 転生前世界で子供の頃、やったことあるなーって、違うぅ! とにかく! 二人が持ってる二枚の転移陣は互いの間を行ったり来たりしか出来ないのと、大きいものは送れないので主に手紙用に使われてるらしい。
私は宿の部屋でテオに差し出された手紙を広げて読んだ。というか、アーサー。せめて封はしない? くるっと巻くとかさ。何で一枚の紙、そのままなんだよ! これはもう、メモ! しかも最初の一文が、
『リディアの料理が食べたいぞーーー!』
って、何だよ! ホルモン鍋は持ってっただろ! 食べたんじゃないのか! って思ったけど、よく考えたら、アーサーが持ってった鍋は置いてくるだけという可能性もあるか。でも手紙(メモ)の冒頭がそれって、どんだけ残念だ!
メモの続きには明日にはこの街に戻ると書かれていた。
「何故、本題を先に書かないのかと」
「きっと、お嬢様と会えないのが寂しいのかと」
「旦那様、お嬢様大好きっすよね!」
黙れ二人とも。と、思ったけど私は読むのに忙しくて突っ込めなかった。ふざけた出だしだったけど、メモには細かく注文が書かれていた。私の某白ポケットに入ってる鍋を数個、放出できるようにしとくとか、馬車を頼んで欲しいとか、料理の材料が少ないようなら買い足しておくとか、宿には泊まらんとか、食べられる料理を作って某白ポケットで保管しておくとか……って!
「私は便利屋じゃねーから!」
全部読んだ私は紙を床にぱん! と投げようとした。けど、紙一枚だからひらひらと落ちるだけだった。くっ! 石コロでも包めば良かったか!? てか、自分で注文とか思うって、もうヤバいがすぎるくね!?
「馬車は確保しておかないとですね」
床から拾い上げたメモを見たメイプルがうんうん、と頷く。テオもそれを橫から覗いて頷く。
「材料も大事っすね! 野菜とか買ってきた方がいいっすかね?」
「いやいやいや待て待て待て」
私は真顔で言う二人を慌てて止めた。……止めたけど、アーサーのメモを見ると必要なのかもと思ってしまう。卵とかは前に寄った治水の村でゲットしたんだけど、あそこには何故かキャベツがなかった。サラダを作るならレタスやキュウリでもいいんだけど、ソース系カツ丼にはやっぱキャベツが欲しい。
「キャベツが欲しいな。卵は新鮮なら足してもいい。レタスは要検討。人参は在庫があるけど要検討、ただし緊急性は低い。肉は大量にあるから問題なし。塩ある、醤油ある、油ある、香辛料ある。乳製品は乳があるから必要ない。小麦粉はある。パン粉は作れる。米もある。米粉は要れば作る。ふりかけ……は要らない。氷は作れる。鍋はある。調理器具はある。ないのは作れる」
「お嬢様、早い早い早い!」
「え?」
急にメイプルに言われて私は首を傾げた。何だろ。あ!! もしかしてさっきの、口に出てたのか! あああ!!
「ごっ、ごめん。考えてることが口から出ただけだから」
「キャベツっすね! 人参もあった気がするっす! レタス……はないかも? 卵は新しいのっすね!」
テオがワクワクした顔で拳を握る。待ておい。でも止める前にテオがダッシュで旅館……間違い。宿の部屋を出てった。おおおーーーいいい!! 待てやー!
「まだ全部書き切れていないのに! テオさん、気が早すぎます!」
「そしてメイプルも駆け出そうとするな! 私の護衛だろ!」
「はっ! そ、そうでした。すみません」
何だろ。こいつら。飯のことになると他はどーでも良くなるっていうのが凄い。てか、護衛任務が最優先では!? テオはメイプルがいるから走って出てったのか!? それとも忘れて出てったのか!? 多分、後者だな!
にしても、テオって野菜のあるなしを把握してたのか。私は屋台を眺めるだけで何がどこにあるとか気にしてなかったのに。
「メイプルは野菜の売り場とか覚えてる?」
「はい。一度、見ましたので」
「は!? 一度見たら覚えられるの!?」
「え。は、はい。当たり前かと」
っきーーーーー!!! どうせ私は当たり前のことが出来ませんよ! 覚えられないよ! ぶらっとウインドーショッピングしてただけだし! ここの野菜が美味そうとか思えば覚えられたかもだけど! 雑多に並んでたから判らんわ! てか、食料品も同じのいっぱいあっただろ!
「護衛だから覚えられるのか」
「ええ。護衛任務に就いてると、主人がどこに行っても追いかけられるようにしてます。お嬢様の場合は特に!」
「強調しなくていい!」
私はメイプルの足をげしげしと踏んだ。