チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
無事にアーサーと合流した後、私たちは別の街に移動することになった。この街にはアシュフォードの転移陣がいくつかあるらしい。……まあ、アーサーが戻ってきた時、すぐにご飯をせがまれたけども。なに。子供? 赤子? 飯を要求しまくるのを見ると、そんな風に思ってしまう。
ちなみに生まれたての赤子は数時間に一度、授乳する。二時間くらいだったかな。寝る暇ない。ていうか、うたた寝くらいしか出来ない。たびたび起きるから寝不足必至。なので誰かが手伝ってくれないと危険とすら思う。
こいつらの飯の欲しがり方ってそれに近い! さすがに二時間置きとかはないけど! 人の顔見ると飯飯飯飯言うのってどうよ!? いや、喜んで食べてくれるのは嬉しいよ!? けどさ! ……あー、今さらだし、ま、いいか!
そんなこんなで移動である。次は南に下るらしい。どこ、とは言われなかったけども、ここよりは暑いらしく、今までより薄いのを着ることになる。収納は私だけども! 某白ポケット強すぎる! ちなみにアシュフォード家がある島の気候は1年通してあんまし変わんないから、薄着とか厚着っていうのはない。オールシーズン春か秋。なので、薄着でないと駄目というとこに行くのは、ちょっとワクテカ★
と、思ってた時期が私にもありました!
「あつーーーーーーーーーーーーーーい!!」
転移陣で移動し、部屋から出た瞬間、私は叫んだ。暑い暑い暑い! 薄着にしないと暑いよ! 真夏かよ! 猛暑かよ! 酷暑かよ!
「ふむ。やはりいつ来てもここは暑いな」
「旦那様、お召し替えを」
するっと動いたのはアーサー付の執事だった。私の護衛なはずのメイプルとテオは、私より先に倒れてる。おおい!
「こ、これは、何ですか……」
「暑いっすー! うう、水ください」
「倒れるなー!」
転生前世界日本の昭和体育教師の如く、私は喚いた。ていうか、私より先に倒れるとかどうなんだ!? しかもアーサー付の執事はさくさく動いてるのに!
「おお、リディアも暑いだろう! この転移陣は場所が場所なので、小部屋がいくつかあるのだ。着替えるといい」
爽やかな笑顔で行ったアーサーが執事に案内され、ひとつの部屋に入る。先にアーサーと執事の薄い服を渡しておいたけど、これが理由か!
「メイプル! どこでもいいから部屋に入る!」
「はっ、はい!」
倒れてたメイプルが慌てて立ち上がり、手近なドアを開ける。私は飛び込むように部屋に入り、メイプルはテオを引きずってきた。
「ドアを閉めろ! 風魔法ゆるめ!」
「はい!」
メイプルが言われるままに風魔法を使って緩い風を起こす。私は某白ポケットに入ってた氷をちょっと放出し、それをまた吸引し、圧縮して増幅してを繰り返して氷魔法をブッパした。……ゆるめで。
「あああー! 涼しいーーー!」
「最高ですー!」
「たっ、助かったっす……」
最初から部屋が涼しければ良かったんだけど、ここもかなり暑かった。なので、速攻で冷ました。あんまし冷たくなりすぎるとヤバいので、涼しい程度にしたけども。熱中症で倒れたらいかんし、かといって冷ましすぎても危ないだろうからね。
なのにテオがまだ突っ伏してる。何故だよ!
「俺、こういうとこ、初めてっす。うう、水ください」
「大量に浴びればいいね!」
イラッとした私は某白ポケットに入ってた水をドバッとテオに浴びせた。するとテオが活き活きと復活する。……これで良かったのか。ていうか、ちょっと勿体なかったかな。水が。
「それにしてもおとうさまは大丈夫なの? 氷魔法とか使えるんだっけ?」
「旦那様は全属性の魔法を使えますよ? 奥様もですけど」
「あー、そーかい!」
訊いた私が馬鹿でした! 得意魔法があるってだけで、使えるんだね! 何となく知ってたけどさ! 実はメイプルも氷魔法は使えるはず。でも同時に冷やしたかったから、風を頼んだのだ。
私も近頃は吸引・放出系魔法はかなり速く使えるようになった。吸引からの合成とか畳むとか増やすとか、時間かかってたら大変なんだよね。使い始めた頃よりものすごく速く出来るようになってる。でもまだ2種同時の放出は難しい。風なら風、氷なら氷、肉なら肉、野菜なら野菜だけ……ぎー! 考えた自分がイラッとした! 料理の形になってれば人参もジャガイモも肉もいけるんだけどなあ。まあ、いいや。
「メイプルさん! 乾かしてくださいっす!」
「贅沢な……テオさん、風魔法使えますよね?」
「自分にっていうのが難しくて」
「ほーら、風だ!」
二人の会話を聞いてた私は、苛々に任せて風を吸引して増幅して畳んで畳んで増やして合成して、テオに向かって放出した。
「げは!」
まるで何かに殴られたようにテオが壁まで吹っ飛ぶ。ザマア。でも飛んだのに器用に壁を蹴って着地する。ちっ! やっぱり受け身はとれるんだな、こいつ。怪我もしてないしけろっとしてる。
「もう、お嬢様。それじゃ乾きませんよ」
そんなことを言ってメイプルが扇風機みたいな風をテオに送る。
「あー、気持ち良いっすー!」
「……濡れたままだと風邪ひいても知らんぞ」
「えっ!? 俺、そういうのでひいたことないっす!」
テオが心底びっくりみたいな顔をする。あー、確かに島だと気温があんまし動かないからなあ。でも作業とかして汗をかいたら服は着替えると思うんだけど。みたいなことをテオに訊いたら、首を捻って腕組みをされた。
「汗で気持ち悪くなったら湯を浴びたりするっすよ? 風呂とか」
「あ、そうですね。お風呂は使いますよね」
頷く二人を見て私は何度も頷いた。さすがアシュフォード! 使用人の福利厚生もばっちりである! ……スケジュールは詰め詰めだけど。