チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

145 / 145
何でキッチンがあるんだろう

 大きな入り口を抜けると、ドーン! という感じの建物が見えた。広場では何人もの人が話したり、馬を繋いだり、井戸で水を汲んだり、荷を倉庫みたいなとこに入れたり、とにかく色々してる。ていうか、見える範囲だけど! どんだけ広いんだよ,ここ!

 

 でもって建物の入り口は一カ所。ここもでかいアーチ状の門があった。ナンデダヨ。二重扉かよ。と思ったら、ここでは防犯のために厳しくチェックされるという。今までの街にはこういうのはなかった。それだけ重要な場所ということだろう。門の周りには堀りみたいのがあったし。転生前世界日本の城の周りにはよくあったなあ。水で囲まれた城。鯉とか色んな魚がいた気がする。たまにガーとかいてヤバいというか? 何で最後まで飼えないものを買うのか。今でも謎すぎる。

 

 しまった。話が逸れた。

 

 入り口のチェックは恐ろしいことに顔パスだった。アーサー……怖いな。何しろアロハのおっさんが入り口の警備をビビらせたのだ。警備の人の声が裏返ってて、顔は引きつってた。あー……。やっぱアーサーが何度も来てるからかな。そして恐らく上客というか、有名なんだな、きっと。

 

 ていうか! アシュフォード家を知らないなんて世間知らずとか、恥ずかしいとか、そんなことを囁いてる人はダレデスカ!? メイプルとかテオなら判る。でも知らん周りの人間がそんなことを言ってるのはイミフである!

 

「何だ、ここはー!!」

「まあまあまあ、お嬢様、落ち着いてください」

 

 二回目の広場を抜けて3階の広い個室に案内され、ようやく私は全力で叫んだ。アーサーも一緒だけど、もういい! 私は叫びを我慢しない! 私を宥めたのはメイプルだった。

 

「そもそもアシュフォードを知らん者は恥知らずとか、何だよ!」

「いや、それは仕方ないっす。俺も同意っす」

「ですよね。知らない人は少ないかと。あ、でも田舎というか、奥地の人はもしかしたら知らないかも知れません。生活に関係ないと思っているかも知れませんし」

 

 テオの後にメイプルがつらつらと説明してくれる。アーサーは呑気に椅子に腰掛けてお茶をしばいているところだ。仲がいいな、とか言って微笑んでる。ちっがーう! でもいちいち突っ込んだら疲れるから今はアーサーは放置。アロハのままでのんびりしてるけど、放置ったら放置!

 

「広場が2個ってなに!?」

「あ、それはひとつめの広場は馬小屋とかあって、馬車をとめることも出来ます。御者も休むところがあります。建物は別ですけど」

「メイプル、来たことあるの?」

 

 そういえば、と思ってメイプルに改めて訊いてみた。するとメイプルが当然、という顔で頷く。

 

「私たちメイドは一度は来ています。訓練として入りますね」

「俺は入ったことないっす。外の仕事してるから」

 

 あ。テオは下男だからとか言ってたな。ホルモンの時に。ホレスもそうだって言ってた。厨房とかの屋敷内で働く人たちとは別なのかな。私にとっては全員が使用人って感覚なんだけど。

 

 それはともかく、だ!

 

「2個目の広場でも取引ぽいことしてたじゃん! 広場が2つある意味が判らん!」

「それは商人の取引の規模の違いです。外側の広場で話している者は、小さな取引しかしてませんでした」

「そっすね。聞こえたのはそんな感じの話っすね」

 

 ……こいつら、もしかして歩きながら周りの話し声をばっちり聞いてたってことか? 護衛として優秀すぎるくね!? 何なの! 私には聞こえてなかったんだが!? 忍者か!? いや、転生前世界日本の忍者って、諜報とか……あ、合ってたわ! でも諜報とかの活動ってジャスミンの仕事ではなかろうか?

 

「ねえ。そんなの聞き分けられるって、ジャスミンみたいな仕事してる人だけだと思ってたんだが」

 

 私は驚くことばかりで能面みたいな顔になってると思う。多分。でもそんな私を見てもメイプル&テオは平然としている。

 

「周囲の声はある程度は聴き取れないと、護衛任務にはつけません」

「っす。出来ないと護衛で外に出るとかは無理っすね」

 

 声を揃えて言うなし! 私は頭を抱えて唸った。そうだった! 私の護衛って、この二人以外はついてなかったわ! そっか、そういう基準だったのか! でもメイプルはともかくテオは!? あ、転移魔法を使えるからか? でもポンコツなテオとバトルったら私は負ける自信がある!

 

「あ゛ー。とにかく。おとうさまはここで何をするのかと」

「ん? 昼食だな! リディア! 頼む!」

 

 アーサーが元気に頼むというか命令してくる。判った判った! 確かにさっきから腹は減ってるしね! しかもこの部屋、何故かキッチンがついてるんだよな……。もしかしてアーサーがそういう部屋を頼んだのだろうか。そういう気配は見せなかったけども。もしかしたらこっそり執事が動いてたとかか?

 

 まあいい! 私は半ば以上にヤケクソでキッチンに入った。作る飯はこれまで出したものでいいだろう。てか、メイプルとテオだけが先に食ってるものがかなりあるのだ。グラタンもそーだし、ビーフシチューもだし。でもそれを二人が先に食べた、とアーサーにバレたら、もの凄く悲しい顔をして、下手したら泣きながらorzするかも知れない。というか、その可能性が高い!

 

 なので、出来れば新しいの、と思うんだけどどうしよう。そーいえばフランスパンもアシュフォードではレアなんだよなあ。スティーブンが作れないから。それを出すとして、あとは……そうだ! 鶏にしよう! 豚とか牛とかが多いから、たまには鶏肉が食べたいし!

 

 そうだなあ。簡単なやつがいいよね。そんなことを考えつつ私はメイプルに踏み台を持って来てもらい、某白ポケットに入ってた鶏肉を放出した。

 

「新しい料理ですか!?」

「やったー!!」

 

 無邪気に喜ぶメイプルを横目で見て、私はため息を吐いた。こいつら、働かせたろ。

 

「メイプルはこれを千切って。テオはこれをつぶして」

「ん? 香草とかですか?」

「え、これコショウっすよね? 粒のコショウって挽くものでは……」

「やかましい。これで潰せ」

 

 メイプルには香草を千切ってもらい、テオには乳鉢と乳棒を放出してやる。つまり、黒コショウを挽くのではなく、すりこ木みたいので潰すのである!

 

「え、これ風魔法で切ったらダメっすか?」

「駄目に決まってんだろ!」

 

 そんなことしたらテオが楽すぎる。というのを言わず、私は却下した。ぶーたれた顔をしつつも、テオがコショウを潰していく。よし、ちょっとすっきりした!

 

 香草と香辛料が用意できたら、塩とかと一緒に肉に塗したりする。某白ポケットに入ってるフライパンを放出し、皮目から焼く。うん、久し振りにやったけど悪くないな。でもこの手の料理って、もっと凝ったやつは屋敷の夕食とかのメインに出てきたりするから、目新しくないかも知れない。

 

 ホントは照り焼きでも、と思ったんだけど、スカーレットがどの程度の料理を許してくれるか判らん。ていうか、何でアーサーに内緒にしているのか理解できん。ただ、理由はあるんだと思う。もしかしたらアーサーが知ってしまうと、うっかり出先で言ってしまうとか……あり得るな!

 

 焼いた鶏肉とフランスパン、ついでにサラダも作ってテーブルに並べたら、アーサーが号泣しながら食べ始めた。あー、こういう反応されると次も作ろうかな、みたいな気分になるのは転生前と同じだな。ホント。




https://syosetu.org/novel/413002/
こちらから作品を登録してもらえると嬉しいです

明日は更新できないかもしれません
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

私は目立たず生きたいだけ 日陰者転移者の異世界生活(作者:稲荷竜)(オリジナル:ファンタジー/日常)

私はただ、静かに地味に生きていきたいんです。▼異世界転移。やっていたオンラインゲームの、たくさん育てたアバターの能力そのまま。たぶんチート転移なんだと思う。でも、派手な活躍とか、そういうのはなく、地味にコツコツ、堅実に生きていきたいと、そう思っています。▼なるべく、人とコミュニケーションをとることなく。でも、人里で文明の恩恵は、享受したい。▼結構、同じこと、…


総合評価:184/評価:6.43/連載:19話/更新日時:2026年11月03日(火) 11:00 小説情報

魔法少女まどか☆マギカ [異編] 反逆のキュゥべえ(作者:折無堂)(原作:魔法少女まどか☆マギカ)

※原作大幅改変IFです。▼「キュゥべえが善良になった」のではなく、▼「キュゥべえが従来の魔法少女システムを非効率だと判断したら」▼という前提で進みます。▼キュゥべえの行動原理、魔法少女システム、魔女などについて独自解釈・独自設定を多く含みます。▼※TVアニメ版を前提としたIF作品です。▼『[新編]叛逆の物語』の改変・派生作品ではありません。▼――――――――…


総合評価:1628/評価:8.81/完結:35話/更新日時:2026年09月24日(木) 21:53 小説情報

転生特典に量産型の機体のみという縛りがあったのでジェイアークを選んでやった件(作者:友(ユウ))(原作:色々)

神の気まぐれで突如として転生させられることになった主人公。▼転生特典を付けてくれるというが、これも神の気まぐれで量産型の機体のみという縛りを受けてしまう。▼そこで主人公は『勇者王ガオガイガー』に出てくるジェイアークを選んだ結果………▼これは、気まぐれな神に選ばれた主人公が白き箱舟に乗って世界を巡る物語である!▼▼入りきらなかったタグ▼・ガンダムoo▼・マクロ…


総合評価:7751/評価:7.69/連載:205話/更新日時:2026年11月02日(月) 00:02 小説情報

世界に冠たる帝国よ永遠たれ(作者:ちんすこー)(原作:幼女戦記)

存在Xは悩んでいた。▼どんなに試行してもターニャちゃんが自分を信仰してくれない。▼悩んだ存在Xは知り合いの天照大神ちゃんから貰った面白そうな魂をターニャちゃんの世界にぶち込むことにした。▼※▼この作品は敵国をなぎ倒す爽快ストーリーではありません。▼ちなみに作者は一次大戦や独ソ戦みたいな大出血戦が大好物です。つまりそういうことです。▼AIは補助として使用してい…


総合評価:3583/評価:8.52/連載:77話/更新日時:2026年11月02日(月) 17:26 小説情報

死んでもいいデスゲーム(作者:夜深夜)(原作:ソードアート・オンライン)

 今頃、リアルの身体はどうなっているのだろう。▼ 色んな線に繋がれて生かしてもらっているのかもしれないな。▼ この仮想空間の中では、どこへでも駆けて行くことができるというのに。▼ ▼ 死んだら、死ぬ。▼ 当たり前のようだがそうではない。▼ ここはゲームの世界の中。▼ ふつうのゲームは死んでも死なない。▼ しかし、その常識は覆された。▼ ▼ 死にたいわけではな…


総合評価:4101/評価:8.59/連載:20話/更新日時:2026年09月26日(土) 15:12 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>