チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
そろそろ言葉遣いはどーしたと突っ込まれるんじゃないかとビビり気味な、元アラフィフ主婦の転生してきた斉藤奈美恵です。ごきげんよう。
もしも言葉遣いの教育係がいたら張り倒されそうな言葉遣いなのに、二人は全く動じない。それどころか私に生肉を渡そうとしている。解せぬ。なんでこんな幼児に生肉。しかもそれを平気で見せるのか……
問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
というのが元ネタだが。知りたい人は吉野屋コピペで調べよ。
それはともかく! ホントに小一時間ほど問い詰めたいよ!
そんなことを心で叫んだ私は呆然と生肉入りのタライを見ていた。そういえばこの世界には金属のタライがあるんだなぁ。こんな風に血みどろの肉を入れたり、洗濯するのに木のタライだとさすがにキツいか。洗った後できっちり干さないと黴びるからね。
タライは大人のホレスが両腕で抱えられるぎりぎりのサイズだった。しかも肉は山積み。そんなもん、幼児の私が持てるはずがない。物理。しかもメイプルも止めろや。魔法がどうとか関係なくない?
それに私の言葉遣いがおかしいと指摘しないのも変。私はぐるぐると混乱しながらタライ肉をじーっと見ていた。とりま、言葉遣いからいってみよう。
「あの、メイプル、ホレス。わたしの言葉遣いは変ではないのですか?」
「は? 何がですか?」
「えーと、さっきのとか……ほら、せめて洗えや、とか……」
「え?」
「どうしたんですじゃ、リディア様?」
二人とも怪訝な顔をしている。これはもしかして……。
「メイプル。わたしの言うことを繰り返してみてください。……せめて洗えや」
「は、はい。ええ、と……『せめて洗ってくださいまし』ですよね?」
「やっぱりかー!!!!」
どうやらご都合よく私の言葉はお嬢様言語に変換されているらしい。これはエレガントなんとかか! さっきまで地下茎に萌えてたメイプルが突っ込まないということは、私の話し言葉の自動変換が始まったってこと!? つまり、気遣ってわざわざ丁寧に喋る必要はない!? 楽すぎる!
言葉は通じる、文字は読めるという時点でかなり楽だと思ったけど、これは最早チートだろ。でも雲のイケメンはチートはないとか言ってたし、どういうことだってばよ。
「あー、つまり、私がなにゆっても気にならないと」
「え? は、はい? そうですね? いかがなされましたか、お嬢様」
唐突に妙なことを言い始めたと思ったのか、メイプルが眉間にちょっとしわを寄せている。ふむ。なるほど。タライ肉を私に渡すのは変なんだよ、判るかね? 判んないだろうなぁ、と思ったので私はじっとりとした目で二人を見た。
「では。遠慮なく」
私はすーはー、と息を整えてからまくし立てた。
「タライ肉を持たせられても困るんじゃ! つーか、どうしてそんな発想になる!? 魔法がどーとかも関係ねーだろ!? というか、これまで頑張って喋ってたのが馬鹿馬鹿しくなったわ! 私の頑張った時間を返せ! 戻せ! 説明しなかった雲のイケメンはジャンピング土下座で私に全力で謝れええええ!!」
「はあ……? リディア様は肉はお嫌ですかな?」
「よ-しよしよしよし。お嬢様、大丈夫ですからねー」
二人はそろって首を傾げ、メイプルは私をあやした。つまりこれは単に私がワガママを言っている、もしくはぐずってる、という認識になっているということだ。おのれ。雲のイケメンめ。
はー……。ラノベ的な感じのお嬢様を必死で演じていた私が馬鹿みたいじゃん。とほほ。