チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
時をかけるなんとかみたいに記憶がなくなればいいのに。死んで異世界に転生した永遠のアラフィフ主婦の斉藤奈美恵です。ごきげんよう。まあ、あの話は記憶がなくなるのが切ない感じだった気がするので、例えに使うのは変かもだけど。
転生する時に転生前の記憶が消去されれば、生きるのがかなり楽だと思う。ていうか、少なくとも要らん記憶に引きずられることはないと思う。そーいう作品もあったような? 私が読んだものの中にはなかったけど。
しかも食べるものに関しては貪欲な国、日本で生活してた私にとって、ウマ飯はマジで死活問題なのである。まあ、飯のことを気にしない人は気にしないのかもだけど。
小屋でメイプルを拝み倒した私は、次にエミリアという人に会うことにした。行きと同じく馬車で屋敷に戻る。……帰りだから落ち着いてゆっくり周りを見れた。うん。背が高い草の手前には、芝生で整えられた広々とした庭があった。庭園といえるほどに花とかも植えてあって、手入れも行き届いてる。でもって、そこを通る道は異様なほどに綺麗になっている。
というか、これ、石畳? ん? イメージと違うんだが。アスファルトじゃないのに揺れが少ない。
「メイプル。この道はどうやって作っているの?」
「あっ、はい! 馬車が通る道は石を並べて土魔法でならしてあるんです。揺れが少なくなるように!」
「なっ、なるほど」
行きははしゃいでて気付かなかったというより、揺れなかったから判んなかったらしい。なるほどー、って、土魔法って攻撃じゃないことに使えるの!? あれ!? じゃあ、アシュフォード家の人が攻撃だけ出来ると思ってた私の勘違いってこと!? そーいえばスカーレットの具合が悪い間、屋敷の窓を石……じゃない、土魔法で二重窓にしてたんだった!
はっ! 確かに雲のイケメンは、治療系の魔法だけが使えないって言ってたっけ。考えてみると、私の吸引の魔法も最初は攻撃以外のことに使ったなぁ。スカーレットの病気を吸って放出したわけで……えっ、私が鈍いってこと!? 気付くのが遅いと!? もしかしてずっと勘違いしていたと!? 半年以上、攻撃系魔法の訓練してたから、判んなくなったとかか!? おのれ、筋肉アーサーめ! うっかり勘違いしてたよ! いっつ・人のせい★
そもそも雲のイケメンがド○グ・スレイブが使えるとか言ってたし、私もアーサーとかスカーレットの魔法をみたり訓練したりしてるうちに認識がおかしくなってたっぽい。だとすると他の使い方も模索せねばかも知れない。もしかしたらウマ飯に使えるかもだし。
悶々と考えつつ乗ってた馬車を降りた私は、使用人がずらっと並んだ使用人による、おかえりなさいませ、の合唱攻撃を笑顔で切り抜け、メイプルに厨房へ案内してもらった。途中で毎度のモンスターが出たけど、メイプルがさくっと倒してくれた。
……モンスターが出るのを当たり前のこととして倒してると、ほんっとに危機感とか恐怖とかなくなるなー。屋敷に出る程度のモンスターなら私にも簡単に倒せるんだよね。こういうところはゲームとかと同じかも知んない。でも廊下とかで出るのは止めて欲しい、というのはある。メイプルが私がモンスターに気付く前に手早く火を放つから、そのことにびっくりするんだよ!
モンスターを華麗に倒していくメイプルに案内され、私はやっと厨房に辿り着いた。
は!? ねえ、ここって異世界だよね!?