チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
親子は似てるというけども、こんなに似てたのか、とびっくりしている元アラフィフ主婦の転生者な斉藤奈美恵です。今は二歳児で絶賛、ウマ飯を求め中。
それにしてもスカーレットのスティーブンの問い詰め方は凄かった。いや、穏やかではあるんだよ、穏やかでは。だけどもの凄い迫力がある。しかも徐々に早口になる辺り、私と似てるのではなかろうか。私と似たようなことをスティーブンに聞いてから、ほほ、と笑って首を傾げた。
「あら。王家の方々がそのようなことをお決めになったの? わたくし、存じませんでしたわ。お話を是非ともお伺いしたいですわね」
「は? おかあさま、王家の人と繋ぎがあるんですか?」
あ、繋ぎって変だったか? いいや! ここは自動翻訳に丸投げ! 頑張れ、自動翻訳機! あれ? 機械じゃなかったかな? まあ、いっか!
「アシュフォードは王家からの命でこの土地を預かっているのです。月に一度は旦那様が王宮に足を運んでいらっしゃるのですよ」
「えー! 知らなかったです!」
……まあ、二歳児にそういうことは教えないか。と思いつつ、私は驚いてみせた。いや、驚いたのは驚いたんだよ。でもどっちかっていうと、スカーレットの反応にびっくりだよ。王家にケチつけたように聞こえたし、事実、そうなんだと思うし。ホント、アシュフォード家ってどういう(略
あれ? 土地って言った? 領地ではなく?
いや、この辺りの質問は後にしよう。今はウマ飯に全力注がねばならぬ!
私は出来るだけ真面目にキリッとした顔をしてみた。
「おかあさま。お肉に下味は必要だと思うのです」
「ええ、そうですわね、リディア。わたくしも味わってみたいですわ」
にっこり笑ったスカーレットの言葉に厨房はざわめいたものの、それほど大きな騒ぎにはならなかった。スティーブンたちは作り方を知らないのではない。単にそういった料理を私たちに出すという考えがなかっただけだ。
それにしても、牛肉=貴い人が食うモノ、と教えられるとか、そういうもんだとか、メイプルとホレスが言ってなかったか? もしかしてそういう教育にはアーサーとスカーレットは関わっていないのだろうか。面接は立ち会うけど後はお任せって考えるのが自然か。そもそもわざわざ二人が使用人の採用面接に立ち会うってだけで珍しいと思うし。
私が口を出すまでもなく、スティーブンが豚肉とか鶏肉と同じように下味をつけた牛肉を焼く。あれ? さっきは別の人が焼いて……あー。厨房の端で何人かと焦げた肉をどうにかしようとしてる。そっか、牛肉って普通は食べないから、どーしてくれよう、という感じなのかも知れない。
「おかあさま。先ほどのお肉は焦げてしまって、食べられるところが少ないと思うのです」
「そうね。では、その肉は処分してくださる?」
スカーレットは私の言いたいことを察してくれたのか、焦げ肉を囲んでた数人に話しかける。するとその人たちが慌てたように焦げ肉を持って厨房の奥に向かった。ん? もしかして厨房にもバックヤードがあるのかな? バックヤードは小売店とかの売り場の奥? みたいなところ。コンビニとかの店員が制服を脱ぎ着したり、休憩したりもする。中にはエアコンのない地獄のようなところもあるみたいだから改善しろしとも思う。熱中症対策すべき。
そうではなくて!
肉を処分しろということは、要するにそこの人たちで食っちゃってください、ということだ。牛肉がお高いもので私たちの口にしか入れられん、ということであれば、厨房には食べたことがない人もいるだろう。そういう人の味見用にしろ、と私も思う。
ていうか! 一度食ってみんなで唖然とするがいいよ!