チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
そういえば吸引と放出という魔法を使うのを忘れてた、今は二歳児の斉藤奈美恵です。ウマ飯を必死で求めた結果、食卓は豪華になりました。
「まあ。こんなに美味しかったのですね」
「うーまーいーぞー!」
微笑むスカーレットと燃えて吼えるアーサーの温度差が凄い。そして私は涙している。おおう、初めて牛肉に塩コショウがついてきた。それに人参とかジャガイモとかを茹でたものも添えてある。スープもあるしパンもカゴに入ってる。おおお……ステキ食事ではありませんか! 転生前世界日本でのステーキランチというところ? 残念ながら豪華と言っても肉がちょっち硬いから、高級レストランのディナーとかまではいかないと思う。
それはともかく。
冒頭の吸引と放出だけども。
厨房で一騒ぎした後、スカーレットに言われたのだ。私が小屋で肉タライを吸引し、厨房で放出すれば良かったのでは、と。
たっ、確かにそーかもだけども! 便利グッズみたいに魔法を使っていいものなのか!? それこそ四次○ポケットなのでは!? どこに入ってるかは自分でも判んないけど、血みどろのタライ肉とかタライ内臓を取り込むとか、考えたくないというか、嫌だったし! ていうか、私もすっかり忘れてたわ!
……でもウマ飯を本気で求めるなら、その程度のことは我慢した方が良かったのかもとちょっと後悔した。結局はメイプルがすぐにホレスの小屋まで馬車を走らせて肉タライを持って来て問題は解決。そのついでに野菜を載せてきてくれたので食卓はより豪華になった。
「このような食事をしたのは初めてです。王家はどういうつもりでお触れを出しているのでしょう」
「ふむ。確かに。今度、問い詰めてみよう。それにしてもリディア。泣くほど嬉しいのか?」
問い詰めるって、出来るんかい。私は泣きつつ飯を食いつつ、アーサーを見た。一体どういう関係なのか訊きたいけども、とりあえずウマ飯ばんざい。
「はい! 美味しくて涙がちょちょ切れです!」
噛んだ肉を飲み込んでから、私は頷いて返事をした。ばんざいウマ飯である。
食事をしながら三人で話をする。これはいつもの通りだった。だが今日ばかりは飯ネタが多い。特に多いのは肉の扱いについてだ。どうもこの二人、調味料の種類をほぼ知らないらしい。って、そーいえばスカーレットも、しおこしょう、とか発音が微妙だったし、多分知らなかったのだろう。
私はウマ飯をゲットしつつあるので、それをさらに続けつつ魔法の訓練や書庫での調べ物を続けるようにスカーレットに命じられた。……あの。命令口調なのはどうしてですか。あ、すみません、拒否権はないですかそうですか。スカーレットに微笑まれて言われた私は茹でた芋を口に入れながら頷いた。芋ももうちょいどうにか出来そう。茹でた後に焼くとかどーだろ。いや今は己の身を大事にしたい。
「おかあさま。わたしは牛肉以外のお肉も食べたいです」
「なにい!? 牛以外の肉があるのか!」
スカーレットより早く反応したのはアーサーだった。テーブルにばん、と手をついて立ち上がって私をガン見する。ちょっ、涎、涎! 大丈夫か、アーサー! 実はアーサーもウマ飯を求めてたのか!? 似たもの親子……と言うと、どうしても私が親な気分なんだけど、まあいい。アーサーが涎が垂れそうになってたことに気付いたのか、座ってからナプキンで口元を拭う。
それにしても牛肉以外の肉だけでこんな反応になるのか。この世界の食事って一体どうなってるんだ。そもそも肉だけで身体は大丈夫か? 野菜も食えよと思ってしまう。
でも実際には私もアーサーもスカーレットも、肉だけの食事が原因で身体を壊したことはないと思う。異世界の住人はもしかして身体の構造が違うのかも? そーいえば魔法とか使えるしなあ。それに前に見せてもらった魔力の流れとかいうのも、転生前世界の人体ではちょっちあり得ない気がする。……そういう人がいたかもなので断言は出来ないけど。
うーん、と考えながら私はアーサーをじーっと見た。こんなにウマ飯を求めている相手に、何も教えないってのもアレかなあ。
「はい。豚肉や鶏肉やその他の肉は食べられると思います。侍女のメイプルとか他の使用人も口にしているようなので」
「なーにー! おのれ、王家! まさか我らに偏った食事を押しつけているのか!」
「たぶんそうですねー」
私はアーサーから食事に目を戻してフォークで人参を刺して口に入れた。噛むと野菜の優しい味が身体に染みわたるぅーー! 生きてて良かった! ていうか、人参がある世界で良かった! ちなみに私は人参も大好物である!
https://syosetu.org/novel/413002/
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ウマ飯をようやくゲットしました
私自身は人参はさほど好きじゃないというか
嫌いじゃなくて食べられるけどそこまでじゃないというか
でも斉藤さんは大好きみたいです