チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

27 / 27
絞り取るは正しかった

 色々あって三歳になりました。三歳でも永遠のアラフィフ、異世界転生してしまった斉藤奈美恵です。でもって今では日常的にウマ飯が食べられるようになりました。そして変なスキルもゲットしました。

 

 ていうか! 調味料が合成出来るってなんだよ! ゲームかよ! 香味野菜でブーケガルニを作れた時はどーしてくれようかと思ったよ! ブーケガルニって香草を結わえるんだから、普通に手で出来るじゃん! なのに吸引からの合成って何なんだよ! というか、ぴろん、と音がして合成という文字が脳裏に表れるのは止めて頂きたい! しかもそれをアーサーとスカーレットは魔法と言い放った。食材の合成が魔法て。どういうことかと。

 

 そんでもって私の日課となったのは、魔法の訓練と書庫での読書……プラス農園での乳しぼりだった。

 ナンデダヨ!

 

「いやもー、毎日毎日毎日、何で私が乳しぼりをしてるのか、小一時間」

「それはお嬢様が一番お上手だからです」

「そりゃ、毎日やってりゃ慣れるわ!」

 

 隣で牛の乳を搾ってたメイプルに言われて私は反射的に返事した。三歳児にやらせる仕事か!? これ! 確かに私は吸引出来るよ!? でも乳の吸引をしなきゃならんのは納得いかない! あっ、でも乳の吸引はスカーレットの時も同じか! だから乳しぼり……待てい! 何だか流されてるぞ、私!

 

 具体的には牛の乳房に手を当てて吸引。でもって傍に置いてるバケツに放出。これでかなりの乳が搾れる。さくっと搾れるからか牛もごきげんだ。ほっとくと乳房炎というのを起こすらしいしね。スカーレットがヤバかった乳腺炎の牛バージョンかな。

 

 というか、これってもはや牛を絞り取るに近くね!?

 

 ちなみに肉になるのはバッファロー的な牛、乳を出すのは別の牛、つまり乳牛だった。OH...。乳牛がいたよ、と感動したのは最初だけ。初めて見た時は、これがいれば牛乳・バター・クリーム・チーズが食べられる! と心の中で小躍りした。……うん、小躍りしたよ。まさか自分がそれをやらされると思ってなかったからね!

 

 さらにヤギの乳も搾らされている。ヤギの乳は主にチーズの原料にする……ってか、何でチーズとかの食材があるのに、一年前までの私たちの食卓になかったのかと! チーズくらい出してくれよ! まあ、今は出てくるからいいけどさ。

 

「今日は搾乳した後、チーズ加工ですよ! 張り切って行きましょう!」

 

 にこにこと笑うメイプルに私はげんなりした。判るよ。メイプルは田舎でいっつもやってたから楽しいんだよね? うん。ステキ実家のことを思い出して嬉しいんだよね。

 

 でも私は嬉しくない!

 

「チーズ、嫌だなあ……。だって私が頑張るだけじゃん、あれ」

 

 普通の作り方なら私もワクワクして見られたし、手伝えたかも知れない。が!

 

 吸引からの放出であっという間にチーズが完成★

 

 というのは止めて欲しいマジで。頭の中で毎度毎度、料理番組のオープニングが流れんだよ! タイトルは確かおもちゃの兵隊のがどーとかだった気がする。転生してから三年経ってるし、そんな頻繁に番組見てなかったからうろ覚えだけども。

 

 それは置いといて。

 

 チーズが出来るのもどういう原理なのかは私にもさっぱりだ。牛の乳を吸引して、チーズをイメージして放出すると出来るというね。調味料とかもそうだけど、もう、ホントこれって私を調理便利グッズ扱いしてるくね!? しかも食材極振りで!

 

 私はメイプルを見て、やれやれとため息を吐いた。メイプルは相変わらずニコニコである。相変わらず私の言葉遣いは問題ないぽい。だからというか、私は近頃は自動翻訳機に頼ってばかりいる。たまには頑張って喋るんだけど、吸引から放出して食材を出してるうちに、なんかもうどーでも良くなってしまった。

 

 急に自動翻訳機が使えなくなったらどうするか、とも考えた。でも正直、異世界転生だって急だった訳で。くそ、雲のイケメン、今ごろ笑って……は、ないか。あの無表情で笑えるとは思えないし。あいつは私に判りやすい形にしてる、とか言ってたから、きっと本体は別の形なのだろう。もしかしたら形なんかないかも知んない。

 

 憂鬱になった私は、はあぁあああ、と肺の空気いっぱいに息を吐いた。げんなりというかぐったりだ。その間ももちろん、牛の乳を吸引してバケツに放出していく。

 

「チーズ終わったら魔法かあ。おかあさまの訓練、マジヤバいからなあ」

「スカーレット様はお強いですから」

 

 屋敷の中にうろうろしてるモンスターを倒す程度なら小指一本で出来るようになった私だけど、未だにスカーレットの訓練にはついていくのがやっとだ。というか、それを見越して手加減してくれているんだろうけどさ。これならアーサーのがマシだった、というくらいにはキッツい。毎回毎回、娘からしばかれてる気分になる。

 

 スカーレットがガチで本気になったのは、どうやら食事のせいらしい。あーのー、私が食材に口出したり、吸引放出したりして色んなものが食べられるようになったからって、張り切って訓練しなくて良くない!? しかもスカーレットがノリノリってどういうこと!? あんた忙しいんじゃなかったのか!?

 

 と思ってやんわりと質問したら、速攻で仕事を片付けて訓練しているのだとか。速攻しなくて良い!! ていうか、何でそこで張り切る!? 私をどうしたいの!? モンスターを倒せればOKくらいの感じで良くね!?

 

 そんなことをいじいじと考えながら、私はひたすら牛の乳を吸引していった。とほほ。




https://syosetu.org/novel/413002/
こちらから作品を登録してもらえると嬉しいです

操作を間違えたのか下書きが大量に生産されてビビりました
あせった……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。