チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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クッキーで釣られたわけじゃない

 私は食材生産機になったおかげで、食材管理担当のエミリアと知り合いになれた。いや、生産機て。自分で言ってて悲しくなるよ!

 

 会う前までエミリアは若い可愛いステキ女子だと思っていた。あっ! 別にステキというのを否定はしないよ!? でも年がね!? 私と変わんないんだよ。アラフィフ……うっ、頭が! 頭が痛いぞ! 私もアラフィフ! うん、間違いない! たとえ転生してから三年経ってても!

 

「エミリアー。持って来たよー」

 

 食材を馬車に載せて運ぶ? ノンノン。私の吸収で運搬も軽々だよ。ホントこれ、便利過ぎるくね? いや! 私は食材を運んだり牛の乳を吸引したりチーズを合成するのが本望というわけじゃないよ!? ちなみに移動には馬車を使う。遠いから。

 

「まあ、リディアお嬢様。今日もありがとうございます」

 

 食材を管理する場所は厨房の奥だ。裏口から運ぶのがいつもの私の仕……おい、待て、私。自然に仕事とか言ってるんじゃない! 私は三歳児だっての!

 

 呑気に笑うエミリアに案内されたのは、いつもの冷蔵庫の前。メイプルが冷蔵庫の扉を開けたので、私はその中に牛乳やらチーズやらを放出した。イメージすればそっと置けるので、間仕切りになってる板の上に置いていく。今日も綺麗に並んだ~! ふー。って、仕事終わりにひと息つくみたいな感じになってる、私!

 

「はい。いつもありがとうございます、リディアお嬢様。今日のおやつです」

「わーい!」

 

 冷蔵庫の扉を閉めたエミリアが両手いっぱいのクッキーを出してくれる。これが割と楽しみ。てか、せめてこれくらいの報酬がないとやってられんわ! 私はクッキーをメイプルに預かってもらった。クッキーは訓練の最中に食べたりするのは許可されている。書庫ではアウトだけど。

 

「メイプル、いつものようにしてね」

「かしこまりました、お嬢様。お預かりします」

「でも、一枚ずつならいいよね?」

「はい! 良いと思います!」

 

 その場でメイプルと頷き合う。でもって私はクッキーを一枚つまんで口に入れた。いつもながら美味しい。プレーンなバタークッキーだ。ここにチョコとかあれば砕いていれても美味いんだろうけど、ない物ねだりはいくない。ちなみにウマ飯ねだりはないものではなかったのでカウントしない。

 

「やっぱり美味しい! お菓子担当の方、さらに腕を上げてませんか!?」

 

 メイプルが目をきらきらさせて言う。うんうん、と私も頷いた。するとエミリアが首をちょっと傾けて微笑む。

 

「そうなのですよ。リディアお嬢様が持って来てくださる食材の質がとても良いので、厨房の者たちが張り切っておりまして」

「だからどんどん美味しくなってると。いや、最初から美味しかったんですけども」

 

 ちまちまとクッキーをかじりながら私は返事した。するとまあまあ、と嬉しそうにエミリアが笑う。このエミリア、とても上品というか楚々としているというか。元気なメイプルとは違う味があって面白い。屋敷の使用人にもやっぱりカラーとかそういうのがあるんだな。

 

 ていうか、お嬢様ってむしろエミリアみたいな人のことを言うのでは? あっ、年齢が……いや! 年齢がどーとかじゃない! アラフィフだってお嬢様でもいいではないか! 結婚してなければだけども! 結婚したら奥様とかになるだろうし。

 

 私とメイプルはクッキーを食べてから、訓練場になってる庭に移動した。ここんちの庭っていくつもあるんだよね。正面玄関の前、屋敷のサイド、でもって後ろ。屋敷全体がいくつもの庭に囲まれていると知ったのは、ウマ飯をゲットした後だった。訓練場になってるのは、屋敷の後ろにある庭。あんまし手入れされてないのは、魔法ぶっぱして、色々なくなるかららしい。……確かに庭木とか植えても吹っ飛ばされたら意味ないよね。

 

 スカーレットが庭のガゼボで優雅にお茶している。ガゼボっていうのは……漢字なら東屋とか四阿か? とにかくガゼボって無駄に場所食うので配置が難しいんだよね。あの家具って何マスだっけか。あ、ゲームに現実逃避している場合じゃなかった。

 

「ごきげんよう。おかあさま」

 

 一応、格好だけはちゃんとしないと、と私はスカートをつまんでちょっとだけお辞儀した。五体投地とか土下座が通じる世界みたいだから、全力でお辞儀してもいいんだけど。まあ、ここはこっちの世界に合わせた挨拶でいいと私は思ってる。

 

「ごきげんよう。リディア。今日も良い天気ですね」

 

 微笑んだスカーレットがメイプルに軽く頷く。するとメイプルがささっと動いてテーブル挟んでスカーレットの向かいにある椅子を引く。私はにこりと笑ってその椅子に向かった。嫌だけど!

 

 ……あのさあ。幼児が座るぷーぷー鳴る椅子ってあるじゃん? いや、実際に音は鳴らないんだけど、そういう感じのがあるんだよ。で、あれのでかい版ってどーかとおもうんだよね。同じベビーチェアなら、三歳児用のがあるんじゃないのか。そう思って使用人に訊ねたことがあるんだけど、残念ながらそういうのはなかった。OH...。

 

 ちなみに最近(転生前世界日本の三年前)のベビーチェアは種類も色々あるらしい。転生前世界日本の三十年前くらい……くっ、言ってて頭が痛くなる! まあいい! その頃のベビーチェアは選ぶ余地があんましなかったんだよね。今はおしゃれ系なものとかあるっぽいけど、私のうちで使ってたのは背の低いチャイルドシートみたいな、要はおなかと股間のとこに支えるベルトがついてる、全体がちゃらい素材で出来た背の低い椅子だった。ちゃぶ台で食事してたからね。

 

 あっ、チャイルドシートは子供を車に乗せる時に使うやつね。念のため。着用義務になった頃にはもう、うちの子は六歳をオーバーしてたからなあ……。一応、車を使う時は危ないから使ってたけど、まさか義務になるとは……。でも、あれがないと危ないからね。

 

 はっ! しまった! 話が逸れた! 大幅に!

 

 つまりチャイルドシートぽいベビーチェアをでかくした版が目の前にあるのだ。木製のさあ! もっと格好いいやつ作れるんじゃね!? 何でこれ!? と、心の中で喚いている間にメイプルがひょいっと私を抱えて椅子に乗せる。でもってベルトを留める。足の間のベルトもドレスをめくって留められる。……ここまでが毎日のこと。

 

 毎日なんだから慣れろってか? いやいやいやいや、慣れないよ! 息子娘を育ててた頃のこと考えると無理! その娘に毎日こんなことされると思ってみ!? どんな羞恥プレイだよ! と思うから!




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