チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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米への思い

 何でこんなに必死で植生を調べてるかって?

 米だよ!!

 

 木ももちろんだけど、知りたいのは稲の分布だよ!!!!! 日本人のソウルフードだよ!! 何なら日本米じゃなくてもいい! 粘りがなくてもリゾットとかピラフにすればいいし! 他にもいろんな料理に出来そうだし!

 

 肉以外には魚もあるのは判ってる。川魚だけども。あっ、海があるのは知ってる。アーサーに聞いたから。でも海、ここから遠いらしいんだよね。だから海魚は今は無理だと諦めてる。……吸引からの放出で川魚が海の魚に変わるとは思えないし。ていうか、出来ても私の知識だとまともなものになるとは思えない。悲しいかな、私にそこまでの知識はない。アラフィフ主婦のぱんぴーにそこまで求めてはいけないと思うの。

 

 野菜も私が知ってるものはある。ジャガイモ警察……もとい、ジャガイモはあるし、人参もある。トマトとかもある。ただし夏野菜は火系の魔法を利用してあったかいとこで育ててるけども。ちなみに火の魔法は燃やすだけでなく、保温も出来る。

 

 ……実は魔石という、ラノベとかでよく見る石がありましてね。水晶みたいな玉なんだけども。そこに魔法をちょっとこめると、火なら赤く、氷なら水色に、みたいに色が変わる。私も初めて見た時は、おおお! と歓声を上げた。これって魔法が溜められたりするんだよね!? 魔力とかだったかな? と、はしゃいだのだ。でもそんな私を不思議そうに見たメイプルに色々な幻想を砕かれた。

 

「魔石は何度も取り替えないといけないです。それに魔力は多少は溜められますが、使ったら魔力は消えますし、魔石からは魔力の補充は出来ません。効率が悪すぎます」

 

 ……メイプルは極振りではなく、もしかしてイマジンブ○ーカー使いなのかな? あ、あれは殺すだったか。どっちにしろ私のささやかな幻想は木っ端微塵に砕かれた。

 

 魔石という名の透明な石は乾電池と同じようなものなのだと思う。つまり魔力という名の電力が切れると充電するか、または取り替えるかしないといけないのだ。たとえば火の魔法などを魔石に入れると、燃えるじゃなく、保温くらいまでパワーが落ちるそうな。氷魔法だと冷やす程度になるらしい。

 

 火の魔石は農園の地面に埋めるという方法でよく使われている。地面をあっためることでトマトとかを作ってるという。逆に氷の魔石は冷蔵庫に入れたものを冷やすという形で使う。だからホレスの小屋にある冷凍庫は使われてなかったのだ。何かを凍らせるだけなら直で氷の魔法をぶっぱすればいいから。

 

 つまり魔石は生活の範囲に組み込まれる程度で、それで攻撃は出来ないという。しかも魔力が切れるのも早い。おまいは単四電池か! せめて単一電池なら!

 

 あっ、話が逸れた。失礼失礼。

 米だよ、米。うん、話が戻った。

 

 見たところ米らしい植物の記述はない。今のところ、だけど。これまでに私が読んだ本に書いてある場所の範囲がとても狭く、この世界全土の詳細は載ってない。書見台に載せた本を見ながら私はぽりぽりとこめかみをかいた。あっ、いかん。これやると髪型が崩れてメイプルが悲しい顔をするんだった。でも凝った編み込みとかは本当は止めて欲しい。だってちょっと触ると崩れるんだもん。

 

 今の私の髪って長いから編みやすいんだけど、解けやすいんだよね。多分これは髪質の問題だと思う。私の娘もよくやってたし、小さい頃は頼まれて髪をまとめたりしてたから判る。ちょっとくせっ毛か、ドライヤーとかヘアアイロンとかを使った髪の方が編み込みが維持しやすい。すとんとしたストレートだと難しいというかね。

 

 それと私の髪って前より少ないんだよね。あんましボリュームがないからアイロンとかを使わず整えるのはちょっと難しい気がする。転生前はかなり多くて、いつも髪をすいてもらわないといけなかったんだけどなあ。美容院にしょっちゅう行かないといけなくて、けっこうお金がかかって……いかん! しょっぱい気持ちになってきた!

 

 だから米だよ! 何度目か! 私!

 

「うーん……米がないなー……。やっぱり諦めるしかない?」

「お嬢様。少し休憩しませんか?」

 

 後ろから声をかけてきたのはメイプルだ。深々とため息を吐き、私は読んでいた本を閉じた。

 

「そうだね。休憩にしようかな」

 

 書庫では菓子をつまめない。でも別室がついている。そこでお茶するくらいなら大丈夫らしい。私はメイプルに連れられて別室に向かった。大きな机があって、そこでレベッカが書きものをしている。

 

「あら。リディア様。ご休憩ですか?」

「ええ。息抜きをしたいなと」

 

 ティールームほどではないが、ここの部屋の隅にお洒落な机と椅子が置かれ、お茶が出来るように整えられている。……私の椅子、ホントなんとかなんないかな。そんなことを思ってる間にメイプルが私を抱えて椅子に乗せてくれる。

 

 メイプルがいれてくれたお茶をゆっくり飲む。お茶は私も知ってる紅茶。出来れば茶菓子にさっきもらったクッキーをつまみたい。それに本当はメイプルやレベッカとお茶を一緒したいとこなんだけど、ここは我慢。メイプルを何度か誘ったんだけど、使用人だからダメ! と頑なに断られたからなあ。そういうとこは分けて考えないといけないんだろう。

 

 ていうかー。別に誰とお茶しても良くない? とも思う。転生前世界日本のうちは使用人とかいなかったから感覚的に判んない。もしかしたら大金持ちのお屋敷とかなら、そういう人たちがいるのかな。メイドさんとか。……想像してみるけど、やっぱ判らん。前は好きな時に好きなように茶を飲んでたし。友達だろうが子供だろうが、それこそ茶飲み友達という言い回しもあってだな。お茶をしばきながら楽しく話をするとかも普通にあった。

 

 なんだけども……。私は一人でお茶を啜って、メイプルとレベッカにちらりと視線をやった。せめて同じテーブルにつくくらいは……って、駄目なんだよね。

 

 はー、お嬢様って思ってた以上に面倒だなあ。




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