チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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食材カッターじゃないし

 書庫での調べ物を終えた私は、メイプルと厨房に向かった。……結局、今日も米の情報は見つからなかった。とほほほ。悲しい。そんな今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。アラフィフ主婦から転生した斉藤奈美恵です。ちなみに転生した後の私の名前はリディアです。ごきげんよう。

 

 調べ物をしてた時、そういえば私じゃないけど、米を探して三千里みたいなラノベもあったなぁ。と、何度か思った。ていうか、今も思っている。逆に最初から米が存在している作品もあった気がする。野菜とかの食材の名前や見た目が違うものもあれば、転生前世界日本のものと同じものもあった。そういうのは作者の気分とかで違うんだろうか。

 

 ……とか、転生前世界日本のラノベ(のウマ飯)に思いを馳せるくらいはしないとやってらんない!!

 

 キレキレな気持ちで私は目の前の金属で出来たバットを睨んだ。バットに置いてあるのは牛肉。私のためにわざわざ踏み台まで用意してくれているスティーブンとその一味……もとい、コック集団が緊張した面持ちで私を見ている。

 

「おりゃー!!」

 

 かけ声と共に肉を吸引し、適度にカットした肉を私は放出した。すると周りから拍手される。待て! 毎度思うんだけど、切るくらいなら自分たちでも出来るっしょ!? 何で私がわざわざ!?

 

「さすがはお嬢様です!」

「……メイプル。私は食材カッターじゃないんだけど。何で肉のカットくらい、みんな自力でやんないのかと小一時間」

「お嬢様の魔法の方が切れ味がすごいからです!」

 

 はー。とため息を吐いて私は周囲に集まってる人たちを見た。私がカットした肉を塩コショウとかで調味する者、鉄板に火を入れる者、かまどのでかい鍋をかき混ぜる者、と分かれていく。私が肉を切るのをわざわざ見物するのは何でだ!? もしかしてこれってマグロとかの解体ショーみたいになってる!? だったらホレスの風魔法を見れば十分じゃない!? バッファローをカットしてるんだから!

 

 何が辛いかって、お嬢様として振る舞わないといけないかと思ったら、こんな風に厨房でこき使われるってことがあると、落差が凄すぎて疲れるんだよ! ある時はお嬢様、ある時は乳しぼり人、またある時は厨房のカッター、その正体は!! みたいなセリフが、そのたびに頭の中で流れてくる。現実逃避くらいさせてくれ。

 

 確かに肉の切り口が潰れてない方が美味しいらしい、ということは知ってる。でも私は転生前から自分で確かめられるほど味覚が鋭くなかったから、本当かどうかは判んない。でも厨房を取り仕切ってるスティーブンが絶賛するくらいだから違うんだろう。

 

「次は!?」

「はい! こちらです、お嬢様!」

 

 おまい、お嬢様と言えばなんでもOKとか思ってないか、スティーブン。とか心の中で悪態を吐きながら、私は踏み台を降りた。メイプルがすかさず屈んで踏み台を持ち上げる。

 

 それにしてもというか、いつも思うんだけど、魔法の訓練にしても乳しぼりにしても厨房の手伝いにしても、何でドレスでやんなきゃなんないのか! こう、作業着までは言わんけども、もっと身軽というか動きやすい服にしてくんないかな!? 長いスカートってだけで動き辛いんだよ!

 

 そんなことを思いつつ、私は言われるままに調理を手伝った。ソーセージも作った。吸引と合成、放出コンボでだけどな! ソーセージは羊とかの腸を使うんだけども、塩抜きとか洗うとかしないとだし、肉の方も香辛料とか入れたり捏ねたりとかするんだよね。でもってそれを腸に詰める。

 

 そこまでを吸引、合成、放出で出来るのは確かに便利かもだけど! 私はカッターとか便利調理グッズとかになった覚えはないんだが!?

 

 でも。

 

「今日も素晴らしく美味しいお食事ですわね」

 

 夕食の時、スカーレットににこりと微笑まれる。アーサーが食べながら感涙してる。最早コレ、私に逃げ場なくない!?

 

 主婦ってほら。作ったご飯を褒められると、ちょっとやる気が上がるっていうか。飯作らない人もいるかもだけど、少なくとも私は息子娘が独り立ちするまで、ほぼ毎日作ってた。美味しいのひと言の威力って怖い。たまに言われるだけでも嬉しいのだ。

 

 それをいつも言われると思ってみ!? 嬉しくなっても仕方ないっしょ!? だから食卓につくと私は何も言えなくなる。まあ、ご飯も美味しいからいいんだけどさ。

 

 それに何でテーブルに木彫りの雪だるまが飾られているのか。もしかして私が可愛いとか言ったから、スカーレットが作らせたのだろうか。今日の訓練で言ったものが、夕食の食卓に飾られているとか、どんだけブラックなのかアシュフォード家。この調子だと火の鳥(フェニックス)が出てくる……訳ないか。

 

 アーサーとスカーレットは楽しそうに、そして美味しそうに食事している。それを見た私は転生前世界日本で食卓についた息子娘のことを思い出した。実際、二人とも息子娘と年が同じくらいだし。何だか「美味しい」という呪文にだまされてるような気がしなくもないけど、私は曖昧に笑って切り分けたソーセージを口に運んだ。




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右手の指がマジで痛いです
病院に行きますけども多分腱鞘炎だと思います
なので更新がちょっち止まるかもです

書くの楽しいのになあ……
とほほです
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