チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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壊滅的ダンス

 美味しいという言葉に気を良くしすぎて、今や調理器具兼、調味器具兼、搾乳ロボ兼、精製機……ん? 生成? いや、どっちにしろ何か作り機兼、と、とにかく色々兼ねてるアラフィフ主婦の転生者、斉藤奈美恵です。って、三年経とうが四年経とうが私は永遠のアラフィフ。

 

 有り体に言えば、色々と兼ねまくりつつ一年が過ぎて私は四歳になった。もちろん魔法の訓練もあるし、書庫での調べ物も続けている。睡眠時間は一応あるんだけども、幼児にしてはかなり短い。というか、フツーはもっと睡眠時間とるだろ!? 成長不良になったらどーしてくれる!

 

 ……とは思ったけど、別にそんなことはなかった。背も伸びてるし足のサイズもすくすくと大きく……どうなんだ、これ。私自身にすくすくとか。ま、いいか。食べる量とかも増えてるし、視野もちょっとずつ広くなってきてる。あ、視野って比喩ではなく医学的な話ね。

 

 それに疲れ果ててるから寝る前にぐずるとかはなく、いや、寝られなくてもぐずらない自信はあるけど、とにかくベッドに入ったら即爆睡。朝はカーテンを開けられると目が覚める。ただ、寝起きはすぐに動けないので、メイプルがいれてくれるお茶をずずーっと飲んでしばらくはぼーっとする。本当はコーヒーが欲しいけど、未だにコーヒー豆も挽いたコーヒーも、何ならインスタントコーヒーも見たことがない。少なくともアシュフォード家の敷地内にコーヒーはないのだろう。

 

 というか、この家というかアシュフォード家の食事は自給自足で成り立っている。一族だけでなく使用人の食事もだ。屋敷の周辺に農園があるって時点で何だかおかしい? と思ったけども、自給自足のためなのだと教わった。色んな種類の野菜、牛乳や乳製品、様々な肉、魚なども揃っている。

 

 ジャガイモは食事じゃなく絵に使ったりすることに私は最初は激怒したけど、必死で説明したら料理長のスティーブンがおっかなびっくりで調理してくれた。……皮が緑じゃないやつな。それ以来、ジャガイモは見るものではなく食うものという認識になったらしい。今ではジャガイモ料理が私たちの食卓にも出てくるし使用人も食べてるらしい。……使用人の場合、最初は毒味だったらしいが。

 

 四歳になった私は、訓練とか書庫での読書とか色々な機器になるとかの他にも課題が出た。よくあるお嬢様教育である。ぶっちゃけ、自動翻訳機があれば要らんのでは、と思ってたんだけど、さすがに身のこなしとかは無理だったらしい。魔法訓練とか以外での歩き方とかのレッスンは必須だそうだ。

 

 でもって中でも最悪なのが、絶望的にリズム感0な私に課せられた過酷な使命!

 それはダンスだ!

 学校のフォークダンスも盆踊りも壊滅的だった私にどうしろと!?

 

 幼児だから免除されるのだろうと思ってたのが甘かった。四歳の誕生日(この頃にはケーキもマトモになってた)、にっこりと笑ったスカーレットにチューター、つまりカテキョを紹介された。カテキョはアラフォーくらい? じゃないかな? の女性だった。髪を頭の上でくるっとまとめてる姿が、こう、ロッテンマ○ヤーさんみたいな。鼻眼鏡はかけてないけど。

 

 だがしかし! このロッ○ンマイヤーもどき、いや、名前はステラだっけか。もしかして流○一条ってか! だったら詠唱しろし!

 

 あ、しまった。話が逸れた。

 

 とにかくそのステラは、ほんっとにヤバい。ぶっ叩かれたりはしないし、暴言とかもないんだけど、とにかく厳しい。頭に本を乗せて歩くとか、漫画かアニメかと思うようなことを本当にやらされる。しかも落としたらやり直しだと、すぱっと言って、最初のところから再び歩かされる。これ、生まれ変わってなかったら腰とか傷めてたのでは、私。

 

 幼児だからバランスが取れるのか、それともこの身体が元々バランス感覚に優れているのか、私もステラの歩き方講座には何とかついていけた。ところがそれ以降がヤバい。

 

「リディア様。また足が逆です」

「あうあ!」

 

 ダンスの練習中にステラが注意を飛ばす。注意を食らった私はつまづいてよろけた。判ってる、判ってるんだけど、音楽を鳴らすのはやめて! 動くだけならいいけど、音楽に合わせると思ったら、どう動いて良いのか判らなくなるんだけど!? しかも生演奏だよ!? 部屋の中で音楽の生演奏とか、贅沢すぎてビビるわ! 弦楽器で音楽を奏でられて、私がつまづいたら音が止まり、動く時にまた弾いてくれるとか、ホントもう、罪悪感がパネエよ! 出でませMP3プレーヤー! あっ、今どきはサブスクY○uTubeみゅーじっくとかAmaz○nみゅーじっくとかか。あ? ここにはスマホとかタブレットとかパソコンないから使えません!? そうですか、そうですね!!

 

 魔法の訓練でもないのに息切れし始めた頃、私は休憩してもいいとステラに言われた。相手がいないのにダンスって。まあ、ステラが相手だと背が高すぎるし、メイプルとかでも無理だし……仕方ないよね。私は部屋の隅にふらふらと寄って椅子に腰掛けた。

 

 あ! とうとうぷーぷー椅子を卒業しました!

 四歳ばんざい!

 

 ていうか、木工やってる使用人に頼んで、丸太もらって椅子を作ってやったわ!! こんちくしょーーーー!! 何で私が私用の椅子をデザインして作らないといかんのか! しかも丸太吸引からの合成、放出で出来るなよ、椅子! 何て安易なんだ! まあ、クギも吸引したけども!

 

 幼児用椅子を作った時、使用人がびっくりしただけじゃなく、アーサーとスカーレットも驚いていた。だって嫌だったんだよ! ドレスめくられてベルト留めるとか! ほんっとに助けて! と思っても誰も助けてくんないから、自作しただけだよ! れっつ・DIY!!

 

 でもまあ、座りやすくなったしドレスもめくらなくて良くなった。ちょっと座面は高いけど小さい階段もつけたし、傍にいるメイプルに抱えてもらえればすぱっと座れる。ありがたい。

 

「ところでリディア様。計算などの課題は」

「あ、はい。メイプル、お願い」

 

 ステラに問われた私はメイプルを見た。お茶をいれていた手を止めたメイプルが、カバンから紙の束を出してステラに渡す。素早く目を通したステラがため息を吐く。

 

「リディア様はダンス以外はよくお出来になりますのに」

「それは私にはダンス力がないってことでよろしいか、鬼カテキョめ」

 

 メイプルがそっとティーカップを置いてくれる。私はそれを持ち上げながら遠い目になって答えた。ちらっと見るとステラの笑みがちょっちピキッてるのが見えた。自動翻訳機は最近は洗練されたのか、適度に皮肉も混ぜてくれるようになった。って、要らんこと覚えるな、自動翻訳機!

 

「はい。ダンスの選曲に問題はありません。つまりリディア様はどの曲でも、嗜みどころか全く踊れません」

「言葉に衣着せろ」

「あら。事実をお伝えした方がリディア様はご理解くださるのでしょう?」

 

 くっそ、見抜かれてる。ちっ、と舌打ちしたい気持ちになりつつ、私は知らん顔でお茶を啜った。この部屋では菓子を食べてもいいことになっているので、メイプルがエミリアの焼いてくれたマドレーヌを皿に並べてくれている。それをひとつつまんで半分に割って口に入れる。一口でいけないんだよね、この身体。まだ四歳児だし。以前、マドレーヌが小さくて、うっかり一口でいってしまって喉に詰まらせたこともある。気を付けねば。

 

 私は幼児なのにみんなが大人のように扱うのは、言葉がいくらでも通じるかららしい。つまり学習能力高めの子供くらいに思われているようだ。だから魔法の訓練も容赦がないし、ステラも手抜きをしてくんない。

 

 ……まあ、自分のせいだってのは薄々知ってたけどさ。




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台風が病院に行くのを邪魔する……
解せぬ
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