チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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世界はもっと広い?

 見事に失神してみんなに心配されてベッドからしばらく出してもらえなかった、転生者の元アラフィフ主婦の斉藤奈美恵です。……あれ? 元ってつける場所が変わると、今はアラフィフじゃない気がするくね? いや、今は幼女で四歳なんだけども! 断固としてアラフィフ転生者であることは主張したい!

 

 ベッドから出ようとすると、いけませんお嬢様と何度メイプルに止められたことか。いやもう元気なんだけど!? と、さんざっぱら言ったのに、その度に額に手をぴったり当てて熱を測るの止めてもらっていいですか!? とも言った。熱はないんだってば! こっそりベッドを抜け出そうとしても、すぐにメイプルに気付かれる。もしかして感知系のスキルがあるのか、メイプル。

 

 ベッドから出てもいいと言われた時は失神してから3日過ぎていた。OH...。どんだけ心配性なんだ、君ら。寝てる最中に美味しいお茶とかジュースとかお菓子とかを持って来てくれたのは嬉しいけども。部屋を覗くためか、入れ替わり立ち替わり違う人が来てたのはどういうことなのかと。

 

「やっと出れた……」

 

 書庫に向かって歩きながら私はぼそっと呟いた。すると少し後ろを歩くメイプルがくすりと笑う。笑いごとじゃないんだが?

 

「仕方ありませんよ。お嬢様をベッドから出さないように、と旦那様と奥様から厳命されましたので」

 

 そうなのだ。スカーレットももちろんだけど、私が失神したと知ったアーサーが心配しまくり、私を見舞いに来ては絶対にベッドから出るなと念押しされたのだ。いやまあ、家に戻ってすぐに自分の娘がぶっ倒れたという話を聞いたら、確かに私だってビビると思うよ。転生前だったら娘が嫌がっても病院に連れてくと思うよ。

 

 でも失神した理由が米に対する絶望なんだよ!? それを説明するのも難しいし、食べ物のせいで倒れたとか言ったら私が食いしん坊みたいじゃん! 否定はしないけども!

 

「それに魔法の訓練も中止になったし」

「お嬢様の体調を考えると当然かと……。魔力も完全には戻っていないのですよね?」

 

 私が愚痴るとメイプルがすかさず切り返す。判ってるけども!

 

 メイプルが言ったとおり、私の魔力はかなり減ったままだ。前は意識するとキラキラの光(魔力)が眩しいくらい見えたのに、戦った後は水道の蛇口からちょろちょろと水が漏れてる感じになっていた。修理とか治癒とかしたからか、魔力はバトル後より余計に減ったらしい。それでぶっ倒れたのだろうという話だった。

 

 ベッドに突っ込まれてた間にちょっとずつ魔力は回復したけども、今もまだMAXになってない感がある。……あれだ。MPバーの減りがなかなか戻らない感じ。ここだとHPもか? 魔法を使うとどっちも同時に減るし。一歳半の私へのアーサーの魔法特訓では、酷い息切れがして体力をめちゃ奪われてた。今は同じことをされても、そこまでにはならんと思うが。

 

 考えてみると四歳になった辺りで、魔法を使ってもしんどいどころか、何も感じなくなった気がする。それだけ自然になってたということだ。吸引とか放出とかでは魔力を使わないと錯覚するくらいに。

 

 多分だけど訓練のおかげか、もしかしたら四歳になったからか、理由ははっきりしないけど私のMPバーはかなり長くなったんじゃないかと思う。だから魔力はたくさん使えるけど、その分、満タンになるまで時間がかかるんだろう。体力は戻ってるんだけどね。そう考えるとHPはやっぱり別物なのか?

 

 回復水は残念ながらあんまし効果がなかった。くっ、我慢して飲んだのに! 効かないってどういうこと!? 辛(から)くて口の中が痛い思いをした私の努力を返せ!

 

 書庫に着くとレベッカが笑顔で迎えてくれる。レベッカもバトルでかなりの怪我をしてた。若い子、しかも女の子の顔に傷をつけるとか、クソ天使マジ許すまじ! もちろんレベッカは私が治療した。当たり前である。

 

「ごきげんよう、レベッカ」

「ようこそおいでくださいました。リディア様」

 

 挨拶するとレベッカも丁寧な挨拶を返してくれる。……なんかなー。天使バトルが終わってから、使用人の好感度が一気にあがった気がするんだよね。元々、好感度は高かったんだけど、更にアップした気がする。

 

 もしかしてアレか。恋愛攻略ゲームの好感度バーか数値が伸びてる感じか。あの手のゲームは得意じゃないんだけど……。何度かやってみたんだけども、無条件でモテるとかの意味がわかんないのでやめた。たまたまプレイしたゲームが悪かったのかもだけども。

 

 一応、触ったことがあるので、ゲームとかに出てくる好感度という言葉の意味は判る。モテ期とかも体験したことないからなあ。……あ? 別に問題なかったし! モテ期がなくても結婚したし! そこは大丈夫だったし!

 

 今は現実逃避をしている場合じゃない。レベッカに出してもらった本をメイプルが受け取って書見台に置いてくれる。私は専用椅子に座って本を読み始めた。

 

 植生の前に地理だ! それが判れば、もしかしたら米も夢ではないかも知れぬ! と一縷の希望を持って本を開いた瞬間、私は固まった。目に入ったのはでかい大陸が描かれた地図だ。もしかして世界地図? いや、それより気になることがある。

 

「あの……メイプル……。大陸とこの島はどれだけ離れているのですか?」

「えーと。転移魔法で移動しているので距離は判りません!」

 

 にっこりと笑ったメイプルが断言する。ちょっ!

 

 名前は教えてもらったから、私にも島の位置は判る! ご丁寧に赤い線で丸してあるし! でもこの離れ方はおかしい!

 

「何で判んないのにここに就職した!」

「え? アシュフォード家で働くのは名誉なことなので」

「は!?」

「え? 王都でも有名なのですけども。うちの田舎でも有名な話です。あ! 私が田舎から出る時に、親族一同が喜んでくれました! ご馳走をたくさん食べました!」

「喜んでくれたとか呑気に言うんじゃない! というか、ウマ飯は羨ましすぎる!」

 

 この家を含む島はでかい大陸からめちゃくちゃ離れた北にあった。ずっと涼しいのはそういう事情だったのだ。暑くないのにサトウキビが採れたりするのは、土に埋めた魔石のおかげというのは知ってる。普通はハウスとかがないとなのかもだけども、魔石をいくつか組み合わせることで範囲指定みたいのが出来るらしい。

 

 ……だったら米くらいあってもいいじゃんか!

 

 でも北部の島でこの気温ということは、南にある大陸はここよりも暑いのだろうか。それとも大陸は穏やかな気候で、この島は海流とかで多少はあったかくなって、エアコンなしでも人が普通に暮らせるのか。転生前世界のイギリスとかはそうだもんね。確かあれだ。メキシコからの海流で冬も過ごせるくらい暖かくなってた……はず! ゲームの知識ばんざい!

 

 そういうことがあれば、ここが極寒じゃないのも理解出来る。それともこれは世界全土の地図じゃないのかも知れない。でかい大陸はたったひとつで、私が知ってる転生前世界のものとは違った。とは言っても形が違うだけのような気がするが。緯度経度という話になると私にはさっぱりだ。赤道の辺りが暑くて、離れて行くほどに気温が下がるくらいのことしか判らない。あ、でも砂漠とかは違う? うーむ、そもそもこの世界に砂漠はあるのか? ダンジョン内に砂漠があるラノベ原作アニメは観たことがあるな、そいえば。

 

 大陸と書いてあるところは、確かに大きい陸に見える。けど地図は左右や上下が途中で切れているのではなかろうか。大陸がひとつしかないというのも不自然な気がする。いやまあ、そういう世界なのかも知れんけども。

 

 私は地図を見ながらしばらくうんうんと唸った。




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