チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
剣術稽古と言われても、と最初は思っていた。でもまあ、予想は出来た。ラノベとかアニメとかでは、剣で戦ったりしているし。きっと似たようなことをするのだろうと思っていた。
……何で得物を自作せねばならんのかと!
鍛冶全般の仕事をになってるのはトーマスという、息子と同じくらいの年の男の子だった。機関車かな? トーマスといえば子供が小さい頃、プラ○ールの線路を部屋中に敷き詰めて遊んでいた。息子と娘はそれぞれお気に入りの機関車があり、それが走るのを応援したりもしていた。でも問題は片付けだった。自分たちで遊んだものは自分たちで片付けなさい、と私は言っていた。線路や信号機などを大量に片付けるのは大変だったようだ。手が小さく一度にたくさんの線路はつかめない。そもそも子供だからそれほど根気は続かない。それでも次に遊ぶのは駄目と言われるのが嫌で、二人は頑張って片付けていたと思う。
はっ、しまった。話が逸れた。
トーマスが職人技でアレコレ作ったり修理したりしていると聞いて、私はびっくりした。え!? その年で!? すでに熟練職人というのは一体どういう!? 才能と言われるとそれまでだけども!
「あの、トーマスはいつから鍛冶職人に?」
「え? あ、オレですか? 子供の頃からじっちゃんの手伝いしてて」
そんな風に言ったトーマスが金属板をひょいと取り上げて台に乗せ、そこに小さな火の玉を落とす。おっ、おお……。トーマスはアーサーと同じく火属性魔法の使い手であったか。イメージしていたのと違う。私は物珍しくてその場にしゃがんでじーっとトーマスのすることを見てた。
「お嬢様は本当に使用人の作業がお好きなのですね」
私のちょっと後ろにしゃがんだメイプルが言う。ふっ、と笑って私はメイプルを見た。
「だってこんなの初めてだし? イメージと違うし? それにみんな若いのに頑張ってるし? 見たいじゃん」
「わかりますけども。私も同じですから」
顔を見合わせて、互いにくすりと笑う。そんな私たちを余所に、トーマスはひたすら仕事に打ち込んでいる。厨房も書庫も農園も、とにかくみんなよく働く。もちろん侍女のメイプルもだ。時々、変に間が抜けているとは思うけど、文句ひとつ言わず私についてきてくれる。……まあ、案内してくんないと、何がどこにあるか判らないけども。
火を落とされた金属板をトーマスがかなづちで叩く。何度か叩くと金属板はぐにゃりと曲がって形を変えた。
「おおー! 斧!? 凄い!」
トーマスが金属の……何だっけ。挟むやつ。先が丸くなってて、金属を挟むとこがぐにっと曲がってて、ハサミみたいに尖ってないやつ。何て名前だっけか。……くっ、出でよ! 検索機能! ていうか、Wikiped○aでもいい! あっ、W○kipediaって色んな人が編集するから、必ずしも正解が出てくるわけじゃないんだよね。でもとっかかりとしては悪くないので、いつも使ってた。
じゃなく!
「木を切ってる人たちに頼まれたんですよ。それよりお嬢様。メイプル。足が痛いでしょ? 椅子を出しますよ」
にこって笑ったトーマスが椅子から腰を上げ、椅子を持って来てくれる。片方は背の低い椅子だった。……あれ? 私、ここに来たことないのに何で私用のがあるんだろ。
「ねえ。これって私用の椅子?」
一応、勘違いじゃないことを確かめるために訊いてみる。するとトーマスがええ、と笑った。
「みんなの所にもお嬢様が座れる椅子は用意してありますよ。あちこち探検してるって聞いてるしむ
「お、おおう。バレてる」
私がちょっと引き気味に言うと、トーマスとメイプルが笑う。むう。物珍しいからついつい色んなとこに行きたくなるんだよ。特に食関係。……でも私は食いしん坊ではないと言いたい。異世界に急に飛ばされてみ? 転生前と色々なことが違うから、気になるんだよ。