チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

44 / 45
得物は自分で用意する。

 剣術稽古と言われても、と最初は思っていた。でもまあ、予想は出来た。ラノベとかアニメとかでは、剣で戦ったりしているし。きっと似たようなことをするのだろうと思っていた。

 

 ……何で得物を自作せねばならんのかと!

 

 鍛冶全般の仕事をになってるのはトーマスという、息子と同じくらいの年の男の子だった。機関車かな? トーマスといえば子供が小さい頃、プラ○ールの線路を部屋中に敷き詰めて遊んでいた。息子と娘はそれぞれお気に入りの機関車があり、それが走るのを応援したりもしていた。でも問題は片付けだった。自分たちで遊んだものは自分たちで片付けなさい、と私は言っていた。線路や信号機などを大量に片付けるのは大変だったようだ。手が小さく一度にたくさんの線路はつかめない。そもそも子供だからそれほど根気は続かない。それでも次に遊ぶのは駄目と言われるのが嫌で、二人は頑張って片付けていたと思う。

 

 はっ、しまった。話が逸れた。

 

 トーマスが職人技でアレコレ作ったり修理したりしていると聞いて、私はびっくりした。え!? その年で!? すでに熟練職人というのは一体どういう!? 才能と言われるとそれまでだけども!

 

「あの、トーマスはいつから鍛冶職人に?」

「え? あ、オレですか? 子供の頃からじっちゃんの手伝いしてて」

 

 そんな風に言ったトーマスが金属板をひょいと取り上げて台に乗せ、そこに小さな火の玉を落とす。おっ、おお……。トーマスはアーサーと同じく火属性魔法の使い手であったか。イメージしていたのと違う。私は物珍しくてその場にしゃがんでじーっとトーマスのすることを見てた。

 

「お嬢様は本当に使用人の作業がお好きなのですね」

 

 私のちょっと後ろにしゃがんだメイプルが言う。ふっ、と笑って私はメイプルを見た。

 

「だってこんなの初めてだし? イメージと違うし? それにみんな若いのに頑張ってるし? 見たいじゃん」

「わかりますけども。私も同じですから」

 

 顔を見合わせて、互いにくすりと笑う。そんな私たちを余所に、トーマスはひたすら仕事に打ち込んでいる。厨房も書庫も農園も、とにかくみんなよく働く。もちろん侍女のメイプルもだ。時々、変に間が抜けているとは思うけど、文句ひとつ言わず私についてきてくれる。……まあ、案内してくんないと、何がどこにあるか判らないけども。

 

 火を落とされた金属板をトーマスがかなづちで叩く。何度か叩くと金属板はぐにゃりと曲がって形を変えた。

 

「おおー! 斧!? 凄い!」

 

 トーマスが金属の……何だっけ。挟むやつ。先が丸くなってて、金属を挟むとこがぐにっと曲がってて、ハサミみたいに尖ってないやつ。何て名前だっけか。……くっ、出でよ! 検索機能! ていうか、Wikiped○aでもいい! あっ、W○kipediaって色んな人が編集するから、必ずしも正解が出てくるわけじゃないんだよね。でもとっかかりとしては悪くないので、いつも使ってた。

 

 じゃなく!

 

「木を切ってる人たちに頼まれたんですよ。それよりお嬢様。メイプル。足が痛いでしょ? 椅子を出しますよ」

 

 にこって笑ったトーマスが椅子から腰を上げ、椅子を持って来てくれる。片方は背の低い椅子だった。……あれ? 私、ここに来たことないのに何で私用のがあるんだろ。

 

「ねえ。これって私用の椅子?」

 

 一応、勘違いじゃないことを確かめるために訊いてみる。するとトーマスがええ、と笑った。

 

「みんなの所にもお嬢様が座れる椅子は用意してありますよ。あちこち探検してるって聞いてるしむ

「お、おおう。バレてる」

 

 私がちょっと引き気味に言うと、トーマスとメイプルが笑う。むう。物珍しいからついつい色んなとこに行きたくなるんだよ。特に食関係。……でも私は食いしん坊ではないと言いたい。異世界に急に飛ばされてみ? 転生前と色々なことが違うから、気になるんだよ。




https://syosetu.org/novel/413002/
こちらから作品を登録してもらえると嬉しいです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。