チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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まさかの斧とノコギリ

 ん? 斧?

 

「ねえ、トーマス。ノコギリは作んないの? あれがあれば木も切りやすくない?」

「は? のこぎり、ですか? ええっと、それはどういう……」

 

 ……しまった。質問された。ということは、ここにはノコギリがないということだ。私は紙をもらってそこに形を書いてみた。興味津々の顔でトーマスとメイプルが紙を覗き込む。

 

「えー! 平らの斧ですか? ぎざぎざです!」

 

 目を輝かせてはしゃいだのはメイプルだ。うん、ギザギザだよ。私が知ってるのこぎりは。電動とかのもあった気がする。私だとアニメとかに出てくるノコギリしか判んないんだよね。両サイドに持ち手があるのも見たような?

 

「うーん。この形の方が斧より早く切れるかも? ただ、柔軟性と強度が難しいかも知れません。オレもこういうのは作ったことがないから練習がいりますね」

「なるほど……」

 

 私は斧を見つめ、ついでにトーマスの背後にある箱に入った鉱石を見た。転生前世界にあった天然石のブレスレットとかと違い、鉱石はごつごつしている。

 

 もしかして吸引と合成でどーにか出来るかも!?

 

「ねえ、トーマス。私が試していい?」

「あっ。そうだった。お嬢様はいろいろ作れるんですよね」

 

 いや。色々作るって言ってもね。料理くらいだよ、今までやったのって。あ、こないだ屋敷の壁とかを修復したか。たくさん目撃者がいたような?

 

 私は椅子を降りて鉱石のとこに駆け寄った。とりあえず、鉱石を吸引してノコギリをイメージする。詳しく知ってるわけじゃないから、イメージはふわっとしてる。こんな感じかな、と思って合成してから、私はそれを放出した。カタンと音を立ててノコギリが床に落ちる。

 

「すごいです! お嬢様!」

「お、おお。これがのこぎり、ですか」

 

 二人がそれぞれ言った後が大変だった。トーマスが確認したいと言って、やれ切れ味とか大きさとか形とかを変えて何度も合成する羽目になった。最後に手頃な木を持った木こりが呼ばれて、実際に切って何度も試すとかまでやった。丁度いいものをトーマスが求めてくるので、私はそのたびに鉱石を吸引して作りまくった。試すうちに別の鉱石も使って欲しい、とか言われて私は必死で吸引・合成・放出をした。

 

 だって、ノコギリに適した鉱石とか判んないよ! 強さとか色々言われても! 後で気付いたけどさ! 魔法でどーにかならんのか! と、訊いたら風魔法は繊細な調整が難しいので、木を切るのは斧でやってるんだって。いやいやいや! 斧を持つのはバトルの訓練兼ねてるとか言われてもね!? すぐに理解は出来ないよ!

 

 って言ったら、トーマスたちが斧でのバトル演習を見せてくれた。OH...。なかなかのものでは。アニメとかゲームで見た感じかな。でも目で追えないとかはない。バトルシーンが速すぎるアニメもあったんだよね。私的にはせめてFate/Zer○のラストバトルくらいのスピードにして欲しい。動体視力が落ちてたから、呪術○戦は見えなかったんだよ! いや、もしかしたら動体視力がそこそこあっても、見えないかったかもしんない。

 

 って、ちっがーう! そうじゃない!

 

 私のばかばかばか! 気軽にのこぎりとか言うんじゃなかった。まさか合成に1日かかるとは思わなかったよ! 私の剣は!? また明日、自分で作れし、なの!? 冗談!

 

「……メイプル」

「はい」

「ノコギリが大事なのは判ったけどさ。私の今日1日は何だったのかと」

「え? お嬢様は素晴らしい働きをされたと思います!」

 

 そうじゃねー!!! と、思ったので私は叫んだ。

 

「そうじゃねーし!!! 剣を作りに行ったはずでは!?」

「まあまあ。そんなに急がなくてもいいんじゃないですか? 今日の夕食もきっと美味しいですよ」

 

 ……それはそうなのだ。昼食はみんなで鍛冶場で食べた。美味しかったけど、サンドイッチとドリンクという軽食だった。だから夕暮れの中で私の腹は鳴りっぱなしだった。はー、とため息をついてメイプルを見る。相変わらず呑気に笑って馬車の御者台に座っている。

 

 働いた後の飯は美味い、とメイプルが呑気に言うことには同意だけど! 私って一応、ここのお嬢様だよね!? お嬢扱いとノコギリ作成労働とかの落差が激しくて、時々、お嬢様だってこと忘れちゃうんだよ!




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