チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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閑話 メイプル日記 1

 メイプル、メイプルと慕ってくださるお嬢様は爆裂可愛いと思っている、メイプルです。ごきげんよう。

 

 私はお嬢様がお産まれになる前から、ご主人様と奥様から護衛任務を仰せつかりました。身の回りのお世話も含め、護衛という大役を頂いたことに感極まってしまったことを今もはっきりと覚えています。特に護衛を任されるということは、アシュフォード家の方々が私のことをそれだけ信頼して下さっているという証です。

 

 お嬢様は産まれたばかりの時からとてもお可愛らしく、私は隙を見つけてはニヤニヤ……違いますね。微笑みながらこっそりとお嬢様の柔らかいほっぺをぷにぷにしておりました。もちろん指先で傷つけないよう、爪を切った後、丁寧に磨き上げてからです。いつもの手袋をしていれば良かったのですが、布越しでは感触が判りづらいので寂しいのです。

 

 いま思えば離乳食を嫌がっておいでだったのも、お嬢様がグルメでいらしたからかも知れません。お嬢様が離乳食をなかなか召し上がらなかったことに、厨房シェフのスティーブンさんも困っていました。ですが、スティーブンさんの感情など私にとっては些細なことです。お嬢様が可愛ければそれで良いのです。

 

 日々、目に見えて成長されるお嬢様のお姿を見守るのは私の喜びです。お嬢様は頑張って隠していらっしゃるのでょう。ですけれど私の目にはお嬢様が困ってらっしゃったり、我慢していらっしゃったりしていることはすぐに判ります。一歳のお誕生日のお祝いの時も、微妙なお顔でケーキを召し上がっておられました。

 

 あの時も私は不思議だったのです。田舎に残してきた弟妹はケーキを嫌がるということとありませんでした。たっぷりのクリームを口の周りにつけて喜んでいた姿ははっきりと思い出せます。

 

 ですが、お嬢様はそうではなかった。もしかしてケーキがお嫌なのだろうか。そう思ってスティーブンさんに相談したこともあります。けれど私の納得する返答がなかったので、仕方なく食材を管理しているエミリアさんにも相談しました。エミリアさんは倉庫にある食材を見た後、私を見つめて困ったように微笑みました。

 

 多分、エミリアさんは判っていたのです。アシュフォードの方々にお召し上がり頂く料理が、私たちがいつも口にしている料理とはかけ離れていたことを。違うことは私も存じておりましたが、材料にあれほどの違いがあり、牛の肉がそれほど喜ばれていないということを後で知りました。おかしいですね。アシュフォードに仕える者たちへの教育の一環で教えて頂いたのに。

 

 ですが私は厨房担当ではありません。お嬢様の侍女であり、護衛です。やはり護衛任務を主にする私への教育が足りなかったのでしょう。お嬢様を心配させてはいけません。私はいつかこっそりと勉強をし直そうと決意しました。

 

***

 

 お嬢様の魔法訓練が始まりました。日時は事前にお知らせ頂いておりましたので、その日が来るのを待ちわびていました。お嬢様は訓練が始まる前から、奥様のご病気を取り払ってポイしてくださったりしていたのです。廊下などに出現する悪霊も、最初は驚いていらっしゃいましたが、すぐにお一人で排除されるようになりました。ご主人様や奥様から指導するようにとご命令を頂いておりましたが、私がお嬢様にご指導など畏れ多い。と、思っていましたから、お嬢様がご自身で悪霊を退けられた時には大変嬉しゅうございました。

 

 それにお嬢様はとても賢くていらっしゃいます。私はお嬢様といつも一緒におりますので、そのことを特に感じるのかも知れません。大人とも難なくお話されることが判った時は、使用人全員で万歳三唱しました。ご主人様と奥様もお二人でとても喜んでいらっしゃいました。具体的には小躍りしてらっしゃいました。判ります。私も出来れば踊りたかった。ですが私はあくまでも侍女のひとりです。仕方ないので我慢しました。

 

 お嬢様が大人と難なく会話が出来るということが判った後、奥様は子供扱いしなくても良いと仰いました。私だけでなく使用人全員にです。確かにお嬢様はお子様にするように接すると、とても困って……というより微妙な顔をされていました。お嬢様のそういったお顔を見たくなかった私は、すぐにそれを実践しました。

 

 魔法の訓練でもお嬢様は最初から素晴らしい成果を上げておられました。吸引や排出と仰っていた特殊な魔法を駆使していらしたのです。まるでそれらの魔法を最初から習熟されているかのような様に私は思わず声を上げて応援したくなりました。ご主人様や奥様の前でしたのでさすがに控えましたが。

 

 ただひとつ、懸念があるとすれば……お嬢様の魔力の感じ方が他の者とは少し違ったということでしょうか。ご主人様と奥様が目に見える形でお嬢様にご教示されていました。けれどお嬢様はあまり違いが判らない、というお顔をされておられました。私と同じく不安に思われたのでしょう。

 

 私は奥様からご命令を請けました。

 

「出来るだけ目を離さないでやって欲しいのです。あなたなら出来ますわよね?」

「かしこまりました」

 

 奥様からはお嬢様が魔法を使う時は決して離れないようともに、とも命じられました。当然でしょう。私も心配です。ですがお嬢様はそのことを気に留めていらっしゃらなかった。今もです。きっと他の人間との違いを大したことだと考えていらっしゃらないのです。

 

 魔力の感じ方は誰でも同じです。魔力の量や強さの違いはありますが、感じ方だけは変わりません。意識すると体内を流れる魔力が感じられます。ですがお嬢様の仰った光は感じません。ただ、巡るものとして捉えることしか出来ないのです。

 

 不安はありましたが、私はお嬢様には何も言わずに仕え続けました。

 

***

 

 二歳の誕生日を迎えられてすぐの頃でしょうか。初めてご案内した書庫で、誰に教えられるでもなく本をお読みになったお嬢様には驚きしかありませんでした。私たちアシュフォード家で雇われる者は、読み書きの修得を終えていることが雇用条件に含まれています。ですがお嬢様は誰にも習っていらっしゃらない。やはり子供に接する態度などは必要がないことを、私は改めて思い知らされました。

 

 ……それにしても、ち、かけい、というのは何だったのでしょうか。魔法の一種かも知れません。もしも私が不勉強ということになればお嬢様に大変申し訳ないので調べてみましたが、未だに判りません。

 

 その頃からでしょうか。少しずつお嬢様の口調がお変わりになった気がいたします。それまでは時折、私には判らないお言葉を口にされていたのですが、そういったことがなくなったのです。やはりお嬢様は優秀。

 

 ですが……

 

 おかしいです! お嬢様のお言葉はとても流暢になっているのに! 私の方がちゃんと喋れなくなっていきます! 何でしょう、これ!

 

 と、思ったので慌てて奥様に報告しました。

 

「意味は伝わりますから、まあ、いいでしょう。リディアの護衛任務に問題がなければ」

「は、はい」

 

 アシュフォード家の使用人、しかもお嬢様の護衛としてはどうなのかと私は思います。でも奥様は許してくれました。でも私の心の中は嵐がビュービューです。これはまずいと自分で判るくらい酷いと思います。

 

 ですけどお嬢様が楽しそうにしているところをずっと見られるのは幸せなので、私も気にしないことにしました。お嬢様は前向きで色んなことに挑戦してます。そういうお嬢様についていられるのなら、多少のことは問題ない、と割り切る方が私も楽でした。

 

 そしてホレス爺のところでお嬢様はやらかしました。冷凍庫に首を突っ込んだかと思うと、突然、氷の刃を放出したのです。何で!? と思わず叫びそうになりました。お嬢様に刺さる前に守れたので良いけど本当に焦りました。ホレス爺も同じだったと思います。

 

 そこでお嬢様に不思議なことを言いました。使用人が全員、戦えるのかと訊かれたんです。何を当然なことを、と思いましたがお嬢様は知らなかったみたいです。そう思って私が説明すると、お嬢様は目に見えて引きつってました。

 

 あれ? もしかして、まずいことを言ったんでしょうか、私。




https://syosetu.org/novel/413002/
こちらから作品を登録してもらえると嬉しいです

うわ!
運営様から連絡が!!(汗)

転生と神様転生って必須タグだったんですね……
失礼しました
修正してくださったみたいです
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