チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

52 / 64
イネ科が現れた!

 その日も書庫で本を読んでいた私はため息を吐いた。

 

 書見台に置いた本のページをぱらっとめくる。私がいま読んでいるというか、見ているのは図鑑だ。図鑑も大量にあるから読み飽きるってことはない。ただし、島外の植物についてはほとんど書かれてないけど。私はこれまでのことを思い出してイラッとした。島外の知識は島外で得る、みたいなしきたりでもあるんかい! 調べても調べても目的のものが出てこないんだが!?

 

 せめて一粒だけでも! 米の種があれば!

 えーと、何ていうんだろ。米の種。わかんないな。まあいいや! 米タネで!

 

 そんなことを思いながらページをめくったところで、私は手を止めた。ねこじゃらしのような絵があったのだ。……そういえば、ねこじゃらしラーメンを作るアニメがあった。でも味はどうとか言ってたし、そもそも私が食べたいのはラーメンじゃなくて米! 小麦があるからラーメンは出来ると思うし! ……たぶん。

 

 でもねこじゃらしって(あわ)のご先祖様って言ってた気がする。唆るぜこれは、の子が。粟って米に混ぜて炊くこともあるよね。確か五穀米とかいうやつの中に入ってた。私も五穀米はたまに米に混ぜて炊いてた。米が嫌なんじゃなくて、単にたまには味が違うのを食べたかったから。

 

 五穀米は息子娘にはあんまりうけなかったなぁ。昔からあったみたいだけど、転生前世界日本の近年で流行したのって、息子娘が産まれてからしばらく経ってからだった気がする。それに成長期の二人には「何か違う」だったのかも知れない。主食は米!! という子たちだったし。

 

 いや、そうじゃない。話が逸れた。

 

「ねえ、レベッカ。このねこじゃらしはどこに生えてるの?」

「この辺りは除草されていますのでありませんが、農園の向こうには生えているかと」

 

 近くにいるレベッカが答えてくれる。……図鑑には違う名前が書かれてたんだけど、ねこじゃらしで通じたようだ。自動翻訳機、ホントに便利だな。

 

「粟とかはある?」

「あわ、ですか?」

 

 駄目だ、これは! 今までの経験から私はすぐに欲しい答えをもらうという努力を投げた。レベッカの口調が、知らないものを訊くときのもの、とすぐに判ったからだ。

 

 五歳になっても時々、こういうことがある。メイプルもだけど、他の使用人も知らない物の名前とかを聞くとこんな感じになる。シュークリームもそうだった。結局、私が吸引放出したものを分解とか合成とかしたりして、再現出来たらしいけども。ちなみにその菓子の名前は私が言ったシュークリームになった。

 

 確かシューってキャベツとかの意味だったと思う。こっちにもキャベツがあるんだけど、キャベツって名前なんだよなあ……。シュークリームってそもそもフランス語か何かが元になってたと思う。だから転生前世界日本のでもキャベツクリームとか言わなかったんじゃなかろうか。……想像するとキャベツにカスタードクリームが入ってるって、かなりちょっとアレだな……。

 

 そういえばゲームでシュークリームみたいな菓子を作ったなあ。ププランっていうんだけど。それを積み上げたのをププランツリーって言ってた。あれ、作るの面倒だったんだよね。暇な時にたまに作ってたけど。植物油とかは自力で採集が出来たし、ついでに調達を使うと木の実とか採れたからゲットするのは楽だった。でも初期はジャムが作れなくて買うしかなかった気がする。嗜好品だから買えるところでばんばん紙撃ってたっけ。あ、紙って買う数が戻るやつ。

 

 って、話が逸れた! いかん。アラ還になったからか……違う! 私は永遠のアラフィフ!

 ちなみに私はアラ還の人に何か言いたいことがあるとかではない。単に年齢がごにょごにょなのである。

 

 はー、とため息を吐いて私は図鑑に目を戻した。

 

 ん!? ちょっと待て! ねこじゃらしのトコにイネ科って書いてあるくね!? これ! は!? いつの間にか文字が勝手に浮かび上がってる!? いつの間に!? イネ科ならどうにかなるのでは!?

 

 待って待って! 私は焦りながら図鑑をめくり直した。すると今まで見たことのない○○科、みたいな文字が勝手に足されてた。おい! 雲のイケメン! 何してくれとんじゃ! 最初から出せよ! それとも何か!? 私の米道への情熱が過ぎて、仕方なく出したってか!?

 

「はーーー!?!?!?」

 

 試しにめくったとこに小麦とか大麦とかの絵が描かれ……そこにもイネ科って書いてあった。私の叫びに驚いたのか、レベッカが慌てて寄ってくる。メイプルも後ろから図鑑を覗き込んだ。

 

「どうしたんですか? お嬢様」

「何かございましたか!?」

 

 二人に問われて私は図鑑に書かれた説明のとこを指で押さえた。

 

「こっ、これ! イネ科って書いてあるんだけど!?」

「いねか、ですか?」

「ええっ!? そんな記述は見たことが……いねか……確かにございますね」

 

 呑気なメイプルとは対照的にレベッカがびっくりしたように言う。そうか。レベッカはここに詰めてるから色々知ってるんだったわ。忘れてた。

 

 科とか目とかの分類に詳しくない私でもイネ科という言葉だけは判る。もっと詳しかったらねこじゃらしとかを見たら一発で判ったかも知れない。その前に小麦とか大麦で判っただろう。

 

 それより、稲! 米!

 

「他のページにはそういった記述はございませんね……」

 

 レベッカが失礼、と私に断りを入れてページをめくり、そう呟く。その間も私は米に思いを馳せていた。これは急いで農園に向かわねば!




https://syosetu.org/novel/413002/
こちらから作品を登録してもらえると嬉しいです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。