チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
島の外に出る許可をもらえた私はその日をワクワクしながら待った。……すぐに出かけられなかったのは、アーサーとスカーレットが私の剣術の上達ぶりを確認しなければならなかったからだ。スカーレットによる確認はすぐに終わったが、アーサーは出かけていてなかなか戻らなかった。その間、私はワクワクしつつもイライラしていた。
だって、大陸だよ!? 初めてだよ!? そりゃ、ワクワクもするよ!
けど出かける前日に遠足を待つ子供みたいなことにならないよう、頑張ってワクワクを抑えていた。下手にワクワクしまくると、剣術チェックを通らないからだ。それを思い知ったのは、スカーレットと剣術の上達ぶりの確認のために打ち合った時だ。ワクワクしたままで剣を揮った私はボロボロになった。
それにしてもスカーレットは何でドレスであんな動きが出来るんですかね? メイプルもすごいと思ったし、今もギリギリで一本とれるかどうかだ。でもスカーレットは桁違いに強い。私の剣が一切、届かない。それどころか下手すると滅多打ちになる、と判るほどに剣の動きが鋭い。もちろん寸止めしてくれるけど! でないと死んでるよ!? 私! 木剣でも! 打ち据えられて倒れる未来しか見えない!
しかも手加減してるらしい。……手加減とは?
そんな感じで待ってたらアーサーが戻ってきた。王家刺殺……もとい、視察ぽいのが終わったらしい。名目は報告ってなってるらしいけど。実際には王族や貴族の情報を収集しているんだから、視察でもいいと思われ。
そして私はアーサーにもボロクソにされた。アーサーってどっちかっていうとスカーレットより弱いのかな? と思ってた私が馬鹿でした。普段から筋肉筋肉いうだけあって、でかい木剣を片手でぶん回すんだもんなあ……。あ、普段使いのものに似てないと使いづらいから、木剣は大きく重くしたらしい。その風切り音を耳許で聞くだけで震え上がるくらいに怖い! 辛うじて避けたけど、すぐに薙いできたからギリギリで木剣で防いだ。……んだけども。
「大丈夫かー!! リディアー!」
「大丈夫じゃねーし」
地面に転がった私はぜいぜいと息をする間に答えた。アーサーがさっきまで振り回してた木剣を放り投げ、ドドド、と私に駆け寄ってくる。何でそんな離れてるのかっていえば、アーサーの打ち込みに恐怖を感じた私が目いっぱい後ろに飛んだからである。OH...。何とか飛べたよ。頑張った、私。
でもって勢いあまってゴロゴロ転んだ私は、色んなところを地面にぶつけて傷だらけになった。擦り傷だから唾つけとけば治る、というのはお嬢様には許されない。まあ、転生前世界でも子供の傷は放置すると危ないから、水道水で綺麗に洗って手当てしてたけど。ちょっとした擦過傷でも清潔にしてバンドエイドを貼るとかね。昔は赤チンとか使ってたけど、私が転生前した時には使ってなかったなあ。ていうか、売りすらなかった気がする。あれ、塗るとホントに真っ赤になるんだよね。
しまった。話が飛んだ。
ひたすらおろおろするアーサーの傍で、メイプルが慌てて私の傷を水で洗い流す。その後の治療は自力でやるんだよね? デスヨネー! ていうか、髪を吸引からの増幅とか合成とかで治るって、これ回復魔法じゃないわけ? そうは思うけど痛いもんは痛いのでとっとと治したけども。
アーサーがテンパってる間に私は剣術テストの合格をもぎとった。よし!!