チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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塩焼きにしよう!

 魚市場には屋台がなかった。三人とも屋台を期待してたから、お腹が減りまくってる。というか、テオ。おまい、魚市を知ってたんなら、これくらい判ってたんじゃないのか!? と、問い詰めたら、うっかり忘れてました★ くらいな反応をされた。コノヤロウ!

 

 そして私は人気のない海岸、ちょっと岩があるとこを目指すことにした。宿に戻っても良かったんだけど、口が魚になってるんだよ! 期待してたから余計に!

 

 ちなみに市には干した魚とかはあった。が! 私が想像してたものとは違った! ほっそい魚が干しまくられてるとか、平たくされててもちっさい魚だったりとか。つまり、痩せためざしと小アジだよ! いや、美味しいけどさ! アジとかめざし! でもちょっと不潔っていうか、魚をさらしてどんだけ経ってんの、という感じだったので遠慮申し上げた。

 

 テオから聞いたんだけど、この辺りの魚介類はご家庭で食べる分を除き、主に内陸で売るらしい。あー……なるほど。確かに海から離れたところの方が海産物は高く売れるよね。だから漁師は食いっぱぐれることはないのか。干物にすれば多少は保つし。移動に馬を使えるのはお金を持ってる人たちだけで、大抵は徒歩で売り歩くらしい。

 

 そうか。交通網というか、流通網というか、そういうのが整ってないんだ、ここ。川があれば小さくても船が使えるかもだけど……地形的に難しいのかも。

 

 魚を売る時は、乾燥させた海草や海水から作った塩も一緒に持っていくという。あー。それは売れるわ。塩がどこにでもあるんならともかく、売り歩くってことは内陸にはあんましないんだろう。もしかして港の近くで作ってるのかな? 作り方はよく知らないけど、転生前世界でも大昔は塩が貴重で、金と同じ重さで取引してたという話を聞いたような聞かなかったような気がする。転生前世界日本では昔は塩は専売とか色々あったんだけど、今は自由に販売出来たような……今って言っても転生前の時点での話だけども。

 

 は!? 専売とかの時代を知らん!? おかしい! 私は知ってる(体験した)のに!

 あっ、話が逸れた。

 

 ちなみにこの港町から魚介類を売る時の移動には転移魔法は使えないって話だった。……いや、さすがに島の外で氷魔法が使える人が少ないんだから、転移魔法は期待してない。そもそもアシュフォード家でも転移系の魔法を使えるのはテオくらいって聞いたし。島の外にも転移魔法を使える人は多少はいるっぽいけど。

 

 でも氷属性の魔法すら使える人が少ないんだから、テオのような空間系の魔法はもっと稀少では……? どうやって転移魔法を修得したんだ、テオ。もしかして最初から使えたとか? 私も吸引とかの魔法は習ってないからなあ。

 

 いや、それはともかく! 私は魚が食べたい!

 

 なので、私たちは人気のないとこでこっそり魚を釣ることにしたのだ。出来れば釣るのは港近くが良かったんだけど、人目につくと色々面倒くさいと思ったんだよね。それにここには漁協みたいのがないぽいので、獲ることに制限はないだろう。

 

「あの……リディアお嬢様。これは……」

「七輪。でもってそっちはサビキだよ。テオはそれで釣ってみてくれる? 小魚ならかかると思う」

 

 戸惑うメイプルに返事したあと、テオに声をかける。

 

 そう! 私はムカついたので、その辺にある石とか岩を吸引して、変換し、強引に七輪とかサビキとかを放出したのだ。転生前世界にあった代物で、この世界にはないかもだけど、もう知るか! メイプルとテオもよく判ってないみたいだし、問題ない! キャンプ用のバーベキューコンロを出すよりマシ! と、判断した!

 

 もちろん炭も合成した。炭は石から作るイメージが出来なかったので、その辺に転がってた流木とかを吸引して合成した。サビキというのは針に疑似餌がついてるもので、餌を入れるカゴはついてないけど、多分釣れる、と思う! 撒き餌をするのが普通だと思うけど、撒き餌にする小さいエビはイメージ出来ないからか、合成できる気がしないんだよ。

 

「釣りはするのでやり方は判ります! さびきっていうのは知らないけど!」

 

 そんなことを言ったテオが釣り竿についたサビキ針を海に放る。竿は先にテグスがついただけの簡単なもので、テグスの下にサビキがついてる。あ、一応、テグスは糸にした。さすがにナイロンとかは判んないし。それに竿とかリールとかの構造が判んないので合成出来なかった。っていうか、さすがにそこまで合成するとヤバいかも知れぬ。と、思ったので避けた。

 

 テオが釣りをしている間に、私はテーブルとまな板と包丁と塩コショウとかの調味料を放出した。調理道具一式と調味料は屋敷の厨房で吸引しておいたものだ。……ホント便利だな、某白ポケットもどき。

 

 私が釣り道具とかをちょっと知ってるのは、転生前にちょっとだけ釣りをしたことがあるから。小学生の息子と娘を連れて釣りに行ったこともある。……旦那はついてこなかったけど、釣り具はやたら持ってたんだよね! ありがたく使わせてもらったよ! 使わないのに何で持ってんだ! 見栄か!? ゴルフとかもやんないのに道具だけは持ってたし!

 

 あっ、話を戻そう。

 

 テオがサビキを投げてすぐに魚がかかった。びっくりしたテオがこっちと釣り糸を交互に見る。私はぐっ、と親指を立てて頷いた。

 

「そのまま上げていいから!」

「了解っす!」

 

 初めての釣り具だから迷ったらしいテオは、すぐに頷き返して釣り竿を持ち上げた。針には3匹ほどの魚がかかっていた。良し良し良し!

 

「おお! すごい!」

 

 嬉しそうに笑ったテオが手早く針を外して、箱に魚を入れる。おおう、確かに慣れてるな。その箱をメイプルがテーブルまで運ぶ。

 

「メイプル、魚はさばける? 出来ないなら私がやろうか?」

「駄目です! 危ないですから!」

 

 メイプルが思いっきり首を橫に振る。だって釣れたのは小イワシなんだもん。手開きでいけるじゃんか。それとも串を打って丸ごと炙って食べるのがいいかなあ。小さいから串を打たない方がいいか。出来れば開いて蒲焼きにしたいけど、砂糖はともかく醤油はまだ見たことないし。……うーむ。屋敷に戻ったら大豆からの醤油&豆腐とかやってみるかな。

 

「私がやりますから! いいですか!? リディア様は近づかないでください! まな板に!」

 

 必死の面持ちで言われてしまったので、私は仕方なく待ってることにした。というか、まな板に近づくなって一体……。せめてテーブルに近づくなって言って欲しい。私ががっくり落ち込んでいるのを放置したメイプルが、さっくりと魚をさばいていく。

 

「え!? メイプルって料理できるの!?」

「田舎では交代で料理をしてましたから」

 

 手を止めてメイプルがにこりと笑う。何なんだろ、メイプルって。侍女でもあるし護衛でもあるし、おまけに料理もするとか、もう何でも出来るのでは!?

 

「メイプルの田舎にも魚がいたってこと?」

「はい。うちで食べてたのは川魚でしたけど。これはうろこが柔らかくて、包丁で撫でるだけで落ちますね」

 

 確かに、鰯は弱いって書くくらいだからなのか、鱗をとる時は包丁の背で軽く削ぐって感じなんだよね。興味が湧いた私は自然とテーブルに近づいてメイプルのすることをじーっと見ていた。頭を落として内臓を抜いた鰯を小さな桶に張った水で洗う。OH...。完璧ではないか、これ。

 

 テオが釣った小イワシや小アジを片っ端から塩焼きにして三人で食べる。メイプルとテオが美味しいとびっくりしていたのが面白かった。新鮮だからと内臓を取らずに焼いて食べた時のテオの顔が面白かった。ちょっと苦味があるんだよね。でも食べてくうちに気に入ったらしい。酒が欲しい! と叫んでいた。私も白飯が欲しいよ! 米道を忘れてはならぬと思ったね!




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