チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
転生世界にもかなり慣れてきました。アラフィフ主婦の斉藤奈美恵です。アラ還言うな。転生した時点の年で何の問題もない。問題ないったら問題ない!
私の一歳の誕生日をちょっと過ぎた時まで病気だったスカーレットは、すぐにみるみる良くなっていった。ふふん。必死で乳を飲んでたおかげか、私は吸引というスキルを会得したんだよね。掃除機をイメージすると吸えるの、これが。ピキーン! とかいう音がして、吸引とかいう言葉が頭に浮かんだだけで覚えたぽい。その後、試しに何もないところの空気を吸引してみたら出来た。それを放り出したらちょっとだけシーツが動いたから、吸ったものを出せることも判った。
なので、私はスカーレットから吸引したものを外にぽぽい、と投げた。低いところに換気用の窓がついてて良かった。ちなみに吸引したものはどす黒い空気が渦巻いているようなものだった。OH...。スカーレットの病気の素はこんな色だったのね、と私も驚いた。外に捨てたら消えたけども。根性がないな。病気の素。そんなことをしてたら、両親とメイドにはものっすごいびっくりされた。
病気をまるっと吸引して捨てた後、スカーレットはあっという間に回復し、そのことをアーサーやメイドが泣いて喜んだ。それを見ただけで私は転生して良かったと思った。……我ながら単純だなあ。
その吸引というスキル……アーサーとスカーレットは『魔法』と言っていたので、魔法なんだろう。とにかく、吸引という魔法は珍しいらしい。スカーレットが回復した後、私を見た両親が不思議そうに首を傾げ、それに合わせたようにメイドたちも不思議そうな顔をしていた。……そんな目で見られても私にも判んないって。私はただ、ただ、必死で母乳を吸ってただけだし。それに特典はないと雲のイケメンは言ってたから、そこまでレア魔法ではないと思う。……多分。
イメージしないと魔法が発動しない、ということなら掃除機をイメージ出来ないと駄目なのかも知れない。あれは少なくとも掃除機がある世界じゃないとイメージは難しいだろう。何せここでメイドがやってる掃除は、ほうきで床をはき、その後でモップをかけるというものだ。窓もぞうきんで拭く。それがこの世界の掃除らしい。ゴミを吸い込んで捨てる、という機械が存在しないのなら、イメージは出来ないだろう。
そしてこの魔法には詠唱なるものがいらない。ちっ。出来れば格好いい呪文とかあれば面白かったのに。イメージした魔法が発動するのなら、イメージしやすいように呪文が必要とかしろし。というのは私のわがままか。
それに私には治療系の魔法の属性はないと雲のイケメンは言っていた。吸引で病気を治したんだけど、あれって治療系にならないのかな? これが攻撃魔法ってこと? でも吸引した空気を出す程度じゃ何にも攻撃出来ないと思うんだけども。
何はともあれ!
誕生日が過ぎ、ある程度は自由に歩けるようになった私は、ようやく部屋の外に出られた。メイド付だけども。さすがにこの年齢の幼児を一人で外に出すのは危険だというのは私にも判る。昔、子供が歩けるようになった頃、ベビーカーで公園に行くことはあった。公園で子供を遊ばせるためだ。その時もやっぱり私はついて行ったし。その辺りでママ友とか出来るらしいけど、私は……うっ、頭が!! 私は一人が好きだったの! ほっといて! 決して寂しい人じゃないから!
昔の悲しい思い出はさておき。
廊下を初めて見た私はいきなり恐怖のどん底に落とされた。暗いよー! 何でこんなに暗い……あああ! 窓から光が差し込んでないからか! そして灯りが少ないから! だから部屋より暗いんだ!
普通、こういった異世界系には魔法の灯りとかあるんじゃないの? 火をつけたら一酸化炭素が出るというのは理系よわよわの私でも判るけど、それって密閉空間、それか火災レベルでヤバいってことでは? ……あ、窓をたまにしか開けないから、危険ってことか? いや、それ以前に寒かったっけ、ここ。
暗がりに怖い思いをしつつ、私はメイドのスカートをひしっとつかんで歩き出した。高級ドレスじゃなかったから良かった。スカーレットが着ている服とは明らかに格が違う。だから遠慮なく握り締りしめられる。
「お嬢様、目が慣れないと暗いと思いますので、抱き上げてもよろしいでしょうか?」
いやいや。幼児にそれ訊いちゃう!? でも私はがくがく頷いた。怖いのよ! 暗いところは苦手なの! 転生前にド近眼だったから、見えないという恐怖があるの!
メイドが慣れた手つきで私を抱き上げてくれた。ほっとする。ゲームみたいにどこからともなくモンスターが出てくる、ということはないらしい。メイドもゆっくりと呑気に歩いて……
「あら。出ましたね」
唐突にメイドが軽く手を振って、でかく丸い火を前に向けて放つ。おーい!? いきなり魔法!? そして走った火が照らしたおかげで、廊下の向こうにいるものが私にも見えた。
「ひっぎゃあああああああああああああ!」
思わず叫ぶ。急にモンスターが出た! 絵に描いたような、黒い死霊みたいのががががが!! 私は叫ぶと同時にメイドにしがみついて半泣きになった。
「まあまあ。お嬢様は初めてですもの。驚かれましたよね」
モンスターが出るんかい! そしてメイドはそれを事もなく退治するんかい! 家の中だよ、ここ!
「お嬢様のお部屋は結界内ですので、こういったものは出ませんが、お屋敷内ではよくあることなのです。そのうち慣れますから」
にっこり笑ったメイドに私は恐怖を感じた。どうりで窓が開いてないわけだよ! ってか、火に照らされて明るくなった時に見たら、廊下には窓がないのが判ったわ!
モンスターはさっくり消えた。そしてメイドが放った火もモンスターを退治したらすぐに消えた。
「結界を張るためには白魔導士への依頼が必要です。ですので、お嬢様のお部屋と旦那様と奥様の寝室、私どもの使用人の住み処にだけ施されています。寝込みを襲われると多少、ダメージがありますので」
呑気に解説するなし! 何で私が理解できると思うの!? 私、まだ一歳とちょっとなのに! ありがたいけども!
私はガクブルしながらメイドにしがみついたまま、運ばれた。
私、この世界で生きていけるんだろうか……。
https://syosetu.org/novel/413002/
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書きながら修正しているので時間がかかってます
読んでくださっている方々すみません
少々お待ちください