チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
メイプルに駄目出しをされて服を作り直した、元アラフィフ主婦で転生者の斉藤奈美恵です。ごきげんよう。リテイク一度で済んだのでほっとしました。
そんな訳で子供服を自作できたよ! メイプルの指定は出来るだけ質素、でもそれなりに品があるというものだった。でないとリディア様呼びした時に違和感が半端ないということになるらしい。まあ、それは判る。ちなみにメイプルの服はサロペットにした。剣をぶら下げるためのベルトも要求されたので合成した。テオは最初から作業着に近い服だったから問題ないだろうということになった。
そんな訳で着替えた私たちは宿屋の外に出た。服を用意するって大変だよ! ってか、買った方が早かった気がするね! 通り道にあった露店を見て私はメイプルを振り返った。ここって宿屋に近くね? だったら買った方が早くね? という意味を込めてじーっとメイプルを見つめると、愛想笑いを返された。ムカつく! でも騒いでた私のせいで急いで宿屋に駆け込んだってことだろうから、許す!
様々な露店が並んでいるせいか通りには人が多い。でも転生前世界日本の渋谷ほどじゃない。渋谷駅の近くは行ったことがあるけど、あれは地獄だった……あのスクランブル交差点の人の多さってどゆこと!? 広告用か何かのでかいモニタ? みたいのがたくさんあって、どれ見ていいか全く判らなかったたんだが!? それに観光客が山のようにいるし! 下手すると子供たちとお互い迷子になるとこだったよ!
しまった。話を戻そう。
宿屋の前にある道の端には色んな店があった。でも食べ物の店は食べ物エリア、服とかアクセサリーは服飾エリア、と何となく分かれている。転生前世界日本でいえば祭のような感じと言えばいいだろうか。ただし前世の祭ほど賑やかではないし露店の密度は低い。のんびりした雰囲気だ。だからこそゆっくり店を覗きやすい。
しかも私が子供だからなのか、買うかどうかとか、オススメとか言われない! 若い男店主と話しているのはメイプルで、テオは食べ物の露店に目が行っている。……私もそうだけど、テオもかなりの食いしん坊ではなかろうか。
私がじーっと見てる露店にはアクセサリーが並んでいる。可愛い指輪とか素敵ネックレスとかが置いてあるんだけど、自分がつけられるものじゃないのは判る。というか、サイズが絶対に合わない。ブローチもあるけど、つけるにはでかすぎる。でもまあ、見るのは好きなので見よう。それに多少、触っても文句は言われないみたいなので、ちょっとだけ触ってみたら。
「お! お嬢ちゃんは目が良いね! それは珍しい魔石っていう石だよ!」
お嬢ちゃんとか、急に話を振られたらびっくりするってば! 私は思わずびくっとして手を離した。触ってたのは1センチくらいの玉がついたネックレスだ。
……待て。
魔石? 珍しい?
と思ったけど、口には出さない。ちょっとは賢くなった、私! っていうか、声を上げたら殴る、みたいな顔をしていたメイプルを見たから黙ったんだけども。メイプルが私をちらっと見た後、店主に笑みを向ける。
「魔石ですか? この石に魔力が入ってるんですか?」
「そうそう! これは風の魔力でね! この辺じゃなかなか出回らないものだよ!」
でしょうね。と、私は心の中で呟いた。出回っても使い途ねーだろー。
例えばメイプルが風魔法をこめると魔石は緑色に染まる。私も風を吸引、増幅して試してみたけどそうなった。でもこれ、超薄い色しかついてない……というか、ほぼ色が見えないんですが。それに仮にこの手の魔石が出回ったとしても、そもそも単四電池程度の魔力しかないから使い途が限られている……というか、ホント、何に使うんだ、コレ。
「これをつけると風の盾が使えるんだよ! 盾に、こうね。風の盾がかぶるっていうかね」
うーそーつーきーーー!!!
と、叫ばなかった私を褒めて欲しい。単四電池、しかもうっすい色だからほぼ魔力が残ってない魔石が盾になる訳ねーだろー!
それまで食べ物の露店を見ていたテオが、ふと気付いたように魔石を見つめる。
「あー、これって魔」
「テオさん。行きますよ。すみません、またご縁がありましたら」
言い終わる前にメイプルがテオの頭をつかむ。その途端にテオがひーひーと痛がったから、多分、おもっきりつかまれたんだろう。ご愁傷様です。
露店から離れたところでメイプルがテオの頭を離し、今度はヘッドロックをかます。お、おお。メイプルはもしかして格闘も得意なのではなかろうか。テオが喚いてるし。
「いいですか!? 変なことを口走ったら食事抜きにします!」
「はっ、はいいぃぃいい! ごめんごめん! ごめんってば!」
まるで怒られている時の私みたいかも。ハハハ。