チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
米を探して三千里になりそうな元アラフィフ主婦転生者の斉藤奈美恵です。ごきげんよう。私の米道は相変わらず遠いようです。ていうか、米があるかどうかも判りませんが探しています。
テオが地理が判らん、とのたまったので、私だけじゃなくメイプルも突っ込みを入れた。でもって地図の写しを出した。書庫で写しておいて正解だったよ……。ちなみにメイプルとテオは小さなカバンは持っている。さすがに手ぶらじゃおかしいし。メイプルが地図を突っ込んでいたのはそのカバンだった。
「……まさか地図の見方も判らんとか言いませんよね? テオさん」
「言わない言わない! だから下ろしてーー!」
今、テオは天井に逆さづりにされている。当たり前である。やったのは私とメイプルである。ベッドにあったシーツを吸引し、縄を合成し、メイプルが素早くテオに巻き付けて天井に吊した。吊せるハリがあって良かったね!
しばらくテオに説教を食らわせてから、メイプルが縄を解いた。半泣きになったテオがテーブルに置かれた地図を覗き込む。
「あ、今、ここっす!」
テオが指差したのは、大陸の西側、北端からちょっびっと南東に寄ったところだった。港からはやっぱりちょっびっと離れて……待てい。この縮尺だとどこも近いんだが!?
「もっとでかい地図が欲しいなあ」
「ありますが?」
「メイプル、それ最初から出せし!」
書庫で写した地図とは別の地図をメイプルが机に置いた。そうそうこれこれ! 世界地図に近いものじゃなくて、国単位というか、もっと詳しく判るやつ! ……縮尺がでかい? 小さい? えーと、確か分母が小さい方が詳しくなる? よく判んないけど、まあいいや!
「あ、これだと最初はここ、次がここ、今はここっすね!」
そう言いながらテオが地図を指で押さえる。テオでも一応はどこに何があるかは判ってるぽい。そいえば前に来たとか色々言ってた気がするな。最初に転移したトコが大陸の北端、次が南西の港町だから……えーと、転生前世界だと例えばユーラシア大陸の北の方……オスロの上……えーと……オスロとベルゲンは判るんだよね。ゲームに出てきたから。そのさらに上って言えばいいのかな。北極に近い……おい! 何てところに出たんだ!
次がベルゲンのかなり上。一気に移動出来るのがそのくらいだから、かなりの距離を移動したことになる。あそこの……なんだ、えーと、ギザギザのトコだよ……あ! リニア海岸! いや、これは違う。リニアは確か乗り物だ。えーと……り……リアス式海岸だ! そう、左端のギザギザしてる、幼○戦記で砲台ぶっぱしてフルボッコにした辺り……いや、あれはオースフィヨルドだから、転生前世界で言うところのオスロなのかな。それより北。オスロから離れた北西の港町だった。大陸の左端ね。ベルゲンのかなり上と言った方が早いかも。
でもって今いるトコが……えーと、ハンブルグくらい? あ、ネトゲのハンブルグだから、実際の場所とはちょっとずれてるとは思う。あのゲームって海に面したトコに町とか国があったから、若干リアルとは違ったっていうかー。
とにかく! ヨーロッパの海とかがない大陸と思ってもらえばいいんじゃないか、と。リアル転生前世界の気温とかは知らん。ていうか、そこまで調べたことないし、行ったこともないから判んない。
ちなみにこの地図の縮尺がそもそも判んないので、雑に考えればそうってだけ。位置的な話ね。もしかして転生前世界のアメリカとかに例えた方が判りやすかった? でもあの辺ってゲームで行ったことないし! 判らんが過ぎるから説明できない!
まあ、いいや! 私は気を取り直して地図を指差した。
「この距離を移動できるんだよね? それなら内陸に移動する時にこういう風に転移すればいいんじゃない?」
私は港町とここの間を人差し指と親指で……子供の手だからギリギリだけど、指の先で押さえた。でもってこの町を親指で押さえたまま、伸ばした人差し指で大陸の内側を押さえる。次に人差し指を中心にして親指を内陸側に寄せる。要するに雑な分度器込みの定規みたいにしてみた。
「は!? えっ、すごい! こんなやり方あるんっすね!」
「えっ、リディア様、こんな風に距離を測れるんですか!?」
おまいら。二人とも地図の見方、知らんくね!?
仕方ないので私は簡単に地図の見方を説明した。メイプルが持ってた二枚目の地図は、レベッカが渡してくれたものらしい。多分だけど写したのはレベッカだ。帰ったらお土産を渡そうっと。
王都なるものはここからかなり南東に行ったとこにあった。高低差が書かれていないけど、テオが言うには山の中とかではないらしい。平らなとこで城壁があって、みたいな感じ、と言われた。なるほど……。つまり転生前世界のラノベとかアニメとかの形って思えばいいのか! あ、もしかしたら転生前世界のリアルでもそうだったのかも? 判んないけど。転生前世界日本の城は、確か城壁があって堀があってそこに水があって、みたいな作りじゃなかったかな? そいえばゲームで一万匹の堀ブナ釣るの大変だったなあ……。
って、今はそれどころじゃない!
「内陸っていっても綺麗な川がないと駄目だと思うから」
「大きい川はこの辺りでしょうか」
「あっ、ここにもあるっす!」
三人で地図を見ながら色んな意見を出していく。地図を見てるからか、多少は話もマシになった気がする。
「うーん。平らで川が分かれてるとこより奥?」
「平ら……あ、この辺は平らっす!」
テオが指差したのは、海からかなり離れた場所だった。方角で言えば南東より上……えーと、南南東じゃなく、東南東? だっけ? さっき雑に測った方法だと、指で押さえたトコ、二回分くらいだと思う。テオなら二回で転移出来そうかも。
じゃあ、明日に移動しましょう、ということになり、夜が明けてから私たちは転移した。そして転移先で私は激しく後悔した。
「空気が薄すぎ! 高山病になるわー!!!」
高い高い山の上で私は叫んだ。わー、わー、わー、と木霊する。違う! 山登りが楽しみたかったわけじゃない! またクソ寒いとこに出たよ!
「テオぉおおおお!!! 何でずらさなかった!」
「だから! 俺はこの辺知らないって言ったっすよ!? さむーーーーーーーー!!」
私の叫びにテオが叫び返す。私たちは慌てて防寒着を着込んだ。寒すぎる! 気温だけなら最初に出たトコと変わんないよ!?
「お嬢様! 小屋は出せないですか!?」
メイプルの口調がいつものものに戻ってる。寒すぎるからだろう。そして私を便利な某白ポケット扱いしてる。せめて木! あっ、釣り竿とかその時の残りとかがある!
私は必死でこの辺の氷とか雪を吸引し、ポケットの中の木とか石を増幅しまくり、それを合成して放出した。ドカン! と音がして小屋が出来る。三人でそこに駆け込んだ。
「はあああ、あったかい……」
「ですね……」
「死ぬかと思ったっす!」
お前のせいだよ! と言う気力もなく、私は何もない壁際に煙突付き暖炉を放出した。石を吸引しておいてホント良かったよ! ついでにテオに小屋の中の隙間を閉じさせて空気も出したよ! もちろんちゃんと換気も出来るようにちょっとは隙間を残させたよ!
ホント、死ぬかと思った!