チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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蛇は苦手なんだってば

 ある程度開けた(私が開いた)森を抜けるとやっと草のある場所に出た。森は暗かったからか下草すら生えてなかったし。でもって私の某白ポケットには大量の皮革と余った肉、その他諸々が入ったままだ。でも重さを感じないので放置中。

 

 目の前に広がる草原は広い。生えてる草はかなり背が高くて道らしいものはない。やっぱ、人の手が入ってないっていうのはホントらしい。誰も行き来していないように見える。一面の草を見た私たちは顔を見合わせた。

 

「とりあえず草刈りをしながら進みましょう」

 

 メイプルがそう提案して風魔法でざっくり草を刈ると、三人が通れるくらいの幅の場所が出来る。それを目で測ったのか、メイプルが一気に草を伐って道を作る。隠れていた小さな動物や虫とかが慌てて逃げる。逃げ惑うもの中にいた蛇にテオがナイフを投げる。

 

「あれ、美味しいんっすよ!」

「何で蛇!? 肉が余ってるじゃん!」

「えー! 美味しいのに! あっ、これって吸い込めるっすか!?」

 

 陽気に言いながらテオがナイフを刺した蛇に駆け寄る。

 

「いーやーだーよー! もしかして私を倉庫か何かだと思ってる!?」

「いや、その、ははは!」

「笑ってごまかすなし!」

 

 私は引きつってテオが持ってる蛇を指差した。

 

「マムシを売って小銭を稼ぐとか聞いたことはあるけど、それって違うよね!? ていうか、誰がさばくのかと!」

 

 叫んだら二人が不思議そうに顔を見合わせる。

 

「まむ、し? ですか?」

「それって、美味いっすか!?」

「ああああー! ちーがーうー!」

 

 転生前世界日本で知ったことをうっかり口走った私は、頭を抱えて叫んだ。しまった。こっちの世界にはマムシはいないのかも知れない。それか呼び名が違うのか? もしかしたら二人は知らないとか? とにかくこの話題は早々に終わらせねば!

 

「とにかく! 蛇は嫌だから! さばくのも嫌! ついでに吸引するのも嫌!」

「えーーー!! 何でっすか!」

「生理的嫌悪感にケチつけんな! 嫌なもんは嫌だっての!」

 

 私はテオとしばらく言い合いをした。というか、テオが美味いと言って譲らず、私は嫌だから譲らない。メイプルが割って入るまで私たちはぎゃーぎゃー言い合っていた。

 

「リディア様。折衷案でどうですか」

「は?」

「つまり、こうです」

 

 そう言ったかと思うと、メイプルはテオがつかんでた蛇を風の魔法でぶつ切りにした。ひーーー! グロいグロいグロい!! 血が滴ってるー! ていうか、私は蛇が苦手なんだってば! はっ、苦手って言ってないか!? もしかして!

 

「これでどうですか? 頭は落としましたし、短くしたので問題ないかと」

「そういう問題じゃない! 苦手なんだってば! 蛇!」

「……え? でもお食事に出したものは食べてらっしゃいましたよね?」

 

 さらっとメイプルが言うのを聞いて、私はがっくりとその場に膝と手をついてorzになった。マジか……マジか! 知らんうちに食ってたのか! でも最近はウマ飯しか食べてないから、多分、蛇もマズくはなかったんだろうとは思う。だからって黙って食わす!? いや、もしかしたらメイプルたち使用人のまかないには出てたのかもだけど! メイプルの田舎とか、テオはフツーに食べてたんかも知れんが!

 

「あーーーー!! 今さらだと!? 食べたからいいと!? いやもう、いいや!」

 

 結局、私はヤケクソ&半泣きになりながらぶつ切りの蛇を吸引した。吸引した時にぞわっとしたけど、別に某白ポケットに何か異変があったわけじゃない。単に私が嫌すぎただけ!

 

 私はとぼとぼと、テオは陽気に、メイプルはのんびりと草の道を進んでいく。転移の距離を間違えたと言っていたのだから、テオにもっかい転移魔法を使ってもらうことは出来るのか、と訊いた。でもいくら魔力が回復しても立て続けに撃つのは難しいらしい。ふーむ。何か条件とかあるのかな。ちなみに虫除けの魔法程度なら魔力もそれほど使わないので問題ないという。

 

 今のテオは前に私がぶっ倒れた時と同じような感じなのかも知れない。天使バトルの時、その後の屋敷修復とか治療とかで、バカスカ魔力を使って倒れた私も回復水でも魔力は戻らなかったんだよね。私は戻るまでかなりの時間がかかったけど、そうなる前に危険だからやめとく、というのが普通らしい。魔力の残量を気にしながら魔法を使うということだ。

 

 ところが私はそれがよく判らない。けっこう意識しないとキラキラが見えないのだ。あっ、キラキラは身体の中にあるらしい魔力のことね。キラキラ光って飛び回るから、私はキラキラって呼んでる。それを意識しながら何かするとか、無理なんだけど。

 

 しかも私は成長するごとにMPバーがズバッと伸びてるのか、魔法を使う時にキラキラがどんだけ減ってるかどうかも、もうさっぱりなのだ。そのことはアーサーやスカーレット、メイプルを始めとする使用人にも伝えてある。私がどういう状態なのかを把握しておかないと、みんなが対応出来ないからだ。

 

 だから吸引とか合成とか変換とか放出とかが、ほぼ無限に出来る。前は立て続けにでかい魔法を吸引したらぶっ倒れてたのに、今はそこまでじゃない。あ、でも、スカーレットの本気に近い氷魔法を二度続けては無理。あれはさすがにでかすぎるから。一度、最初に吸引したものを畳みまくってからなら出来るけども。

 

 あ、話が逸れた。

 

 とにかくそういう事情もあって、私たちは歩くしかないのである。まあ、私も散歩くらいに思ってるし、メイプルやテオもこの程度では疲れを感じないらしく、普通に歩いている。そして私が機嫌を直した頃には日が暮れ始めた。

 

「明日になったら飛べるっす!」

「じゃあ、今日はここに野営しましょう。リディア様」

 

 テオが元気に言い、メイプルが野営を宣言した後、私を見る。はいはいはいはい! 判ってますよ! 出せばいいんでしょ、出せば!

 

「小屋な! 判ってるけども!」

 

 私は山の上で吸引しておいた小屋を叫びながら、どかん、と放出した。すると何事もなかったかのようにメイプルとテオが小屋に入っていき、私はため息を吐いてドアをくぐった。




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