チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
私たちは草刈りをして平らにした元農地で一晩過ごすことになった。島の外に出てもいい時間は十日だけ、と、スカーレットに口酸っぱく言われたのを思い出す。
「判るんだけども! 確かに米を早く試したいけども! ハズレの可能性もあるけども! 出来れば時間いっぱいまで観光もしたい!」
と、私はこぶしを握って小屋の中で力説した。まだ日が暮れてすぐだから寝るには早い。そして私たちは夕食を摂っている。昼に出したパンが美味しすぎたのか、もう一回、出して欲しいと二人に言われた。……おまいら、段々とウマ飯スキー度が上がってきてないか? とは思ったけど、私もサンドイッチの方が食べやすいという理由でまたパンを出すことにした。食パンとフランスパン限定だけど! 惣菜パンとか他にも色々あるけど、それやりだしたらきりがないし!
「あと4日しかないですけど」
肉を食パンに挟んだものを食べていたメイプルが、うーんと数えてから言う。あっ、そいえば私も何日とか考えてなかったわ。しまった。メモっておけば良かった。
「4日だとギリギリお屋敷に戻れるかどうかっすねー。転移魔法を連射はさすがに嫌っす!!」
蛇と肉を挟んだフランスパン一本を端からかじってたテオが慌てて挙手する。……うん、判ってる。回復水って超辛いから飲むのもキッツいんだよね。しかもテオは回復水を飲んで転移した後は、ほとんど魔力が残らないって言ってた。確かに転移魔法って魔力を食いそうなイメージがあるなあ。
「位置的にはかなり南東に来てるからなあ……」
私たちは食事をしてからまた地図とにらめっこをすることになった。
「今の場所がこの辺なんだよね?」
「多分、そうっすね! 途中で転移の距離間違えたので!」
「威張るな」
賑やかな町から急に高い山に放り出された時のことを思い出して、私はテオを睨んだ。その後の転移で森のど真ん中に出たのは、テオがうっかり距離を間違えたからだ。
「やっぱ帰りまでに4回転移かも。距離を考えると」
「……ですね」
「ところで十日というのは、島の外にいる時間なのか、それとも島に戻るまでの時間を含むのか」
私はキラリと目を光らせ(多分だけど)て、メイプルを見た。メイプルがうーん、と困った顔になって首を捻る。
「普通は十日で戻れというのは、十日目に戻るという意味だと思いますけど」
「え。十日外にいてもいいってことじゃないっすか?」
ほら。二人の認識がそもそもズレてるんだから、私の認識がズレててもおかしくはない! 9泊10日なら10日目に戻る勘定になるが、10泊11日なら11日目に戻ればもーまんたい!
「よし! 10日間は外にいてもいい、という解釈でOKということにしよう! つまり11日目に戻ればいいのだ! つまり残り5日!」
「大丈夫でしょうか……」
不安そうにメイプルが小声で言う。判ってる。後で怒られるかも知んない。でもこの機会を逃したら、もしかしたら当分は島から出られないかもなのだ。確かに米っぽいもの、果てしなく米らしいもの、はゲットしたけど、他にも見たいところはあるし! あ、高山病になりそうなトコは勘弁だけども。
王都観光とかいうのにもちょっとは興味があったけど、メシマズは嫌だ。それに王都っていうと王様とか近そうじゃん? あの肉肉肉肉な飯を押しつけた張本人、と判ったから、うっかり近くに行ったら暴れない自信がないんだよ。それに王都はここからかなり離れている。行く意味もなく、時間も足りないので却下だ。
だとすると他のところということになるけど、テオが内陸は不案内だという。むーん。地形とかが判んないのは困るな。地図にはざっくりとしたことしか書かれてないし。
ふと、視線をずらしたところを私はじっと見た。他のトコにはない印がついてる!
「あっ! ここ、町なんじゃない!?」
「そこは転移の魔法陣があるところだと思います」
「え」
メイプルに言われて私はテオを見た。俺は知らん、てへぺろ★ みたいな顔をしていたので、すねを思っきり蹴っ飛ばしてやった。ぎゃー!! と叫んだけど知らん。
「転移の魔法陣ってことは、ここから島に直帰出来るってこと!?」
「ちょっ、き、ですか?」
あ。しまった。メイプルのこの口調、直帰の意味が判んないか、私が言葉を間違えてるか、だ。言い間違えの時もこういう反応をされる時があるんだよね。
「えーと……ショートカット出来るってことかな、と」
「あ、そういう意味ですか。転移の魔法陣からはお屋敷に直接転移が出来ます。島外にいくつかありますね」
ごめん。改めて考えたら直帰とショートカットじゃ意味が違ったわ。直帰は会社で出先から直で家に帰ることだった。しまったしまった。転生前の友達が営業してて、出先から帰るっていう話に出てきた言葉だったね。うっかりしてしまった。
メイプルの話だと王都の近くなどにも、アシュフォード家専用の転移の魔法陣があるらしい。魔法陣がドアがある小部屋にあって、アシュフォード家の者でなければドアを開けないという。ほうほう。つまりアレか。秘密の部屋みたいな感じかな。いや、こういう言い方すると、ハリ○タの作品名みたいだね。私は転生前に劇場版を観ただけだし、内容はすっかりさっぱり忘れてるけど。
そーいえば、ハ○ポタの本って本屋が買ってさばいてたって聞いたなあ。えーと、買い切りっていうのかな? 返本が出来ないってこと。つまり、売れない分を返せばリスクがないっていうか。取次制度があるから原価とか色々な都合があると思うけど。あ、でもこの情報って私が転生する前の話ね。念のため。
はっ。話が逸れた。今は本の話はどーでも良かった。
つまり転移の魔法陣を使えば、テオの負担は減るってことだ。それに小部屋とかがあるんなら、少なくとも山のてっぺんとかじゃないと思う。ここからなら3回ほど転移すれば、そこに辿り着けるのでは!? 安全マージンを取って4回かな。そこからはショートカットが出来る……あ、でも私がドアを開けられるかどうかが判らんな。
うん! 出来なかったら出来なかった時に考えよう! 観光優先だ!