チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
障子のような引き戸を開けたらそこにも扉があって遠い目になった、元アラフィフ主婦で転生者の斉藤奈美恵です。ごきげんよう。これは入れ子なんでしょうか。あ、カタカナで書くとマトリョーシカです。
三人で引き戸をくぐると白くて小さい部屋に出た。そしてまた、目の前に扉があった。しかも何故か橫にも2枚の扉がある。背後にもあるから、合計4枚。何でだよ!? もしかしてこれ、迷路とかじゃないよね!? でも3枚の扉は引き戸じゃない。そのことにはほっとしたというか、納得できた。でも部屋の壁が真っ白だと違和感もへったくれもないね!
「どういうこと?」
「お嬢様が触れれば正しい扉が開きます」
メイプルが言うことにテオがうんうん、と頷く。扉を開けたら小部屋にまた扉っていうのは、誰かが勝手に移動しないようにしてるんだと思うけど……転生前世界日本のお化け屋敷を思い出してしまう。テオが出した光がなかったら、完全に真っ暗だろ、ここ! しかも狭いんだよ、ここ! 三人でみっしり詰まる感じまではいかないけど、転生前世界日本でいえば四畳半もなくない!? 立って寝るだけなら、一人一畳とか聞いたことあるけど、ぎりっぎりだよ!? それに天井も高くないから密閉感がパネエ! 天井はメイプルとテオの背がギリって高さだから、もっと背が高いアーサーは絶対無理だろ!? 立ってらんないよ、これ!
頭の中ではぐるぐる考えてたけど、私は言われるままに目の前の扉に触れた。目の前の扉に手を触れるけど無反応だった。次に右の扉に触れる。やっぱり無反応。最後に左の扉に触れて……
「反応しないけど!?」
「おかしいですね……」
「えっ、何で!? 開かないっすか!?」
私たちは顔を見合わせて慌てた。けど、狭いからジタバタは出来ない。私はもっかい、3枚の扉を続けて触った。でもやっぱり何も起きない。
「なんで!? ここに閉じ込められるってこと!? あっ、戻るとかは」
「無理です。一方通行なので」
メイプルもちょっと焦ってるらしく、声がちょっと上ずっている。テオはもっとテンパってるけど。頭抱えて身悶えしてるし。……狭いからか。もし広かったら踊り出してたのかって動きだな。
私は扉を叩くようにぺたぺたと触った。でもやっぱり反応しない。おのれ!
「頑張れば開くとかないの!? あっ、テオの転移魔法とかは!」
「無理っすー! この部屋では転移魔法が使えないっす!」
「はー!? どん詰まりじゃねーか!」
悲鳴混じりの声を上げたテオをうっかり殴りそうになったけど我慢した。慌ててるのはみんな同じだ。
でも何で開かないんだろう。メイプルの言い方だと、アシュフォード家の人間なら開けられるってことなんだと思う。さっきの引き戸は開いたし。この転移陣を利用して使用人だけで出かける時は、アイテムか何かを使うという。って、それ持ってくれば解決だったのに! 私がいるから、誰も持っていくとか考えなかったのか!?
「解せぬ! 開かないとかないわ!」
「あっ、もしかしてお嬢様が光ればいけるのでは!?」
唐突にメイプルに言われて私ははっと息を飲んだ。そっか! さっきは光って……待て! 意図して自分を光らせるってどういう状態だよ!?
「そうっすね! きっと開くっすよ!」
「テオも同意すんなや! 自分で自分を光らせるとか、どうやるんだっていうか!? そんな魔法あるんか!?」
「ないっすね!」
即座に否定されて私はその場にがっくりとうなだれた。orzである。狭いから心持ち、だけど。
「メイプルは出来る?」
「試したことがないですけど、出来ないと思います」
メイプルが天井に浮いてる魔法の灯りを見てから、自分を見下ろして指を振る。でも何も起きない。
「灯りの魔法は私も少しなら使えますが、自分には使えないようです」
「あーーー! 手詰まりじゃん! どうすればいいんだよ! 向こうから開けられる仕様になってないの!?」
私は頭を抱えて叫んだ。どうすればいいんだってばよ!? こんなとこに閉じ込められ続けたら酸素っていうか空気が足んなくならない!?
「無理っす! 誰もいない時なら向こうから入れるっすけど、こっちに誰かいる時は開けられないっす!」
慌ててるのにテオに断言されて私は地団駄を踏んだ。こう、あれか! 光りたいと思えば光れるとかか!? でもさっきだって自力でやった訳じゃ……。
あ。待って。もしかしてテオが出してる光をちょっち吸引すれば!
そう考えた直後、私はちょっとだけ光を吸引した。
「うりゃーーー!」
某白いポケットもどきの中で吸引した光を畳みまくって増幅しまくって放出する。すると部屋の中がものすごく眩しいことになった。
「目がー!! 目がーーー!!」
「テオ、それはお約束のセリフだけど今じゃない! って、私も眩しいけども!」
私とテオが言い合ってると、メイプルがのんびりと口を挟む。
「お嬢様、テオ。手で目を覆えば問題ありません」
「それやると視界ゼロだろ! 扉にどうやって触るのかと!」
「手探りで良いかと」
「あ」
メイプルに指摘された私は片手……じゃ足りなかったから、片腕で目を覆って、もう片方の手で扉を探った。1枚目は何も起きなかった。2枚目に触れた瞬間、何かが吸われたような感じがして、眩しい光がしゅっとおさまった。私は腕を退けて呟くように言った。
「あ。開いたぽい」
「やったー!」
テオがばんざいをしながら半泣きになってる。いや、気持ちは判るんだけどさ。
「良かったです! このまま閉じ込められたらどうしようかと!」
うん、メイプルも判るんだけどさ。判るよ、二人とも、判るけど。
何故か扉の向こうに立ってるスカーレットが怖い笑みを浮かべてることに気付いて!