チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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笑顔なのに笑顔じゃない

 前にこの世界にも正座があるんか、と驚いたけど、さすがに三人並んでは初めてだなー。私はスカーレットに叱られながらそんなことを思った。最初に言われたのは許可を出したのは9泊10日ということだった。もちろん解釈の違いだと主張したけど、黙れ、と言わんばかりの視線を向けられた私は、カエルに睨まれた蛇……あ。逆だ。蛇に睨まれたカエルみたいに黙っていた。

 

 扉を出たところには少し広い四角のホールみたいなものがあった。転生前世界日本で言えば、ものすごいでかい家の玄関みたいな感じといえばいいかも知んない。そこにスカーレットが腕組みをして立っていたのだ。しかもお付きの侍女とメイドを引きつれて!

 

 どうやら転移のための扉を開けようとすると、外側の丸い石みたいのがピカピカ光るようになってるらしい。あれか。転生前世界でいえば、警察とかの車の上で光りながらぐるぐる回ってるやつ。……あれ!? 私が転生する直前のパトカーは、光るとこが長くなってた希ガス。もしかして若い子はぐるぐる回るだけのヤツは知らんのか!? あっ、でも待って。覆面パトカーには普段はついてないから、追っかけたりする時にぐるぐる回転光をつけるのでは!? あ、でもそれって追っかけられないと判んないかもじゃね!? 私もそんなことされたことないし!

 

 いや、今はそれどころじゃない!

 

 目の前にいるスカーレットは笑ってるんだよ。顔は。でも目は全く笑っていない。むしろ目力が半端ない。目から光線が、みー!! っと出て、壁を射抜けるんじゃないかと思うくらい怖い。

 

 最初に叱られたのは日程のことだったけど、一番まずかったのは連絡をしなかったことらしい。連絡……? と思ったらテオが真っ青になってたので、テオの管轄だったっぽい。あー……転移魔法の応用とかで出来るのかも?

 

「わたくし、手紙を一度も受け取らなかったのですけど?」

「そっ、それは! えっ、と、あの」

 

 スカーレットに問われたテオが必死で何かを言おうとしては、黙るというのを繰り返す。あ、やっぱり連絡はテオ担当だったか。

 

「言い訳はけっこう。それにメイプル。あなたもテオに忠告はしなかったのですか?」

「えっ、あの、奥様、私は、その! ええっと、そう! 旅が楽しすぎてですね!」

「お黙りなさい」

 

 メイプルの言い訳を一刀両断したスカーレットが、次に私を見る。ヤバいヤバいヤバい! 心の中の警報が鳴りまくる。

 

「リディア。あなた、出かけたところで何を吸引したのですか?」

「え? あ、ええと……」

 

 唐突に話題を変えられて私は正直に喋った。石や岩、木、その他諸々、大量に吸引したので、まだ某白ポケットに残っている。ちなみに小屋も丸ごと入ってる。素直に答えたら、何故かスカーレットが額を指で押さえてため息を零す。こういう時も優雅なのは見習うべきだろう。でも今はただ、ただ、怖い!

 

 私たちは三人並んで正座のままで叱られ続けた。足が痺れて感覚がなくなるとかを過ぎて、膝とかが超痛くなるまでだお説教は続いた。多分、時間にしたら3時間くらいかな。って、私だけじゃなくてメイプルとテオも悶えてるんだけど。

 

「ではリディア。こちらにいらっしゃい」

「まっ、待ってください、おかあさま。あの、足が」

「メイプルに引いてもらいなさい」

「奥様、私も、ちょっと」

 

 三人で痛さの余りに、ガガガ! と震えているのを見たからか、スカーレットは後でいらっしゃい、と言い残してその場を去った。その直後、三人でその場に転がる。

 

「痛い痛い痛いいい!!!」

「うっ、動けないっす! 無理っす!」

「すみません、お嬢様、私もちょっと」

 

 玄関みたいなところを転がった私たちを見るメイドの目が冷たい。判る、判るんだよ! 私が転がっていいような立場じゃないってことも! もちろんメイプルとテオがいいってわけじゃない。でも私は特にまずい。でもどーにもなんないんだってば!

 

 しばらくのたうってると、ちょっとずつ痛みが治まってくる。私は自分の足を撫でながらため息を吐いた。

 

「やっぱ、硬い床で正座はきつい」

「あっ、お嬢様。言葉遣いが」

「あっ、そうだった。えーと」

 

 自動翻訳機様、お願いします! お嬢様的にしてください!

 

「これでどーよ? 直ってるかね」

「あっ、はい! 大丈夫です!」

 

 てきとうに喋ったら、メイプルが笑顔で頷いた。どういう理屈かは知らんけど、自動翻訳機が活躍したらしい。自動翻訳機って便利だけどいざって時に動かなかったら困るのかな、これ。いやでも、いざって時というのが判んないけど。今のところは大丈夫ぽいし。

 

「待ってー! 俺だってまだ痛いんっすよ!? ぎゃああああ!!!」

 

 テオは痛さに泣きながらメイドに引きずられていった。あー。メイドの目が冷たかったのって、テオに怒ってたのか。連絡しないといかんのにしてなかったからというのはスカーレットが言ってけど、山のてっぺんに転移させられて大変だったとか、とぼけたところとかを私とメイプルが報告したからかも知れない。もしかしてこれからメイドに説教を食らうのかも。ダブル説教、ご愁傷様です。

 

 って、私もこれから食らうんだろうけどね……。OH...。




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