チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
いきなりスカーレットが暴走した!? と思うような状態で宇宙猫になりそうな、元アラフィフ主婦の転生者、斉藤奈美恵です。ごぎげんよう。私の米道は常に「宇宙の 法則が 乱れる!」を食らわねばならないのかと思わざるを得ない今日この頃です。ちなみに七年経ってても私は永遠のアラフィフですので念のため。
他人の魂出せ、と言われて私は書庫の奥にある扉と向き合っている。ていうか、すでに小一時間ほどは頑張ってるんだけど……というか、頑張ってるのは某白ポケットの中を探すことだけど、出すモノが判んないという有様になってる。探すのに必死ではあるんだけど、正直、帰りたい……というか、自分の部屋に戻りたい。でもスカーレットの監視があるから戻れない。とほほ。
腹減ったと言って逃げようとしたら別室にご飯が用意され、それを食べ終わったらまた扉の前。お茶を飲みたいとかいうたびに、別室に引きずり込まれる。それにずっとスカーレットがついてくるんだよね。あんた、忙しいんじゃないんかい!
スカーレットが魂って言ってるのって、要するに前に扉から吸引したアレだよね? あの時はバトルの真っ最中だったし、扉越しにずぞぞぞって吸引したからか、気持ち悪いとか蠢いてるとか闇とか感じだったけど、もしかしたら魂1個くらいじゃそういうのはないのかも知れん。というか、そんな感じがあればすぐに判るし。それ以前に吸引した時にキモチワル! ってなったと思う。
それに扉への干渉とかの術はもういいんかい。と思ったら、空間魔法があるなら構わないと言われた。Σ(゚Д゚;エーッ! それなら何のために訓練してたのか判らんじゃないか! もしかして嫌がらせか! とは思ったけど……それってアーサーとスカーレットが吸引してる場所が私の中だと思ってたからなんだよね。だからまあ、悪意とかはないって判る。
だがしかし! 訓練とかけっこうキツかったのですけど!?
扉に触れていても多分無駄。と思ったので私は正直にスカーレットに申告した。
「これ、触ってて判るもんではないと思う、のです。扉に触るのは吸引したものの中から探し当ててからでいいのではなかろーかと」
「なるほど……。そうですわね。リディアが空間魔法を自在に操れるようにならなければ、難しいのかも知れません」
いや待て。それは違う。いつまでもその魂とやらと同居? してるつもりはない! 私は私で勝手に探す! 第二のカテキョは要らん! という、私の心の叫びは無視された。まあ、心の中でだけ叫んでたから仕方ないけども!
その日はもう遅いからと釈放……じゃない、解放された。メイプルと一緒に部屋に向かう私の足は重い。
「ねー。探すの無理くね? 私が出先でアレコレ吸引したの見てたよね、メイプル」
「そうですね……」
「いっそ、全部放出してやろうか」
「あの量をですか? 多分、無理ゲーだと思いますけど」
おい、メイプル。余計なとこ私に似るな。というか、自動翻訳機、何してくれてんの! もしかして私にそう聞こえるだけ!? だとすれば他の人の言葉も全部そうなるはずでは!? メイプルだけが残念になってきてるの!?
「あのさー、メイプル。こう言っちゃなんだけど、喋り方おかしくね?」
「あっ、すみません。お嬢様相手だからと気を抜きすぎました!」
「えー、ホントかなあ」
小声で雑談しながら歩く。ついでに出てくるモンスターも2人でさくさく倒す。どうやらメイプルは三人で島の外に出かけたことが、とても楽しかったらしい。トラブルはたくさんあったけども。そこはメイプルも強調してた。さすがテオ。メイプルにもポンコツ認識されてる!
「どちらにしろ、お嬢様が吸引したものを全て放出するのは難しいかと。大木などもかなり吸引されましたよね?」
「あー……森のあれかあ。合成したり畳んだりしたら出せそうだけど。木材とかさー」
「木材なら使い途はいくらでもあるのですが……」
「他にも石とか岩とか草とか色々あったからなあ……」
そんな話をしているうちに私は部屋に辿り着いた。いつものようにメイプルが準備してから、浴室で洗われて部屋に戻る。毎日の風呂は楽しみだけども、今日は疲れたので早く寝させて欲しい! と主張したけど無理だった。何時だと思ってるんだ! 子供が起きてていい時間じゃねえし! ……という、転生前なら当たり前のことがここでは通用しない。この世界には成長ホルモンとかの考え方がないのか、それとも関係ないのかは判らない。今のところは私も影響は感じてないからいいのかな。……ま、いっか! あんまし難しいこと考えても仕方ないし!
それにしても転生前世界日本では子供の寝かしつけってけっこう大変だったんだけど、こっちはそういうのもないのかな。それとも私がすぐに寝てしまって手がかかんないのか。どっちにしろフツーは侍女があやしたりするものではなかろうか。メイプルはおやすみなさいませ、と言ってからすぐに部屋を出て行くんだよね。そこは赤子の時から大して変わってない気がする。たまに熱出したりした時は誰かがついてることもあったけど、私はかなり健康らしくて熱出すだけで済んでるからなあ……。
それに比べてスカーレットは回復する前はかなりの重症だったと聞く。私が吸引してポイ(放出)した後は健康になったけど、一体なんの病だったのは聞いてない。遺伝的なものなのか、それとも別の何かなのか。もしかしたらあの扉が原因なのかも知れないけど、今は平気そうだし……。
そんなことをぐるぐる考えてた私は、いつの間にか眠っていた。