チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
「うーまーいーぞー!!」
ご飯を食べたアーサーの第一声がこれだった。……牛肉以外のご飯を出された時も同じ反応してた気がするな。アーサーは皿に盛られたご飯をフォークで器用に食べながら、目をうるうるさせている。相変わらずウマ飯好きだな、この夫婦。
ちなみに私が作ったおにぎりを食べた、とスカーレットが自慢げに話した時、アーサーがものっすごいショックを受けた顔になった。その顔を見てうっかり笑いそうになったのを必死で我慢したけども。アーサーが泣きそうな顔で私を見たので、私は追加でおにぎりを作ることにした。あつあつのをずっと握ってたからか、アーサーの分を握る時はかなり手が慣れていた。うむ。積み重ね、大事。
私が握ったおにぎりを食べたアーサーが衝撃を受けたように目を見開く。次いでおにぎりを持った手を振り上げる。
「リディア! 最高にうまいぞーー!! やはりリディアは世界一ィィィィーーーー!!」
「わかったから落ち着け、おとうさま」
思わず突っ込みを入れてしまうほどアーサーは感動していた。私の手で握ったおにぎりが小さいからか、両手で大事につまんで食べる様子が何だか可愛いと思えてしまった。同じことを思ったのか、スカーレットがアーサーを見つめて微笑みを浮かべる。いやはや。ご飯で世界は救われるんだよ! やはり!
ご飯が食卓に上るようになってからは、米をどうするかという話になった。……いや、私が増幅して精米した米一升はすぐになくなったんだよね。主に初めて飯を炊いた時にいた連中に食い尽くされて。まあ、一升だからすぐに消えるとは思ってたけどさ。
じゃあ、仕入れ出来るかと米女子コックに訊いたところ、米はかなり離れたところで作ってたから無理だと言われた。大陸は東西にも広いらしく、米女子コックのトコから米を持ってくるのは難しいという。だから急場しのぎで私が吸引からの増幅・合成で精米を放出することになった。それにアシュフォードって基本、自給自足だからね。外から何かを入れるってほぼないんじゃないかな。転移魔法で出入りしてはいるみたいだけど、その辺はよく判んない。
で、あの日から食卓にはご飯がちょいちょい出てくるようになった。いつもじゃないのは、私が先にメニューを訊いて、ご飯かパンか、合う方を出すように頼んでるからだ。って、私、厨房で雇われてるっぽくない? 給金くれよ! 金の使いどころがないから冗談だけども!
「でもって田んぼですよ!」
私は農作業のための服に着替え、農地の端に立っていた。林に近いこの場所が空いていたので、そこに水を引くための水路を作ったりしたのだ。主に農地で働いている使用人が! だけども! 吸引して作ろうと思ったら、そこにいた使用人全員に止められたんだよ! だから仕方ないよね!★
でもって厨房で働いていた米女子コックは米女子農婦にジョブチェンした。本人がどーしても厨房で働きたいって思ってたんなら諦めたけど、田んぼ作るってゆったら自分からジョブチェン希望したのでスカーレットが承諾した、という形になった。もちろんスカーレットは即OKしてくれましたとも。ええ、判ります。ウマ飯スキーですよね。
そして作ったのは水田である! 私は腰に手を当ててふんぞり返ってはっはっは! と笑った。ちょっと後ろにいるメイプルが呆れたのかこっそりため息を吐いたぽいけど、そんなことは知らん。ちなみに今日のメイプルも作業着になってる。さすがにメイド服で私の手伝いは出来ないからなあ。
吸引した種籾は残してあったので、その中からチョイスした数粒くらいを必死で増幅しまくった。遺伝子がどとーかは知らん。私が増幅したモノに何か変なことが起きるなら、どっかで問題が出てるだろう。だから大丈夫! みんな食ったりしてるからね! 私もだし!
……今度実験で外の人間に食わせてみるか……? いや、それはともかく!
「お嬢様、こちらです」
米女子農婦改め、メアリーが田んぼの端を指差す。……うん。幼○戦記のスー准尉かな? 転生前世界日本の劇場版だと准尉だった希ガス。私はメアリーが指差したとこに駆け寄った。綺麗に揃った細い苗がみっちり育ってる。
「これが苗か。ごくり」
「お嬢様! 涎が!」
「あっ、ごめん、つい」
苗は水を張った田んぼとは別の区画で育てられていた。青々しい苗を見た私の口元をメイプルが拭う。転生前は苗って見たことなかったんだよ! 田植えとか関係ないとこで生きてたし! 写真とかでは見たことあったけど、実物と写真では全然違うし。
種まきから苗が育つまではちょっと時間がかかった。大体ひと月くらい。吸引からの合成、放出とかでショートカット出来たかもだけど、苗の実物を見たり触ったりしたことなかったからイメージ出来なかったんだよね。
あと、田んぼに直で種籾を蒔く方法もあるっていうか、こっちの世界ではそっちが主流ぽい。でも私が阻止した。多分だけど、種籾をいきなり蒔くよか、苗を作った方がいいんだと思うんだよ。転生前世界日本の田んぼってそんな感じだったし。あれって何か理由があるんじゃないかと。理由自体は知らんけども。
なので、私はメアリーに何とか説明してみた。するとメアリーがふむふむ、と言って考えこんだ後、やってみますと頷いてくれた。メアリーによるとそっちのが発芽率が高いかも知れない、ということだった。ふむ! よく判らんが頼む! ということで苗を頼んだのだ。
その結果が田んぼの隣にある苗だ! ひゃっはー!!
これから田植えだああ!
……と、はしゃいでいた私が馬鹿でした。田植えは重労働でした。
調子こいてすんませんでした。