チートがチートじゃない世界に転生したらしい 作:よしほ
食事は大事。そう思っていた時期が私にもありました。いえ、現在進行形で大事だと思っている、転生した永遠のアラフィフ主婦の斉藤奈美恵です。ごきげんよう。今まさに、私は食事の問題と対面しています。
豆腐。それは転生前世界日本で私がよく食べていた食材。かなり好きだったというか、いつも冷蔵庫に入れておいたので、好きな時に食べるという感じだった。私が食べる時もあるし、息子娘が食べる時もあった。もちろん豆腐を使った飯を作ったりもしてた。
あ、旦那は豆腐嫌いだったから大丈夫★ そもそも自力で冷蔵庫を開ける時ってビールとかを取る時だけだし。めんどくさいのでビールとかのアルコール用冷蔵庫を別に買ってやった。ははは! 食材とかが入ってる冷蔵庫の中を見て、いちいち文句言われるのが面倒だったからね!
それはともかく。豆腐ですよ。
豆腐って大豆から作るじゃん。豆乳からでもいけるよね? 大豆は飼料にもするらしく、大量にあったので分けてもらったんだよね。で、それを吸引して合成して放出した……んだけど、どうにも上手くいかない。豆乳まではいけるんだけど。
私の吸引からの合成って雑でも問題ない。分量とか無視しても出来るしね。例えば布を吸引して合成すると服を作ったりも出来る。糸とかボタンとかどっから出てきた、と突っ込まれても困る。出来るものは出来るので。
「何で豆腐ができない!」
「お嬢様、さすがにもう、これ以上は」
メイプルが遠慮がちに言いながら、私の橫に置いてある樽を見る。5個の樽が満杯になってる。豆乳だって使い途はあるんだよ!? ただ、そうだね! 私が使い方を覚えてないから教えられないっていうか! 牛乳の代わりに使う、というくらいのふわっとした知識しかない。多分、グラタンとかシチューとかに出来た……はず! パスタとかにも使えるんだと思う。そーいえばラノベとかアニメの異世界飯ので豆乳スープ作ってた気がするな……。分離しないように注意、くらいのセリフしか覚えてないのが悔やまれる!
で。使い切れない豆乳は飲んだりしてるんだけど……使用人総出で消費しようとしても、さすがに毎日毎日豆乳ってのはキツい。というか、私もキツい!
「仕方ない。いったん、デザートにシフトチェンジしよう」
「デザート!? これをデザートに出来るのですか!?」
「メイプル、声でかい」
隣で喚かれて私は耳を押さえた。飯も出来るはずなんだけど、すぐにイメージするのは無理。だとしたら判りやすいものから行こう。私はそう決めて豆乳の入った樽を全部吸引した。
そんな訳で私は食糧管理庫のエミリアを訪ねた。いつものように笑顔で迎えてくれる。最初は転生前の私と同い年くらいだと感じてたけど、ちょっとシワが増えた気がする。私が二歳の時に初めて会ったから、それから五年か。そろそろアラ還のはず……うっ! 私は永遠のアラフィフ!
「リディアお嬢様。こんにちは」
「こんにちは! 今日はちょっと卵を分けて欲しいんだけど! はい、これ、今日の分」
私は倉庫に入って吸引しておいた食材を並べていった。棚のどこに何を置くのかを完全に把握してしまったよ、私。
「卵、でしょうか?」
エミリアがちょっと首を傾げてみせる。あ、そっか。いつも私が某白ポケット的な何かに色々詰めてるからなあ。持ってると思ったのか。今は在庫がないんだよね。……無意識に在庫とか思ってる自分、悲しい。
「そう。今日も鶏舎に行かなかったから」
鶏舎は行ってもすることはあんまりないんだよね。まさか鶏から卵を絞り取るって訳にもいかんし。出来るのはせいぜい、餌を配合する程度。それなら使用人で足りてるから、と遠回しに断られたのだ。
エミリアから卵を分けてもらい、メイプルに先に連絡を入れてもらってから私は厨房に向かった。一応、時間がある時は事前に連絡するようにはしてる。でも焦ってる時や急いでる時は無視する。最初のうちは厨房全体が凍り付いてたし、スティーブンが慌てて走ってきてたけど、今はそこまでじゃない。
「こんにちはー」
「あ! お嬢様、こんにちは! 今日も良い天気ですね!」
爽やかな笑顔でスティーブンが挨拶してくれる。うむ。今日も良い天気。でないと私も外で作業とか出来ないから。
「今日はデザートを作ってみることにしたんだけど」
「デザート!? 新作ですか!?」
目をキラキラさせてコックが寄ってくる。……おい。何を期待しているのか。
「期待されても大したことないと思う。えーと、卵はあるから砂糖くれる? あ、ボウルも欲しい」
私が要求したものが調理台にささっと準備される。地獄を見てきた者達だ面構えが違う、ではなく。ここ最近、ずっと私が色々なものを放出してきたから、慣れちゃってるんだよね。スカーレットも多少は目を瞑ってくれている。……親子そろってウマ飯スキーだからな……。
卵をボウルに割り入れてから混ぜる。ボウルごと卵液を吸引、砂糖も吸引、でもって吸引しておいた豆乳と砂糖を混ぜる。さらに砂糖でカラメルを作って蒸す。この程度は合成で行ける。何しろ某白ポケットってパンも焼けたからね!
「どーん!」
最近はこんな感じで放出するのが癖になってしまった。呪文じゃないんだけど、勢いがね。何となくいるんだよ。放出したのはボウルに入ったプリンだった。上下逆なのは勘弁してくれ。先にカラメルをイメージすれば良かったんだけど、豆乳が気になってたからそっちを先にしてしまった。
「よし、味見!」
「はい!」
待ち構えてたスティーブンが私にスプーンを差し出す。私はボウルの中身をスプーンですくって口に運んだ。お、おおおお!? あっさりなプリンになった! これはいけるのでは!?
「食べてみて! どうかな!?」
私が声を掛けるとコック+メイプルが代わる代わるボウルの中身をすくって食べる。……いや、判るけどさ。餌に群がる鯉かよ、という勢いで食べなくても!
真っ先に顔を上げたスティーブンが親指を立てる。まだスプーンにプリンが残ってるけど!?
「お嬢様、最高です!」
「それ、私が最高なのか、プリンが最高なのか」
「もちろんどちらもです!」
嬉しそうなのは新しいレシピがゲット出来るからだろうなあ。そんなことを思いながら、私はみんなに豆乳プリンの作り方を教えた。