チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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醤油の香りはどうだろう

 豆乳でデザートを作る日が続いた。こっちの世界でも豆乳は飲むこともある。牛乳が苦手な使用人もいて、そういう人は豆乳を飲んだりもしてた。あと、牛乳代わりに紅茶に混ぜたりとか。

 でもやはり、私的には豆腐が欲しいわけですよ! ええ! デザートは美味しいけどね!

 

「そんな訳で、おかあさま。海に行きたいです。具体的には海岸に」

「そんな訳とはどういう訳ですか、リディア。貴女も判っているとは思いますが、外に出ることは出来ませんよ」

「違います! この島の端でいいんです! 海に!」

「断崖絶壁でよければ連れて行って……いえ。自力で行けるようになさい」

 

 スカーレットが良いこと思いついた、みたいな表情をちらりと覗かせて言う。しまったー! 私がまだ転移魔法を使えないのはバレてるんだった!

 

「せめて海水をください」

「海水をどうするのです? リディア。貴女、空間魔法の訓練を避けているのではなくて?」

「うっ」

 

 それを言われると何も返せないのだが! だがしかし、せめて海水はゲットしたいところである!

 

 そう。私は気付いてしまったのだ。豆腐を作るにはにがりが要ると! 私がどーやってもにがりというものが出来ないんだよ! イメージ出来ないからかも知れない。にがり=海から作るモノ、という認識しかないから!

 

 でもそれを逆手に取られ、使用人に「リディアに海水を渡すべからず」とか通達されてしまった。OH...。スカーレット、そこまでしますか!

 

 くそっ。こうなったらおからの使い方を探求してやる。私が知ってるのは卯の花くらいなんだよね。某白ポケットに大量にあるおからを是非使いたい。あ、おからは大豆を絞って豆乳を作った時に余るところ。余るっていうか、残るっていうか? それもきっちり某白ポケットの中に残ってる。

 

 おからで作る卯の花は私の作り方だと醤油を使う。豆乳ならともかく、この世界では醤油はまだ厳しい気がするだよね。味と香りが受け入れられるかどうか……。転生前世界日本は到着すると醤油の香りがする、と言われてるというのをどっかで見た気がする。アレかな。どこぞの国に行くとパクチーの香りがするとか。ちなみに私が東京に行った時はカレーの香りがした。……何でカレーだよ、と思ったけど、手っ取り早く食べられるカレーは人気があるという。その話を聞いた時、なるほど、と納得した。立ち食いそばみたいなもんなのかな?

 

 あっ、うっかり話が逸れた。

 

 スカーレットの執務室を出てから、私はため息を吐いた。やっぱ甘くないなあ。

 

「奥様が仰る通りかと」

「メイプルくらいは私の味方してくれても良くない? こないだのメイド? 侍女? は、私にいちいち何か言ってくるしさあ。面倒なんだよね」

 

 というのも。先日、メイプルが珍しく風邪をひいて休んだのだ。その代わりに来たのは若い女の子だった。若い……えーと、20代かな? 田んぼを見てくれてる米女子と同じくらい。名前はジャスミン。……花かな? そーいえば転生前世界で見たゲーム原作の劇場版の作品はけっこう好きだったな。ジャスミンはあの劇場版に出てきた花だった気がする。

 

 それはともかく。

 

 このジャスミン。何か……こう、よそよそしいというか、おどおどしてるっていうか……何だろう。他人行儀というか。まあ、実際に他人だけどさ。メイプルと違って親しみやすさがないっていうか。なのに私のすることにいちいち口を出してくるんだよ。見た目は可愛い子なんだけどね。性格は合わないかもと思ってる。

 

 数日だけ交代した後、メイプルが戻ってきた時はほっとしたなあ。でも侍女にも休日は必要ということで、近々、複数人の侍女が交代で私につくという話も出ているという。やだよ! 今さら! と、メイプルに吼えたけど、今まで一人だけだったのは私が幼かったからだという。あー……目が離せない時期だし、人見知りとかあると困るからか。理屈は判る。だが感情では納得出来ない!

 

「ジャスミンは良い子ですよ。戦闘力も高いですし」

「私が求めてるのはそこじゃない」

「ですが、お嬢様の護衛は戦闘力が高くないと困ります」

 

 うーん。判るんだけどさ。と、ごねつつ、私は仕方なく空間魔法の訓練場に行った。体育館的なとこに入ると、何人かのメイドが敷いた藁を整えていた。その中にはジャスミンの姿もある。

 

「もしかしなくても私の身近にいる人が、侍女候補とかなの?」

「はい。ちょっとでも長く接することで、お嬢様の緊張を解くという理由でそうなってます」

「なるほど」

 

 慣れという意味なら、いっそのことテオでもいいんじゃなかろーか。男だけども。間が抜けてたりするけど。でもテオは農業従事なんだよなあ……。

 

 そんなことを考えている間にザビエルセンセーが私を呼ぶ。はいはいはい。今日も滅多打ちですね、判ります。仕方なくザビエルのトコに行くと、今日は珍しくザビエルが最初に私をまじまじと見る。

 

「リディア様。ごきげんよう」

「じっとり見るのは何故か。こんにちは、ザビエル」

「いえ。実はわたしの教育方針に問題があるのではないかと思いまして」

「え?」

 

 ザビエルがむーん、と悩む顔になった。

 

「板をイメージして、とわたしは申しましたが……。リディア様には箱がいいかと」

「箱?」

「壁や板は盾のイメージに近いと思いましたので、最初にそう言いましたが……ここまで覚えが悪……いえ、要領が悪……いえ」

「いいよもう! どうせ覚えが悪いですよ!」

 

 何度もザビエルが言い直そうとするので、私はキレて叫んだ。するとごほん、と咳払いをしてザビエルが口を開く。

 

「つまり、リディア様には合っていないのではないかと思います。ですので、イメージするものを変えた方がいいかと」

 

 言い換えてもトゲがある気がするのは何でだろうね。まあいっか。




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