チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

89 / 93
コンテナと鍋

 箱。私がそう言われて最初にイメージしたのは、転生前世界日本のティッシュペーパーの箱だった。ほら。紙の箱の上にビニールのぴらぴらがついてるアレ。この世界にきてから見てないから、ついつい懐かしいものを思い出してしまったらしい。でもティッシュの箱の強度では駄目だろうとすぐに思い直す。

 

「えーと……何の箱だったらいいのか」

 

 私は考えながらついつい口に出してしまった。目の前にいるザビエルが困ったように眉を寄せる。

 

「リディア様は抽象的だと判りにくいですか。そうですね……。イメージするのであれば、木箱などがよろしいかと」

「さりげにディスるなや。木箱ね!」

 

 一言多いザビエルに声を飛ばしてから、私はもやもやと箱を想像した。でも木箱ってやわくね? ちょっと魔法を当てたらすぐに壊れるし。氷とか風とかその他の魔法にも耐えないよ、あれ。入れ物としては優秀だと思うけど、隙間がきっちり塞がってないものに水を入れると漏れるし。そういうのを想像すると、切り貼りみたいなことになるんじゃなかろーか。

 

 あ! そうだ!

 転生前世界にあったコンテナとかどうよ!? 家に置くような小さくて折りたためるようなのじゃなくて、船とかに積むでかいやつ! あれなら硬いし多少のことには耐える気がする!

 

「コンテナ……コンテナ……」

 

 ザビエルに聞こえないくらいの小声で私は呟いた。

 

「こ、んてな、とは何ですか?」

 

 聞こえないくらい、と思ったのに! 何でメイプルは突っ込むかな!?

 

「何でもない何でもない! ぐいぐい来られても食い物じゃない!」

 

 ぐっと顔を寄せてきたメイプルを押しのけながら私は叫んだ。何で私が何か言うと、全部食い物だと思うのか! 確かに私はウマ飯スキーだが、コンテナはさすがに食えない!

 

 とりあえず口に出さないようにすればいいか。コンテナコンテナ……そーいえば、転生前世界で読んだミステリ小説に、コンテナに詰められて殺されかける話が……あ、あれは圧力がどーとかの部屋だっけか。あ、いかん、余計なことを考えちゃ駄目だ。コンテナ……圧力……。

 

「よし! 圧力鍋!」

 

 そう言って放出した私は硬直した。しまったー! 要らん感じで混ざった! うっかり放出した圧力鍋がころん、と私の足元に転がった。やってしまった……。

 

「これは? お嬢様が言った、こんて、な、ですか?」

「これは鍋のように見えますな」

 

 メイプルとザビエルが二人がかりで言う。違うんだよ! 私だってコンテナをイメージしようとしたんだよ! でもうっかり圧力とか考えたら、吸引してたモノを何となく合成しちゃったんだよ!

 

「こ、これは違う! ええと、目に見えない形で……」

 

 私は転がった圧力鍋を拾ってメイプルに手渡して、今度こそ、と意識した。頑張って意識しようとしたからか、最初に魔力のキラキラが見える。私は目を閉じて周りの空気をちょとだけ吸引し、それを畳んで増幅、畳んで増幅を繰り返す。何度か畳む間に硬くしっかりした材質をイメージする。でもって見えないコンテナも一緒にイメージした。よしよしよし! 長い箱型が出来た!

 

「よし! これをどーん!」

 

 イメージしたものを私はその場に放出した。すると、ごんっ! ともの凄い音がして放出したものが飛んだ……気がする。目に見えないから、そんな感じがするってだけ……あ。

 

「ザビエルさん!」

 

 メイプルが駆け出した方を慌てて見た。どうも私が放出したものにザビエルが吹っ飛ばされたらしい。藁に頭から突っ込んでいる。あー……なんかすまん。

 

「リディア様! これは!?」

 

 当たり所が悪かったのか、メイプルに引っ張り出されたザビエルは鼻血を出していた。鼻血を出して声を上げたザビエルに、その場にいた他のメイドがハンカチを渡す。私はそれを呑気に眺めながら端的に答えた。

 

「え。箱だけど」

「誰が箱を飛ばせと」

「放出したら飛んだんだよ! 嫌がらせとかじゃないから!」

 

 ザビエルをぶっ飛ばしたことで多少、すっきりしたことは黙っておこう。ザビエルが立ち上がってメイプルと一緒に私に近づいてくる。その合間にザビエルは空気を叩くような仕草をする。と、何もないとこでコンコン、と音がした。

 

「なるほど。確かに箱が出来ておりますな」

「ほー。出来たんだ」

「ですが、これをリディア様が感知出来ないのは困りますな」

 

 うっ。確かに何があるのか私には判んない。ザビエルが叩いた辺りを、目を細めてじーーーっと見てみる。やっぱり見えない。あ、もしかしたら色付きじゃないから判んないのでは。そう考えた私は、次は色のついたコンテナをイメージしてみた。

 

「ばーん!」

 

 私が色付きコンテナもどきを放出した瞬間、ザビエルがまたぶっ飛ぶ。ガラスみたいに透き通ったピンク色のコンテナもどきは私にも見えた。あ。すまん。色付きコンテナがザビエルを轢いたっぽい。ザビエルが今度は藁の上に倒れていた。メイプルが巻き込まれなくて良かった。

 

「リディア様! 色をつければいいというものではなく!」

「だって色つければ見えるかと思ったんだよ!」

「そういう問題ではありません! えうっ、重い」

 

 ピンクのコンテナもどきはザビエルに載っかってる。しかもかなりでかい。想像したのが船とかのコンテナだったからかな。ザビエルがその下敷きになってるんだけど、空間魔法を使って出られんのか?

 

「こんな、ぐっ、大きな、うっ、もの、を、誰が、作れと!」

「しんどいならしんどいと言えというか、罵倒したいのかどうにかして欲しいのか」

 

 私はもがくザビエルをじーっと見つめつつ、放出したピンクコンテナもどきを吸引した。お。ついでにそこにあった透明なコンテナ的なものも吸引出来たぽい。思ったより大きなものが吸引出来た感じがする。

 

「リディア様! 手加減して頂きたい!」

「(´・ω・`)知らんがな!」

 

 がばっと起きたザビエルの叫びに叫び返す。私だって好きでザビエルを轢いたわけじゃない! 単に放出した先にザビエルがいただけだし! メイプルや他のメイドには害がなかったんだから問題ねーだろ!

 

 お互いキレキレになりながら、私とザビエルはしばらく喚きあった。




https://syosetu.org/novel/413002/
こちらから作品を登録してもらえると嬉しいです
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。