チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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トンカツ祭開催。

 空間魔法の訓練のはずが、何故か厨房に行くことになった。私がうっかりトンカツと口走ったために! いや、美味しいよ!? トンカツ、美味しいけどさ! どーしてこうなったー!!

 

「えー、まず、小麦粉と豆乳と卵をボウルに入れます」

 

 転生前、息子娘が小さかった頃は、小麦粉をつけて卵をつけてパン粉をつけて、と手間をかけて揚げていた。でもどっかで見た……バター? ばったー? ええと、野球じゃない方の名前の汁を作ると楽と知ってからは、私も揚げ物の時はそっちを使うようになった。

 

 調理台の前に立った私は遠い目をしつつも説明をしていた。周囲にいるスティーブン&コックに訊いたら、トンカツそのものを知らなかったんだよね。ついでにメイプルとザビエルも見てる。

 

 そういえばこっちの世界の食卓に出たことないわー、と思いつつ、仕方なく教えることにした。私が吸引からの放出すれば一発で出来るけど、それだとみんなが作れないし。私も食べたいので教えておこう。

 

 卵と豆乳を入れて混ぜてから豆乳と同じくらいの小麦粉を入れる。あんまし混ぜるとアレなので小麦粉のダマが出来ないらいで止める。そこに準備した肉……筋切りと塩コショウはさすがに私はしてない。誰かやれよ! という目で見たら慌ててスティーブンがやってくれた。

 

 豚肉をつけて汁を絡めてから、パン粉をつける。パン粉は余ったフランスパンとか食パンをおろせや、と思ってたのに、パンは全部食ったので在庫がないと言う。仕方ないのでフランスパンを出したら、喜んでおろし金でおろしてくれ……ようとしたが、何故にワサビ用!? あれ、細かすぎない!?

 

 あー、もう! ということで吸引しておいた金属でおろし金を合成して放出した。それまで見たことない形だったらしくて、スティーブン&コックが見物にきた。いいからおろせし! と、睨んだら慌ててパン粉を作ってくれた。まったくもう。

 

 油はラードがたくさんあったのでそれを使うことにした。……ホントは胃がもたれるから植物油がいい、と思ったんだけど、よく考えたら今の私は七歳だった! と気付いたのでラードにした。

 汁につけた肉にパン粉を塗してから、熱した油の温度をはかる。とは言っても温度計はないから、残った汁をちょっと入れてみる。トンカツはちょっと温度高いくらいで揚げるんだよね。大体こんくらい、というのを見て肉を投入。

 

 きつね色に揚がったトンカツを網付きのバットに乗っける。ていうかさ! 何で私が火の前に立ってるのか訊いていい!? 子供にさせることじゃなくね!? トング的なものがあってもさー!!

 

 何はともあれ、トンカツが出来た。

 

「はい、出来た。で、これを切ってくれる? さすがに熱いから! 私は火傷はしたくない!」

「はい!」

 

 元気よく返事をしたのはスティーブンだった。そりゃ、そうだよね! 初の食い物だからシェフが触るよね! 判るけども!

 

 スティーブンは用心深く、でも嬉しそうにトンカツを切った。私が言った通りに縦に切ったら肉汁がじゅわーである。懐かしい! 転生前世界で作ってたわー! 揚げ物って作った後の油の処理がめんどくさいんだけど、息子娘がよく食ってたからなあ。外で食べてもよかったけど、揚げ物は何となく私が作ってた。

 

「おおー! これが! とんかつなるものですか!」

「うむ。ソースをかけて食ってもいいけど、とりまそのまま食えば? あ、熱いからね」

 

 スティーブンがごくりと生唾を飲む音が聞こえる。……そこまでか? と思ったけど、こっちの世界では出回ってないおかずなのかも? もしかしたらないかも?

 

 熱いからかホフホフしながらさくりと食べたスティーブンが、カッ! と目を見開く。おまいはペルソ○3でもプレイしたのか。転生前に私がプレイしたペ○ソナ3はなかなか面白かった。私はア○ギス推し。いや、それはいいんだが!

 

「うまーーーーーーーーーーーーーーい!」

 

 おまいはアーサーか! という反応をしたスティーブンを見てたコック&メイプル・ザビエルの表情が変わる。

 

「わたしが食べたいと申したのですから、わたしが先ですな!」

「は!? 私はお嬢様の侍女ですけど!?」

 

 急にメイプルとザビエルが言い合いを始める。あーもう! 空間魔法はどうしたんだよ! ま、それが原因でトンカツを作ることになったんだけども!

 

「判ったよ! みんなの分を作ればいいんだろ! 作れば!」

 

 そして私は必死でトンカツを揚げまくった。……何でこうなるかなー! スティーブンだけじゃなく、他のコックも食べたいとのたまう。おのれ! 私にも給金を寄越せ!

 

 とか思ってたら、おっとりとした声が聞こえてきた。

 

「あら。美味しそうな香りですわね」

「おっ、おかあさま!?」

「奥様!? どうしてこのようなところに!?」

 

 スティーブンの悲鳴が聞こえる。あ、これまた先触れなしで来たやつだ。私は泣きたくなりながら、スカーレット用のトンカツを揚げることになった。しかも大盤振る舞いの一枚である。




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