チートがチートじゃない世界に転生したらしい   作:よしほ

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海とにがりと

 ようやくスパルタ訓練から逃れた私が起きられるようになって最初にやったこと! それは海に行くことである!

 

「にがりーーー!!」

 

 島の西端にある断崖絶壁の縁に立った私は海に向かって叫んだ。青春のバカヤロー! とか、そういうことを言った方が良かったのかもだけど、今の私の目的は海水だけだ!

 

「お嬢様!! お願いですから、もう少しこちらへ!」

 

 メイプルが悲鳴を上げて私の腕をつかんで引っ張る。空間魔法で飛ぶとかが出来ないメイプルにしてみれば、おじょーさまである私が断崖絶壁の上に突っ立ってることが怖いらしい。OH...。すまんすまん。

 

 今日の私のお供はメイプル&テオだ。メイプルは護衛で、テオはいざという時のためにとつけられた。……なんか初めて島を出た時の三人旅を思い出すなあ。2年くらい前なのに妙に懐かしい気がするのは、訓練が異常にハードだったからだろう! きっと!

 

 そしてここまではテオに転移魔法で連れてきてもらった。私が頑張って出来るようになった転移魔法って、意味なくね!? とは思ったけど、私のはちょっとアレだから、スカーレットに言い返すのは我慢した。訓練追加されたら困るし!

 

「お嬢様はいつも元気っすねー!」

「テオほどじゃないけどな」

 

 メイプルにずるずると引きずられた私は、絶壁の縁からかなり離れたとこに用意された椅子に座らされた。メイプルが流れるようにテーブルの上でお茶を淹れてくれる。ついでにお菓子も出てきた。厨房シェフスティーブンの渾身&力作な菓子だ。それをつまんで私はため息を吐いた。

 

「マカロンなー。これで何度目だよ!」

 

 私は転生前にマカロン作りはずっと失敗してた。とにかく思ったように膨らまないんだよ! 焼けたと思ったらべしょっとなるし! しかも当時の私は若かったから、ネットで別の作り方を探すとか出来なくて、本をいっぱい買うのも難しかった(お高い)から、レシピはひとつしか知らなかった。そのレシピで何度やっても駄目だったんだけど、逆に何度も作ったから使った材料だけは覚えてたんだよね。

 

 だからマカロンの材料を何となくふわっとスティーブンに教えた。分量とかまでは記憶してなかったから、ホントにふわっと。でもこれで新しい菓子が出来る! と燃えたスティーブンが根性で作り上げたのがコレだ。スティーブン、恐ろしい子。何でざっくり材料で出来るんかと。

 

 綺麗に出来たマカロンを見た時は、私もびっくりしたし歓喜して踊り回ったけども! うん、美味しいと思ったよ! アーサーとスカーレットも喜んでたよ! でもな!? 毎回毎回毎回、茶菓子に出されるとくどいんだってば! お子様舌なはずの私ですら、見るとうっぷってなるのに、他の人は何も言わんのかと!

 

「美味しいですよね、マカロン!」

「あ、俺も好きっすよ!」

「はいはいはいはいはい」

 

 テーブルの傍に立ってた二人が挙手してアピールしてくる。私はいつもの流れでマカロンの乗った皿を二人に渡した。……いや。ホントにもう、食べるのキツいんだよ。濃いというか。転生前だったら1個1回で充分な菓子だと思う。

 

「それで? お茶は飲まないの? 二人は」

「俺は持参してるっす!」

 

 キラン! と目を光らせてテオが水筒を見せる。あー……前に水筒作ったなー、そいえば。簡単なヤツだけども。さすがに転生前世界でいうところの超合金……じゃなかった、えーと、魔法瓶? は出来なかった。イメージが甘いからかも知れん。私が思う魔法瓶って中がガラスなんだよね。金属とガラスの組み合わせっていうのがよく判んなかったから出来なかった。ま、仕方ない!

 

 水筒は使用人からのリクエスト(注文)が大量に来たので、一気に作ったことがある。……あー、それも懐かしい記憶だなー(棒)

 

 そんなことを考えてるとメイプルもテオと同じように目を輝かせた。

 

「私も問題ありません。こっそり出がらしを頂きますので」

「言った時点でこっそりしてねえし!」

 

 などと突っ込みつつも、私はほっとしていた。やっと日常が戻ってきた感じ。あ、ちなみにメイプルがついてきてるのは、ジャスミンの特技が暗殺とかだから。メイプルともの凄い言い合いをしたらしいんだけど、スカーレットの一声で今日の侍女はメイプルに決定したという。……ナンダカナー。

 

 三人でのんびりお茶をしてから、私は海水をゲットすることにした。でも崖っぷちに立つとメイプルがそわそわというか……いつでもこっちに引っ張れるという感じで構えるんだよね。この状態で私がいきなり飛んだらどうなるんだろ。それなら転移のがマシか? でも私の転移ってぶっ飛ばし法だから、狙いが定まらないと海にどぼーんってなる……あ。

 

「もしかしてメイプルとテオを連れて飛べばよくない?」

「は!?」

「え? お嬢様って飛行魔法も使えるんっすか。俺はちょっとなら自力でいけるっす!」

 

 メイプルとテオが同時に反応した。うーん。飛びながら海水をすくおうと思ってるから、ちょっとというのは厳しいか? 断崖絶壁にどどーん! と波が当たるのを見下ろしつつ私はむむう、と考えた。テオが帰りに転移魔法を使うのなら、今は魔力はキープしといた方がいいかも。一泊はしていいらしいから、明日に戻ることになるけど、何があるか判んないし。

 

 ん? あれ? 何か忘れてるような希ガス。

 

「お嬢様……その、言いにくいんですけど、吸引魔法でどうにかできませんか?」

「そ・れ・だ!」

 

 私はメイプルをガン見してぺちっと指を鳴らした。……あれ? 何で指パッチンが上手く出来ないんだ。転生前は出来たのに。ちっ。指のサイズが違うからか?

 

 とにかく! メイプルにヒントをもらったので、私は海水を吸引することにした。これなら誰にも迷惑かかんないし! 心配されないからね!




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