ドールマスターヒロシ   作:我島甲太郎

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第37話 ボマーを継ぐ者

 都屋港から読谷ダンジョンモノリスまでの距離は本当に近く、長い坂道を真っ直ぐ登って少し走っただけですぐに着いてしまった。

 10分くらいだからマジで超近いし、普通に自動運転タクシーでよかったと思う。

 

 広い駐車場でタクシー運転手のおじさんに最低運賃を支払い――観光客向けのインバウンド料金で結構高かったが、金持ちだから関係ない――トランクに積んでいた荷物を下ろした俺達は、スマホの地図を頼りに沖縄ダンジョン庁の出張所へと足を運ぶ。

 

 漆黒のダンジョンモノリスを囲う複合施設は沖縄でよく見られる特徴的な赤瓦の屋根を被っており、新興の観光地として力を入れているのがよく分かる。

 

 ただ、ロビー広場に屋根がない場所が多いのが気になるところだ。

 これって台風の時に出入りすると雨風でビショ濡れになるんじゃないか?

 いやまあ、そういう時はみんな探索を休むのかもしれないけどさ。

 

「ハイサイ! 可愛い人形を3体連れた【人形使い】のにーにー! 自分がジモトゥーで約束していた宮古(みやこ)紅亜(くれあ)でーす!」

 

 待ち合わせ場所に指定していた沖縄ダンジョン庁の出張所の前で満面の笑みを浮かべて手を振っていたのは日焼けで浅黒い肌をした中学生くらいの赤髪少女だった。

 

 事前に聞いていた通り、変身ヒーローっぽい見た目をした人形を1体連れている。

 シーサーをモチーフにした感じの光沢がある深い緑色の全身スーツを着ており、顔の部分だけ真っ黒なフルフェイスヘルメットを被っているので素顔は全く見えない。

 

「はいさい、俺が大木土博士(ひろし)だ。平日で学校もあるのに、わざわざ引き取りにきて貰って悪いな」

「いいのいいの、自分は中卒探索者志望だからさー! むしろ、合法的にガッコーを休めて超ラッキー的な?」

 

 弐号がゴムボートの入ったキャリー付き大型プラスチックケースをヒーロー人形に渡した後、俺達は手早くスマホを弄ってジモトゥーで取引の完了を済ませた。

 よしよし、これでかなり身軽になれたな。

 

「ところでクレア殿、そちらの人形はどういった役割をされているのだろうか」

 

 弐号は奇抜な格好のヒーロー人形に興味津々なご様子。

 

「よくぞ聞いてくれました! この子の名前は『琉人(りゅうじん)マブヤー』! うちなーんちゅならみんな知ってるご当地ヒーローさー! ヒロシにーにー、凄い再現度だと思わない? この衣装もね、【モテルハイビスカス】の先輩に作って貰ったんだよ! でーじカッコいいでしょー!」

「そ、そうなのか……」

 

 ダンジョンでの役割を聞いているのに人形のモデルを答えたぞ。

 どうにも彼女は天然キャラっぽい。

 南国の陽気な風土がそうさせているのだろうか。

 

「ふふーん、ないちゃーは全然知らないよねー。ホテルのフロントに言ったらDVDを貸して貰えるから、良かったら見てみてねー!」

「それはいいことを聞いたな。面白かったら土産に買って帰るとしよう」

「やったー、布教活動大成功やっさー!」

 

 紅亜(くれあ)はよっぽどこのご当地ヒーローが好きなのだろう。

 花の咲いたような笑顔で嬉しそうにピースピースしていた。

 

「んじゃ、俺は用事があるんでこの辺で」

「じょーとーなゴムボートくれてありがと、ヒロシにーにー! 沖縄観光、いっぱい楽しんでってねー!」

「おう、めっちゃ楽しんでいくわ」

 

 元気な日焼けJCと別れた俺は、沖縄ダンジョン庁の出張所の中へと入った。

 やっぱり地方だけあって、役所の規模は神奈川や東京とは比べ物にならないな。

 とはいえ室内にしっかりと冷房が効いているのは非常にありがたいことである。

 

「びっくりするほどやかましいむすめだったのだ」

「そう言ってやるなよ、参号。さて、オークションの取引相手はもうきているかな?」

 

 ダンジョン庁オークションの引き渡し窓口に行ってみるも、職員の他に人の姿はなし。

 

「少し早かったか」

「仕方ありません。あちらで観光パンフレットでも見ながらゆっくり待ちましょう、マスター」

「ああ、そうしよう」

 

 俺達は窓口の職員に少し話をした後、目の前の長椅子で座って待つことにした。

 

―――――

 

「……こないな」

「こないですね」

「むむむ、遅刻など許せん!」

 

 約束の時間はとっくのとうに過ぎているし、いい加減腹も減ってきた。

 待たせたのは相手の方だし、先に昼飯でも食いに行こうかな。

 なんて考えていたその時、バタバタとした足音が聞こえてきた。

 

「ごめんなさい、遅れちゃいましたっ! あたしが出品者の山城(やましろ)七海(ななみ)ですっ!」

 

 急いで走ってきたのか、息切れした様子の女の子はオーバーな感じで頭を下げた。

 見た目は20代前半くらいで、クリーム色の髪を首筋まで伸ばしている。

 暑い地方にしてもかなり薄着な短いスカート姿で腰に短杖も差しているので、恐らく魔法職なのだろう。

 

「予定を1時間も過ぎていますが、どうして遅刻されたのですか?」

 

 壱号に質問されると、指先をもじもじさせた七海は眉を下げて困り顔になった。

 

「午前中に野良で組んでいた相手がお腹の弱い【血操士】で、何度も何度も移動を中断されちゃって……」

「あー、そりゃ運が悪かったな」

 

 約束の時間になるまで野良パーティーでレベリングでもしていたのだろう。

 どうしようもない地雷を引くとこうだから困る。

 ただただ精神汚染を受けるだけで利益しかない卑弥呼はまだマシな方だ。

 

「ひとまず先に取引だけ済ませてしまおう。積もる話はそれからってことで」

「はいっ! 今日はよろしくお願いしますっ!」

 

 かりゆしウェアを着ている窓口の職員――お昼休憩でさっきの人とは交代していた――にお願いして、別室で落札した装備結晶の受け渡しを行う。

 

 今回ダンジョン庁オークションで落札したのは読谷ダンジョン60層ボス産の【受け流し】【範囲縮小】付き珊瑚海蛇の蛇腹鞭、お値段は驚きの2億5000万円なり。

 

 【受け流し】は盾役でも火力役でも便利に使える強スキルなのでハズレスキル付きのマイナー武器でも最後の最後まで競り合いになったが、ラストの大幅引き上げでなんとか競り勝った感じだ。

 それでもどうにか払えるくらいには、俺も深層での狩りで稼いでいるってこと。

 

 骨工船より上の51層以降になると雑魚モンスターから落ちるアイテム結晶のレアリティが★1から★2に上がるので、スキルなしの装備結晶でも強化用素材として相応の値が付くのである。

 

「待ちくたびれて腹が減ったわ。なあ七海、詫びと言っちゃなんだが地元の美味い飯屋とかお勧めの観光地を紹介してくれないか?」

「もちろんいいよっ! あたしもお昼まだだし、一緒に食べに行こっ!」

「んじゃ、よろしく頼んだぜ」

 

 というわけで、七海お勧めの飲食店に連れて行って貰うことにした。

 まず初めに自動運転タクシーに乗ってやってきたのは古風な沖縄そば屋だ。

 お昼の時間帯でもすぐに入れた感じ、地元民しか知らない穴場って感じがする。

 

「沖縄と言ったら沖縄そば! 地元ブランドの琉美豚を贅沢に使ったソーキそばは、絶対に食べなきゃ帰れないよっ!」

「うまいうまい」

 

 次郎系とはまた違ったワシワシとした食感の極太縮れ麵が、かつお出汁の効いたあっさりスープをがっちり絡め取って素晴らしいハーモニーを奏でている。

 

 大きな骨付きソーキ肉はなんと三枚も乗っていて、箸で持ち上げると簡単に骨から剝がれるほどの柔らかさがあり、それでいてしっかりと味が染みていた。

 なるほど、これがあるからスープがあっさりしていても大丈夫なのか。

 

 少し飽きてきたら島とうがらしの泡盛漬け(コーレーグース)で味変も可。

 ちなみに常連の七海はゴーヤーチャンプルー定食を食べていた。

 

 火傷も気にせず夢中になって麺を手繰(たぐ)っているうちに気付けばどんぶり一杯、スープまで完飲ご馳走様。

 

「まだまだ行くよっ! モック? ノンノン、沖縄のハンバーガーはA&D! ルートビアは店内お代わり自由の飲み放題!」

「うまいうまい」

 

 A&Dハンバーガーはモックなどとは比べ物にならないほどにボリューミーだ。

 バンズにはビーフパティにトマト、フリルレタス、オニオンフライ……そして濃厚なクリームチーズにアクセントの黒糖ペッパーポークまで挟まれている。

 

 珍しいのはくるくるポテトが巻かれたカーリーフライにオニオンリングだろうか。

 揚げ物の油でギトギトになった口の中を、ジョッキ一杯に入った湿布味とも称される甘ったるい炭酸飲料のルートビアで洗い流して更に食を進める。

 

 最後は少し下品にゲップをして、ご馳走様でした。

 

「いやー、いい食べっぷり! でもでも、まだイケるよね?」

「?」

 

 七海に手を引かれ、次にやってきたのは三色アイスの看板が目印のアイスクリーム屋さんだった。

 

「サーディーワンなんて邪道! うちなーはみんなブルーディール! ご当地好きなら紅芋一択、なーんて思うけど、あたしの一押しはウベ (紅山芋)! 騙されたと思って食べてみて?」

「うまいうまい……」

 

 確かに美味しいけどさ……。

 いい加減、食べ過ぎで腹の中がパンパンだ。

 このままのペースじゃ本当に【力士】になっちゃうよ。

 

「冷たくて美味しー。男の人と一緒だともっと美味しく感じる、みたいな?」

「なぁ……まさかとは思うけど、この村には飯屋しかないのか?」

「はぅあ!?」

 

 後で読谷の観光地を案内してくれるって約束したじゃん。

 今晩の宿は残波のロイヤルなホテルを取ってあるけどさ、このままだと飯を食っているだけで日が暮れるぞ。

 

「だってさー。20年前にダンジョンモノリスが返還されるまで、ここは米軍基地以外なんにもない田舎だったんだよ? せいぜいあるのはサトウキビ畑とか紅芋畑とかそれくらいだって、あたしのおばーも言ってたもん」

「でもほら、ダンジョン庁のロビーに置かれていた観光パンフレットには『座喜味城跡』とか『残波岬』とか色々書いてあったと思うぞ」

「あんなショボいところ、一見さんの観光客しか行かないよっ! それくらい何もなくてつまらない場所だって、地元に住んでるうちなーんちゅは小学生の時から知ってるんだからっ!」

「俺がその一見さんの観光客なんだけど……」

「それだとあたしが楽しくないっ!」

「いつから七海が楽しむのが目的になったんだ?」

 

 七海はこの短時間の間にすっかり見慣れた手癖で指先をもじもじさせた。

 

「あのね……あたし今度、内地に引っ越そうかなって考えてたの。だからないちゃーのヒロシさんと仲良くなりたいなって思って。駄目だった?」

「別に駄目じゃないが、どうして引っ越そうと考えたんだ? 地元のダンジョンであれだけ稼いでるんだから、わざわざ本土まで出る必要もないだろう」

 

 まだまだ若い23歳でレベル65もある【精霊使い】なら探索者クランからの引く手も数多だろうに、なぜ彼女は一人で上京しようなんて考えたのだろうね。

 

「だってあたし、所属してたクランをいきなり追放されちゃったんだもん。他に面接受けに行っても【精霊使い】だから駄目の一点張りで理由一つ教えてくれない。もっともっとレベルを上げて強い探索者になりたいのに、みんな意地悪だよ……」

 

 鼻声になった彼女の泣き言を聞いても、俺の心は微動だにしなかった。

 ま、職業を聞いた時点でおおよそ事情は察していたから何も心配することはない。

 

「なあ七海……。少し二人きりで話したいことがあるんだが、どこか静かで見晴らしのいい場所を知らないか?」

 

 何か言いたげな人形達が余計なことを口走る前に送還した俺がそう告げると、七海は僅かに溢れた涙を指先で拭ってこくりと頷いた。

 

「丁度いいところ知ってるから、案内するね」

 

 それから自動運転タクシーに乗ってやってきたのは、都屋港から少し離れたところにある小さな砂浜と隣接したユーバンタ公園という場所だった。

 

 普段は地元民しか利用していないのだろう、5mほどの高低差がある高台から見下ろした芝生の公園には、真っ昼間の炎天下にも関わらず元気そうにゲートボールに勤しむジジババの姿しか見えない。

 

「狭いけど綺麗なビーチもあるし、いいところじゃん。泳ぐやつとかいないのか?」

「ここ、すぐ隣に下水処理場があるから……」

「あ、本当だ」

 

 彼女が指差した先には赤瓦の屋根が見えており、敷地の入り口の門には「楚辺浄化センター」と書かれた表札が貼ってあった。

 いくら処理されて綺麗になっているからって、気分的には嫌だよな。

 

 高台の一角には身の丈ほどの大きさがある石碑が設置されていて、そこには「艦砲ぬ喰ぇー残さー之碑」という文字が刻まれている。

 

 そのすぐ隣には歌詞が書かれた横長の石碑と歌が聴けるボタンがあったので、試しに押してみたら設置されてあったスピーカーからそれっぽい民謡が流れた。

 曲が気になる人は石碑の文字をググったらすぐに動画が出てくると思うよ。

 

 俺が観光気分でそんなことをしている間、七海は歌詞の書かれた石碑の裏側にあった崖際の落下防止柵へ両肘を預けて、無数の艦砲射撃と人形爆弾の【自爆】で破壊された痕跡の色濃く残る岩礁を眺めていた。

 

「ここね、アメリカとの戦争があった時に【ボマー】っていう二人組の探索者が守っていたんだって。大きな戦艦が沢山きて軍人さんもみんな逃げたのに、その人達は二人だけでここに残ってダンジョンの中に避難できない子供達を守ってくれたって、あたしのひいおばーとひいおじーが言ってたの」

 

 あの自己中なマサ爺が赤紙を送ってきた軍の命令など最初から聞くはずもなく、だからこそ二人は無名の志願兵として沖縄に渡り、自らの意思で決めた場所だけを守り通した。

 

 一騎当千と(うた)われた【剣聖】柳生(やぎゅう)宗盛(むねもり)の召喚した10体の人骨が大日本帝国陸軍の主力部隊とともに屍山血河を築いて糸満ダンジョンを死守したのとはまるで対照的だ。

 

「だからね、あたしも【ボマー】みたいな凄い探索者になりたくていっぱいいっぱい努力した。でも、みんなあたしのことを認めてくれないの。こうなったらもう、住み慣れた故郷を離れて内地に行くしかないじゃん……」

「行ったら死ぬぞ」

「あたしは絶対に死なない。もっともっと強くなって、100層攻略を目指す【クレセントムーン】に加入する。そうしたら、きっとみんなも認めて――」

「それだけはやめろ!」

 

 七海はこちらに振り返り、キッと俺の顔を睨み付けてきた。

 

「ないちゃーの貴方にあたしの何が分かるっていうの!? ねえ、答えてよ!!!」

 

 それは胸の奥から湧き出した黒い感情の乗った、悲痛な心の叫びだった。

 あーもうヒスるなよ、だから静かな場所に行きたいって言ったんじゃん。

 

「あのなぁ、どうして攻略クランでもない【モテルハイビスカス】の幹部連中がこぞってお前をクランから追い出したと思う?」

「それは、だって……みんなあたしのことが嫌いだから……」

「七海を想ってのことだ。今の日本は高レベルの【精霊使い】が長生きできる環境じゃない。なぜなら【精霊使い】の【属性付与】こそが、黄金大蛇の第三形態を打ち破ることのできる唯一の鍵なんだからな」

「え……?」

「よく考えてみろ、ここはアメリカのお膝元だぞ。七海が今生きていられているのは、ただ単純にデッドラインをギリギリで越えていないからに他ならない。いいか、よく聞け。お前は70層を越えた時点で、CIAの手によって事故死(・・・)することが最初から決まっているんだ!」

 

 自身の置かれた状況をようやく理解した七海は顔色を変えて狼狽(うろた)えた。

 

「なんで、なんでそんなこと……」

「それは俺が【ボマー】の弟子だからさ。【人形召喚】弐号。ほら、こいつの着ている鎧に本当に見覚えはないのか?」

 

 七海は仁王の鎧をジーっと見つめた後、ハッとした様子でスマホを取り出す。

 間もなく彼女が見つけたサイトに載っていた白黒写真には、シャドウという名の兜で顔を隠した全身鎧の人形が与謝乃晶子みたいな髪型をした若かりし都子(みやこ)とともに写っていた。

 

「うそ、本当に? レプリカとかじゃなくて?」

「マスターの言葉は嘘ではない。私は確かに、亡くなる前日の都子(みやこ)殿からこの神器を授けられたのだ」

「そっか、本物の【ボマー】に会ったことあるんだ。(うらや)ましいな……」

 

 俺は先ほどの七海と同じように柵に両肘を預けて、白波の打ち寄せる岩礁を見渡した。

 照り付ける太陽の暑さも、爽やかな海風が多少なりとも中和してくれる。

 

「いい海だ。マサ爺と都子(みやこ)さんは、きっとこの景色を守りたかったんだな……」

 

 俺に倣ったのか、七海も再び柵へと両肘を預けて海を眺めた。

 大事な話は終わったので、今更ながら壱号と参号も召喚しておく。

 

「やっとしょうかんしてくれたのだ。あるじだけいつもずるいぞ」

「ズルくなんてないさ。参号、また海に落っこちるなよ」

「私がきちんと見ておきますから安心してください、マスター」

「イチゴ、それはまるで私が頼りないみたいではないか!」

「実際頼りないだろ。もう昨日のことを忘れたのか?」

「くっ……!」

 

 七海は涙で赤く腫れた目元を指先で(こす)ってクスクスと笑った。

 

「ヒロシさんって、面白い人だね」

「よく言われるよ」

「ねえ、あたしにも【ボマー】のことを教えて欲しいな。実際、どんな人達だったの?」

「んじゃ、俺が最初にマサ爺と知り合った時のことから話すか。あれは去年の秋、地元の健康増進センターで日課の筋トレに励んでいた俺に、見るからに性格の悪そうな顔をした白髪のジジイが声を掛けてきたんだ。そいつ、最初になんて言ったと思う? 『坊主、ジムに通う金もないのか? 可哀想じゃのぉーw』だぜ――」

 

 こうして俺と山城七海はフレンドになった。

 

 これは後日【情報共有】で聞いた話だが、彼女は元いた探索者クランの幹部とじっくり話し合って仲直りをしたのだという。

 

 地元の婚活女子が集まった相互扶助クラン【モテルハイビスカス】に復帰した今は「琉人(りゅうじん)マブヤー」好きのJC【人形使い】宮古(みやこ)紅亜(くれあ)とペアを組んで、新生【ボマー】コンビとして密かに牙を磨いているらしい。

 

 いずれは二人が大手を振って活動できるようになる日がきたらいいんだけどな。

 それにはまだ、少しばかりの時間が必要なようだ。

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