1 0 0 万 回 死 ん だ 馬 鹿 作:亜人の元
ある日俺は一度死んで蘇り………俺は異世界転生した、そして所謂スタータースキルとして何度死んでも蘇る力を手に入れたらしい。
その保証を手に入れたのは、俺がこの森の中で手に持っているいかにも某ミスタービデオゲームが食ってそうなキノコを食べてのた打ち回って死んでからだ。
いやぁ、前世では近所のスーパーで投げ売りされていた犬用ジャーキーを「まぁ肉は肉だろ」という謎の自信で焼いて食ったら意識が遠のいて……目覚めたらこんな森の奥だとは災難だ。
おまけに目が覚めたらいつの間にか森のなかにほうり出されて、お腹が減って仕方がなくその辺に生えているキノコを食べてみたらそれが毒キノコだったなんて……
いや、正確に言えば、食べる前から「これ毒キノコじゃないか?」という予感はあった。
傘が鮮やかな赤色で、白いぶつぶつがついていて、なんか柄の部分がひらひらしている。どこからどう見ても「食べるな」という造形をしていた。
「まぁでもいけるだろぉ!」
俺の頭のなかのそのひと言で俺はそのキノコを食べた。
そしたら一口かじった瞬間、思いのほか美味かったのが運の尽きだった。旨味がじゅわっと口の中に広がって、「あ、これいける」な、と思わず笑ってしまったくらいだ。
腹の底から何かが逆流してくる感覚がしたのは、それから森を抜けようとキノコ片手に歩いてしばらく経ってからだ。
ある瞬間から視界が真っ赤になった。
痛い。めちゃくちゃ痛い。あと臭い。なんか臭い。なんの臭いかは分からないが、とにかく臭い、まるで内臓から腐った卵の匂いが響くみたいだ。
俺は落ち葉の上で一人、情けなくのた打ち回った。手足がしびれて、頭がぐるぐるして、それでもキノコだけはしっかり握ったまま離さなかった。なんとなく、手放したくなかった。美味かったから。
──前にも経験した感覚……犬用ジャーキーを食って経験した感覚………これが死か、とか思ってカッコつけてたら本当に死んだ。
でも違うのはここからだ。
気づいたら同じ場所で目覚めていた。
さっきまで全身を貫いていた激痛はどこへやら、体はなんともない。落ち葉の上に大の字になって空を見上げると、木々の隙間から鈍い灰色の空が見えた。
鳥の声がする。風が吹く。静かだ。
……あ、もしかして俺、死んだのか?ここは天国か?にしてはあまりにも代わり映えがなさすぎる気がする。か
「いやあ……もしかして異世界転生した先で異世界転生とか?……あるいは死に戻りってやつか?……勘弁してよぉ……」
しかし、そんな事をつぶやきながら手元を見るとキノコが一口かじられたままの状態で残っている。
死に戻りなら、このキノコも消えていてもよさそうなものだが……
いや待て、俺が転生する前に読んでいたラノベだと「死に戻り」ってやつは死ぬ前の時点まで巻き戻るやつだったはずだ。でもこれは巻き戻っていない。キノコはかじられたままだし、俺の腹もなんとなく膨れている気がする。
じゃあ、単純に死んで蘇った、ということか。
まぁ結果的に腹は膨れたし、生き返れたし、結果オーライかなとも思う。キノコ自体は美味かったし。
ただ、次は変なキノコは食わないようにしよう。あの痛みはちょっとごめんだ。
俺は立ち上がって、膝についた土を払いながら辺りを見回した。
森だ。どこまで行っても森だ。木と木と木と、あとは木。薄暗くて湿っぽくて、足元は苔と落ち葉でぐちゃぐちゃしている。遠くで何かの獣が鳴いた気がして、俺は反射的に反対方向へ歩き出した。
困った。こんな森のなかで一人でいたらあと何回死ぬか分からない。
しかし、蘇る力があるというのは強い。何回死んでもいいなら、ある意味最強じゃないか。死ぬのは痛いが。めちゃくちゃ痛いが。まぁそこは慣れるだろう。行けるいける!!
俺は森の中を歩きながら考えにふける。
まず、ここがどこなのかが分からない。異世界転生したっぽい雰囲気はある。なんかそういう感じがする。根拠はないが、なんとなく現代日本じゃない気がする。
木の種類が違う気がするし、空の色がちょっと違う気がするし、あとさっきから鳥の声が聞き慣れない。もっとスズメみたいなピヨピヨって声とか、何の鳥か知らないけどホーホー鳴く鳥とかの声がしない。ピギャーって感じての鳥の声しかしない。
次に、俺には金も水も食料も何もない。あるのは手元の毒キノコ一個だけだ……さすがに喉が渇いてきた。
歩いていると、しばらくして木々の隙間から光が差し込んでいる方向が見えた。開けた場所があるらしい。俺はそちらへ向かって足を速めた。
開けた先には、小さな池があった。
透明とは言い難い、なんとなく濁った感じの水が静かにたたえられている。周りには見たことのない草が生えていて、池の端っこにはでかいカエルみたいなやつがじっとしていた。
カエルにしては目が三つある気がしたが、まぁ異世界だしそういうこともあるだろう。それより喉が渇いた。
「……まぁ水は水だろ」
俺はしゃがんで、池の水を両手ですくった。近くで見ると更に濁っている気がしたが、まぁそこは気にしない方向で。なんか細かい粒子みたいなやつが漂っているのも見なかったことにする。そんな事よりのど渇いた。
そうして俺は水に一口つける……妙に冷たくひんやりしていて美味い。だが、なんか気持ちなんか土の味がする。でも水だ。水であることは間違いない。……はずだ。
「……なんだ、全然いける」
二口、三口と飲み進めたところで、なんか胃のあたりがじわじわと熱くなってきた。さっきのキノコと違う種類の嫌な感じだ。じわじわ、じわじわ……あ、これもだめなやつだなとなんとなく察せる。
気づいた時にはもう遅かった。膝から力が抜けて、俺はそのまま池のふちに顔から突っ込んだ。地面に倒れる直前、三つ目のカエルと目が合った気がした。カエルの目が、なんか「またか」という目をしていた気がした。
そして俺は二度目の死を迎えた……らしい。
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魔女エニスは森のなかに一軒家を持つ魔法の研究家だ。このあたりの森には魔力を持つ素材がわんさか育っている。
普通に食えば人間にとっては毒ばかりだが………その辺にあるものを拾い食いするバカはいやしないので問題はない。
この日もエニスは近くの水のほとりで、三ツ目カエルと呼ばれる目が3つあるカエルを捕獲して魔法の素材にしてしまおうとしていたのだが………
今宵は、すこし勝手が違った。
「……は……?」
池のほとりで一人の少年が倒れていたのだ。普段誰も近づかないような池のほとりで、人が一人倒れていた……あまりにも想定外な状況にエニスを目を見開く。
「は、は、は、は、ちょっ!?えぇっ!?」
思わず倒れた彼に駆け寄り少年の脈を確認しようと首に触れて、手を止めた。
脈がある。
ある、というか、むしろ元気にどくどく打っている。死体のくせに。
完全に死体の顔して地面に転がっているくせに、心臓だけがやたら元気だ……いや、止まっていたのが再び元気に動き始めたと言うべきか?まるで逆再生の早回しのように。
エニスはもう一度、少年の全身を観察した。外傷はない。呼吸はある。脈もある。気絶している。そしてキノコを握っている。そして池のふちに倒れている。
恐らくは野垂れ死にだろうが……このキノコはヤーヴァと呼ばれるキノコで一口食べれば命に関わるどころか人舐めであの世行きの猛毒だ。
その分純度の高い魔法の素材になるのだが……まさか、これを食べたというのか?この明らかにヤバい見た目のキノコを?
「……え……えぇ……」
何が何やら訳が分からず困惑気味な魔女が目を細めれば……倒れていた青年がガバっと起き上がる。
「うおっ!?」
「うわぁぁぁぁぁっ!?」
死人が飛び起きるというホラーすぎる現象を目の当たりにした魔女は驚き叫び、大きく少年から距離を取る。
少年は軽く頭を振るうと辺りを軽く見回し……エニスをその眼にとらえる。すると、小首を傾げて問いかける。
「……誰だお前!?」
「あんたが誰だ!?」
改めて……これは異世界転生して謎の蘇生スキルを貰った一人の少年が、100万回位死んでは生き返りゾンビアタックを繰り返す事になるバカの物語である。