メルトリリス(偽)、呪術の世界に降り立つ   作:ひのき

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五条先生って、なんで津美紀にかけられた呪いを解析できなかったのでしょうか。
①六眼別にそんなに万能じゃない説。
②羂索がバレないように頑張った説。

わからんくてこの話書くの苦労しました……


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 特級になったことで、煩わしい声や面倒くさい人たちからの干渉がかなり減った。

 その理由は怖がられてるからっぽいけど。

 でも、面倒は減ったからいいかな。

 

 上層部も今のところは変なこととかはしてこないし、ビビらせた甲斐があるのかも。

 最近は一級呪霊が複数出るような高難易度の任務とか、危険な任務がめちゃくちゃ私に回ってくるようになって、さらにその任務自体の数も休みの日がほとんどないってくらいに激増した。

 忙しいけど、呪霊を多く倒せるのはその分多くの人を助けるということでもある。

 さらにはドレインの機会も多くなるし。

 

 上層部もちゃんと仕事してくれてるんだ、って感心したし少し見直してしまった。

 って。

 五条さんに話したら爆笑された。

 それ多分桜への嫌がらせだよ、と。どうやら上層部の嫌がらせだったらしい。

 なんか、微妙な気持ちになりました。

 

 秤君と綺羅羅、パンダはお祝いをしてくれた。

 夜蛾さんも複雑そうではあったけど一応お祝いしてくれた。

 

 あと、なぜか東堂君がわざわざ東京にやってきてお祝いしてくれた。

 意味わかんない。

 私と東堂君ってそんな仲だったっけ。

 宿敵ってなに。

 相変わらず何言ってるのかわけわからなくて怖いし、会うの二回目なのに妙に馴れ馴れしくしてくるし、かと思えば急に殴りかかってくるし。

 こわい。

 ほんとやだ。

 ボロ雑巾になるまで蹴ってから京都に出荷した。

 

 と、そんなこんながありつつ。

 

 四月。

 私が高専に入学して一年が経ち、無事二年生に進級することができた。

 パンダを含めて新一年生が四人入学。

 五条さんは私たちの学年の担任を離れて、新入生たちを見ることになったのでお別れだ。

 あの人、一年生担当なのかな。

 

 私は忙しく動き回ってるので、まだ新一年生には会ってないんだけど。パンダもいることだし、早く後輩たちに会ってみたいなって思う。

 ちなみに、どうやら新一年生の中に一人、私に続く新しい特級術師が入ってきたらしい。

 その人は呪術に触れたことない一般出身で、等級が最初から特級スタートなんだって。

 五条さんが教えてくれた。

 ???

 ちょっと言ってる意味がよくわからないので、多分、五条さんのいつもの冗談だと思う。

 私を驚かせるならもっと現実的な冗談言えば良いのに。

 

 そんな、二年生になってすぐのある日のことだった。

 珍しい人から突然の連絡があった。

 相手は津美紀ちゃんの弟の伏黒恵君。その連絡の内容は簡潔に、『津美紀が呪われた』――――と。

 

 

 

 

 

 

 恵君からの連絡があって、私は任務を中断してすぐに津美紀ちゃんの元へ向かった。

 病院の一室。

 入ると、そこにはベッドの上で寝たきりになっている津美紀ちゃんと、恵君がいた。

 

「恵君」

 

「…………裏月さん。すみません。忙しいことは知っていましたが、津美紀と仲が良いあなたには知らせるべきかと思いまして」

 

「ううん。私は」

 

 憔悴した様子の恵君。

 なんて声をかければいいのか。いや、どんな声をかけても今の彼には慰めにならないだろう。

 恵君は不良で、津美紀ちゃんとよく衝突していた。でも、その本心は昔から変わってないはず。姉思いの、ひねくれてるけど優しい弟だ。

 たった一人の大切な家族が寝たきりになって、憔悴しきったその様子に心が痛む。

 

 私は彼の横に立って、眠る津美紀ちゃんを見た。

 

「津美紀ちゃん……」

 

 静かに眠っていた。

 普段の明るく、優しい笑顔はそこにはなく、ただ静かに目をつぶっていた。

 その額には見たことのない印が現れていた。

 

 津美紀ちゃんとは、私が高専に入学して任務で忙しくなってからは昔ほどの頻度で遊べていなかった。

 でも、月に一度くらいは時間を作って一緒にお出かけしたりしていた。

 幼なじみで、今では親友と言ってもいい。

 そのくらいの仲良しな女の子だ。

 

 二週間ほど前も、任務の間に時間を作って遊んだ。

 その時は明るく笑っていたのに。

 

 なんでこんなことに。

 

「恵君、何があったのですか?」

 

「わかりません。ある日急に、津美紀はこの状態になっていました。誰が呪ったのか、それが呪詛師なのか呪霊なのか。原因が呪いであること以外は何も」

 

 原因不明の呪い。

 

 ただ、命に別状はないみたい。今こうしている間も津美紀ちゃんの心臓は規則的に動いている。

 呪いが解呪できれば。

 そうすれば津美紀ちゃんは目を覚ますかもしれない。

 でも、こういう類の呪いは簡単に解呪できるものではない。一番手っ取り早いのは、それをかけた相手を見つけだし解呪させること。

 もしくは、その相手を殺してしまうこと。

 

 何にせよ、呪いをかけた相手がわからないのなら現状、呪いの解呪方法もわからないし解呪は難しい。

 

「このこと、五条さんには」

 

「…………」

 

 恵君が嫌そうな顔をする。

 

 私はそんな彼の反応に苦笑してしまう。いやまあ、気持ちはわかるよ。

 

「あはは…………でも、呪いのことなら五条さんの目で見てもらうのが一番わかると思うんです」

 

「…………」

 

「さ、さすがに五条さんもこの状況なら空気読むと思うので大丈夫ですよ。病院ですし」

 

「…………呼びます」

 

 しぶしぶとスマホを取り出す恵君にホッとする。

 

 ――で。

 五条さんが病室にやってきた。

 

 そして、目隠しを外して六眼で寝たきりになっている津美紀ちゃんの状態を見て、一言。

 

「――うん。わかんない」

 

「お帰りはあちらです」

 

「ひど、呼んだのはそっちじゃん!」

 

 恵君が冷たい目で五条さんを見る。

 

「何のための六眼ですか」

 

「別にさあ、六眼は何でもかんでも万能ってわけじゃないんだよね。呪いがかかってるのはわかるし、何者かの呪力が津美紀に何かしてるのはわかるよ。でも、それが具体的に何をどうしているのかはわからない」

 

 五条さんは肩をすくめた。

 

「でも、それは別に六眼じゃなくてもわかることでしょ?」

 

「役立たずですね」

 

 恵君が苛立った様子で言い放つ。

 そもそも五条さんを呼んだのは私たちだから、そんな風に言うのはよくないんだけど。

 でも、今の恵君のことを考えれば無理はない。

 

 これは五条さん呼んだの失敗だったかな。

 私は少し後悔する。

 

「な、何かわかりませんか? 六眼が万能じゃなくても、私たちよりもわかることは多いはずです」

 

「う〜ん。そうだね…………」

 

 五条さんは少し考えて。

 

「強いて言うなら。複雑に呪力が絡み合って、呪いをかけていることかな。シンプルな術なら六眼で見れば簡単に解析できるんだけどね。ほら、配線コードがぐちゃぐちゃだと何がどうなってるかわからないでしょ」

 

「複雑に……」

 

「それだけ強力な呪いなのか。複数の呪いがかけられてるのか。あるいは()()()()()()()()()()()()

 

「…………六眼で見られることを想定して?」

 

「その可能性はあるね。無差別に呪ったんじゃなくてわざわざ津美紀を狙ったのだとしたら、僕との関係を知っていれば六眼で見られることはわかるでしょ」

 

「…………」

 

「まあ、あくまで可能性だよ。強力な呪いなのだとしたら、ただ昏睡してるだけの状態は軽すぎる。複数の呪いだとしても同じ。六眼で見られることを前提にこうしているとして、僕の目から何を隠そうとしてるのかも不明だ。そもそもの話、なぜ津美紀を呪ったのか目的も謎」

 

 お手上げ、と五条さんは手を上げた。

 

「結局のところ何もわからないってことに尽きるかな」

 

「じゃあ津美紀は…………」

 

 恵君が下を向き、悔しそうに拳を握りしめる。

 

「そもそも、さあ」

 

 そんな恵君を見ながら、五条さんはあっけらかんとした様子で言い放つ。

 

「桜がどうにかすればよくない?」

 

「へ?」

 

 なんでそこで私が出てくるのだろうか。

 困惑してしまう。

 

「裏月さんがなんとかできるんですか!?」

 

「え、えと」

 

「桜、自分の力忘れたの? ぐちゃぐちゃのコードで何がどうなってるかわかんなくて、ほどき方もわからない。じゃあもう全部まとめてゴミ箱に捨てればいい。それで綺麗さっぱりだ。ましてや津美紀は非術師なんだから、捨てちゃいけないコードも別にない。簡単でしょ」

 

「…………あ」

 

 呆れたように言う五条さんの言葉に、私はやっとこの場で何をどうすればいいのか気づく。

 簡単だ。

 たしかに私ならあっさりと解決できるかも。

 

「やっと気づいた?」

 

「は、はい。ごめんなさい、気づけなくて」

 

「大事な友達がこうなってテンパるのはわかるけど。ま、珍しく子どもらしい桜が見れて面白かったかな」

 

 ニヤニヤと笑う五条さん。

 私は自分の未熟を突きつけられるようで、ただただ恥ずかしい思いをする。

 テンパってた。

 その通りだ。

 シンプルに考えるだけでよかった。少し考えれば私にとって、解決が難しくないことは気づけた。

 

「…………解呪できるんですか?」

 

 私と五条さんの様子に、希望を見たかのような顔をして恵君は言った。

 その言葉に私はしっかりとうなずく。

 

「できると思います。解呪とは違うんですけど。ただ、私の術式を津美紀ちゃんにかけることになるのですが」

 

「それで津美紀が元に戻るならやってください。裏月さんなら信頼できます」

 

「…………ありがとうございます」

 

 恵君の許可をとって、私はリヴァイアサンを呼び出す。とてもちっちゃい超小型サイズで。

 それを十体。

 

「津美紀ちゃんにかかってる呪いを吸収して取り除きます。五条さん、六眼で道案内をお願いできますか?」

 

「いいよ」

 

 十体の超小型リヴァイアサンたちが、津美紀ちゃんの体の中に沈み込むように入っていく。

 溶かすのは呪いだけ。

 くれぐれも体を傷つけないように気をつけつつ、六眼で呪いを視認できる五条さんの指示に従って、一つずつ溶かし吸収して取り除いていく。

 

 と、そんな中で五条さんが驚いたように言った。

 

「…………なるほど、これを隠してたのか」

 

「何か見つけました?」

 

「呪物がある。封印状態だけど、この感じは特級呪物かな」

 

 その言葉に私も驚く。

 特級呪物なんて、そんな危険なものが津美紀ちゃんの体に取り込まれていたなんて。

 だとすれば。

 ぐちゃぐちゃのコードみたいに絡み合っていた複雑な呪いも、これを六眼から巧妙に隠すためのものだった?

 

「目的は呪物の受肉? こっちは遠隔で封印を解くためのマーキングか? …………どうやらこの呪いをかけたやつは、ただものじゃなさそうだね」

 

 五条さんが真剣な顔をして言った。

 

 目的はわからない。

 でも、背筋に怖気が走るような不気味さがあった。

 津美紀ちゃんに呪いを仕掛けたのは、ただの愉快犯的な呪詛師や呪霊じゃない。

 もっと悍ましい、何かだ。

 

「これも吸収しちゃいますね」

 

「桜、もしかして特級呪物も溶かせるの?」

 

「? 溶かせそうですけど」

 

「…………相変わらず規格外だね。特級呪物って普通は破壊できないんだけど」

 

「そうなんですか?」

 

「やっぱり、桜の力は常識の外にあるみたいだ」

 

 五条さんが楽しげに笑う。

 

 まあ、特級呪物が破壊できないというのは、あくまで物理的な話なのだろう。私の『メルトウイルス』に溶かせないものなどないのだから。

 呪いだろうと、物だろうと、精神だろうと。

 すべてを溶かす毒だ。

 

 そうして多分、数分くらい。

 

「うん。これで終わりかな。津美紀にかけられていた呪いは、呪物も含めて全部取り除かれたよ」

 

「…………ふう。よかったです」

 

 作業を終えて、息を吐く。

 

 見れば津美紀ちゃんの額に現れていた印も消え去っていて、なんとなくだけど、さっきよりも少しだけ寝息が穏やかに聞こえる気がした。

 

「ありがとう、ございます…………っ!」

 

 恵君が涙を堪えた表情で私と五条さんに頭を下げた。

 

「桜がいてよかったね、恵」

 

「はい、本当に…………」

 

「あはは、津美紀ちゃんのためにできることをしただけですから。私も、安心しました」

 

 穏やかに眠る津美紀ちゃんを見る。

 最初、恵君からの連絡を受けたときは本当に焦ったけど、なんとかなった。

 安心して、少しだけ涙が出てきた。

 

 よかった。

 本当に。

 

「今の津美紀は、桜が呪いを取り除いたからもう危険はないよ。でも、昏睡状態になってるのはおそらく呪力にあてられた結果だろうね」

 

「…………目覚めますよね?」

 

「時間はかかるかもしれないけどね。大丈夫。そのうち問題なく目覚めると思うよ」

 

 ホッとする。

 五条さんが言うなら間違いないのだろう。

 

 こうして。

 津美紀ちゃんが何者かに呪いをかけられたという事件は、ひとまず解決した。私と五条さんは最後まで恵君に感謝を伝えられながら病院を出た。

 

「結局、さ」

 

 五条さんは呟く。

 

「誰が何のために、なんだろうね」

 

 正体も目的も、不明。

 だけどたしかに感じるのは、恐ろしい何者かによる不気味な悪意。

 私はそこはかとない不安を抱く。

 

 しかし、五条さんは明るく言った。

 

「ま、なんとかなるでしょ!」

 

「…………」

 

「僕は最強だし。桜もいる。憂太も今後、僕や桜と同じ領域に上がってくるだろうし」

 

「憂太?」

 

「新入生の乙骨憂太君。前に桜に話したでしょ。新しい特級術師だよ」

 

「ああ、あの…………呪術に関わったことのない一般出身で、特級スタートの。その冗談はもういいですよ」

 

「冗談じゃないよ」

 

「…………本当に?」

 

「マジ」

 

「…………………………そっかあ」

 

 新入生、こわい。

 正体不明の津美紀ちゃんに呪いをかけた何者か。突然現れた一般出身の特級術師。

 こわい。

 どっちも怖くて、私はこの先の未来がいろいろと不安になってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

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