あっ幸運体質だ、ラッキー!   作:睡眠人間

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笑ってください。ギャグ回です


防衛任務

「午後は防衛任務だから早退する」

「先生おれもです」

 

 招木と迅が担任に報告した。クラスメイトなので報告先が同じなのだ。「わかりました、頑張ってね」と応援する教師に頭を下げて、二人は職員室を出る。

 

「ついて来ないで」

「無茶言わないでよ」

 

 招木は歩く速度を上げた。迅に隣を歩かれたくないからである。だが嵐山がこちらに向かってくるのを見つけて足を止めた。

 爽やかな笑顔で嵐山が二人に声をかける。三人は廊下の隅に寄った。

 

「二人は今から防衛任務か。招木は初めてだよな? 隊は違えど迅もいるから安心して励むといい」

「嫌」

「おまえ本当に嫌われているな……」

「それだけのことしたからね。何度も謝ってるんだけど」

 

 直接的に嫌悪感を向けられても迅は平然としている。

 この男がいるから大丈夫だとは思うが、招木の初めての防衛任務に、嵐山はどうしても不安が拭えない。

 嵐山は招木が近界民に好意的であると考えている。家族を殺すよう願った疑惑があるからだ。憎い存在を殺してくれたトリオン兵に関心があり、ボーダーに所属する理由も奴らに近づくためと公言している。

 そんな彼女が第一次近界民侵攻以来、初めて生の近界民と遭遇するかもしれない。

 そうしたら招木はどんなことを思うのだろう。何を願うのだろう。それによって、嵐山の家族や仲間に重大な影響が出て来ないか、それを心配している。

 

「招木。俺とおまえは友達だ。困ったことや不安に思うことがあれば、何でも言ってくれ」

「? わかった」

 

 だが信じたいと思った。彼女と共に過ごす内、そんな邪心に呑まれる人間ではないと嵐山は判断した。

 両肩を掴んで目を合わせ、力強く言う。招木は何故急に友人と強調されたかわからず少し困惑したようだった。

 頭に「?」を浮かべて防衛任務に向かう招木の背中を見送る。二人きりになると嵐山は低い声を出した。

 

「彼女を頼んだぞ」

「任せて」

 

 迅も短く答えて招木の後を追う。

 嵐山は今日はシフトに入っていないから、彼にできることは何もない。それを歯痒く思う反面、信頼できる友人なら大丈夫だと確信している。

 招木が正隊員入りして防衛任務に出ると決まった時、同じ時間帯に迅の名前があったから、彼女の懸念事項を洗いざらい伝えていた。

 未来視を持つ彼のことだから不要なことかもしれないが、自分にできることは何でもしておきたかった。

 招木が向こう側に堕ちてしまったら、この手で止めなければならなくなる。

 その未来だけは許せなかった。

 

 

 

──────

 

 

 

 招木は隊には所属していないので、同じく無所属の正隊員たちと混成部隊を組まれていた。

 初めてということで改めて説明を受けながら巡回する。事前に訓練した通りにやれば問題なさそうだ。仮にイレギュラーが発生したとしても、指示を聞き自分で考え行動する心構えでいる。

 とはいえトリオン兵が出現しない限り街を回るだけなので、特に問題も起きずその日の任務が終わろうとしていた。

 しかしその瞬間。

 

『門発生、門発生。近隣の皆様はご注意ください』

 

 警報が鳴った。招木らがいる場所から近い。臨時で隊長を務める隊員の指示に従い、現場に向かう。

 

「混成部隊到着。戦闘を開始します」

 

 二体のトリオン兵を発見し、戦闘に入る。招木も戦闘体勢に入りつつ、その胸は高鳴っていた。

 2、3階建ての家程度の大きさをした捕獲用のトリオン兵。その名をバムスター。人を追いかけては口に呑み込んで捕えることを目的としており、その巨体故に建物に巻き込まれる被害が多い。

 あれが。あれがずっと近づきたかった近界民。

 私を地獄から救った化け物。

 あの時と同じ高揚感が全身を包む。胸が高鳴った。

 

 

 

 

 

 

 

 後に第一次近界民侵攻と呼ばれる現場に招木がいたのは偶然だった。いや、それすらも彼女が仕組んだことなのかもしれない。

 神託を受けるためと地図を出された。招木は骨のような腕を格子から精一杯伸ばし、適当に指差した。

 そこが三門市だったのだ。

 村の人間は外界との接点を求め、招木と家族をそこへ行かせる。正確には、村の権力を握るのは招木の家族だったので、彼女は無理やり連れ出されただけだった。

 

『……、』

 

 招木は久しぶりに外の景色を見た。彼女の住処は山奥の田舎の方だったので、都会そのものに慣れていない。キョロキョロもの珍しく観察する。

 人々は見たことのない食べ物を食べていて、一様に笑顔を浮かべていた。

 幸せそうだなと思った。最近、彼女の家族はとても厳しい顔ばかりしていて、あんな笑顔は暫く見ていない。

 みんなの為になることが彼女の幸せだったのに、ここしばらくはどうにも調子が悪かった。

 彼女は自覚していなかったが、この頃にはもう家族への情が消えていた。

 

 家族や周りの人間は彼女を責め立てるばかりで、奇跡を起こすためと言って座敷牢に閉じ込めたり食事を抜いたりする。しかし招木は抵抗することなく、酷い扱いを受け入れていた。

 物心ついた時からそれが当たり前だったし、それが自分の役目だと思っていたからだ。

 とても苦しかったけど、幸運が降ってくるとみんな彼女に優しくなった。

 だから期待されることが嬉しかった。

 嬉しい、はずなのに。

 

『きゃあああああッ』

 

 突然響き渡った誰かの悲鳴に招木は顔を上げる。

 目の前に化け物がいた。見たこともない異形だった。村のどの建物よりも大きくて、強そうで、目を奪われる。

 あんなの初めて見た。……。

 招木がぼーっと突っ立って見上げる間にも、街は蹂躙されていく。絶え間なく聞こえるのは絶叫と破壊音。まさしく地獄の有様だった。

 やがて誰かに衣服を引っ張られる感触がして、ハッとする。

 

『……』

 

 見れば、家族が頭を地面に擦り付けていた。彼女を崇めるように円形に並んで平伏していたのである。

 すぐそこに人を襲う化け物がいるのに、彼らは逃げようとしなかった。頭がおかしいので祈ることが救いに繋がると本気で信じていたのである。

 

『神の子よ、お助け下さい』

『神の子』

『神の子』

 

 逃げ惑う人々で埋め尽くされる中、その空間だけが異常だった。

 誰も動かないのだ。青い顔をした家族はひたすらに「神の子」と呼ぶばかりで、招木に全てを託して土下座している。

 

『……、』

 

 周りには逃げ遅れて巻き込まれた死体がたくさんあった。

 さっきまで悲鳴をあげる人間だったものが、肉塊に変わって大人しくなった。

 誰も生きていなかった。

 だから招木は、この人たちがそうなりますようにと願った。

 家族に死んでほしいと願った。

 招木が一言でも言葉を発すれば彼らは動いただろうが、結局最後まで彼女は口を開こうとしなかった。

 

『ギャッ』

 

 気づけば家族だったものが大きな血溜まりの中にいた。トリオン兵に殺されたのだ。

 招木は恐怖しなかった。心の中には安堵のみが広がっていた。

 もう誰も自分に期待しない。理想を押し付けない。都合のいいものとして扱わない。

 開放感に胸がいっぱいになって、澄み渡る青空のような気分でトリオン兵を見上げた。

 

『私は幸せよ』

 

 掠れてほとんど音にならない声で囁く。

 この化け物は家族を殺してくれた。大嫌いで、憎くて、死んで欲しかったんだと自覚させてくれた。

 この時に招木は近界民への強い関心を得る。

 そしてトリオン兵が招木に狙いを定めた。ズズズと音を立てて近づいてくる。招木はただ見上げるだけだった。

 どうせ死なないと思ったのだ。

 高いところから飛び降りようとしたり、刃物を自分の体に刺そうとしたり、そういうことを何度も試したけど、結局できなかったからだ。

 だから逃げない。

 トリオン兵の口が大きく開き、彼女を丸呑みしようとした瞬間、

 

『!』

 

 誰かが近界民を一撃で倒した。迅だった。

 

『大丈夫か?』

 

 迅はこの場唯一の生存者の顔を見て、目を開く。招木の未来を視たのだ。

 

『……ッ』

 

 迅はぐっと耐え難いような、苦しむような表情を浮かべたが、すぐに別の現場へと向かう。

 彼は立ち止まるわけにはいかなかった。

 招木はその背中を見つめるだけだ。やがて救急隊に保護されるまで、雨に打たれながらその場に立ち尽くしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 嵐山の推測は正しかった。招木は家族に死んで欲しかったし、憎い存在を殺してくれた近界民に好意的だった。

 しかし。

 

「!」

 

 招木がずっと焦がれていたトリオン兵は、他の隊員たちによりあっさり倒された。

 当然だ。この程度の敵に苦戦するような隊員は正隊員ではない。招木だって一瞬で倒せるくらいの敵なのだ。……その程度の化け物だった。トリオン兵の出現はイレギュラーでも何でもない。

 この後は現場調査をして回収班を呼び、撤収。再び巡回ルートに戻るだけ。防衛任務の通常通りの流れである。

 指示を受けてテキパキ動く招木は、その合間にトリオン兵の残骸を見た。

 

「呆気ないのね」

 

 自分を地獄から救った化け物はいとも簡単に駆除された。

 その事実に、心が冷めていた。

 

 

 

─────────

 

 

 

「え、じゃあ何も思わなかったのか」

「うん。訓練で何度も対峙した時と同じ。生のトリオン兵を久しぶりに見たけど、簡単に倒せるんだなって。それだけかな」

 

 初の防衛任務を終えた招木を捕まえ、嵐山は早速感想を求めた。すると心配していたようなことは起きておらず、かなり安堵する。

 招木が嘘をついている可能性も考えたが、彼女は素直だし正直者だから一瞬で撤廃した。

 学生椅子の背もたれに身を預けて嵐山は深く息を吐く。

 

「そうか……。そうか、うん。ならよかった」

「よかった?」

「初めての実戦で怖がったり不安になったりする隊員もいるからな。招木はそうじゃないみたいで、安心したよ」

 

 危惧していた展開にはならなかった。よかった。本当によかった。

 噛み締めるように嵐山が目を閉じていると、二人が座る机に男子生徒が近寄ってくる。

 

「いやー、昨日は大変だったね」

「嵐山。場所を変えよう」

「こらこら。迅はここのクラスなんだから」

 

 迅だった。嵐山は他クラスなので勝手に招木の前の席を借りただけで、本来の部外者は彼の方だ。しかし招木がかなり素っ気ないので、部外者は迅みたいになっている。

 迅は招木の言うことを流して手近な席を引っ掴んで腰を下ろす。三人席を無理やり作って話に加わった。

 招木は迅の感想に反発する。

 

「大変といっても、別に大したことなかったよ。遭遇したのも二体だけだし、私は何もしていない」

「あれ? 昨日はかなり数が多かったって聞いたぞ」

「そうなの? 応援要請が全くなかったからわからなかった」

 

 招木の言葉に、嵐山は思うところがあって迅に視線を向けた。これが昨日迅がシフトに入っていた理由かと気づいたのである。

 忍田本部長が「無茶なことを」と言っていたのは、迅が必要以上に敵を狩っていたからだ。

 迅が担当したエリアと、招木がいた混成部隊が担当したエリアは隣接していた。

 もし隣接エリアを迅ではない他の部隊が担当していたら、応援要請があっただろうし、招木のトリオン兵に向ける目が変わったかもしれない。

 つまり昨日の迅は、あえて招木にトリオン兵のしょぼいところを見せるために、めちゃくちゃ頑張って倒したというわけだ。

 

「お疲れ。感謝する」

「実力派エリートだからな。どうってことない」

 

 訳知り顔で頷き合う男子二人を、招木は不気味なものを見るような目で見ている。

 それ以上招木は迅と話す気がないようで、さっさと席を立った。暫くは戻ってこないだろう。

 招木が立ち去った方向を見たまま、嵐山は迅に視線を向けず口を開いた。

 

「なあ。迅。招木のサイドエフェクトの噂を広めたのはおまえだな?」

「そうだね」

 

 迅はあっさり肯定する。

 彼女の噂を流し、誰かが招木に関わることで良い方向に成長するよう導いたことを認めた。

 

「どうしてそんな回りくどいやり方を選んだんだ? おまえが招木の友人になる未来だってあったんじゃないか」

「すごい嫌われ方してるのに?」

「原因を作ったのはおまえだ。その意図を聞きたい」

「うーん」

 

 少し間を空けて諦めた声色で迅が言う。

 

「どうやったっておれと招木は噛み合わないんだよね」

「何故?」

「おれが初めて彼女にサイドエフェクトの話をした時さ、招木はおれになんて言ったと思う?」

「……何を言われたんだ?」

 

 迅は寂しげに笑った。

 

「きみは未来の奴隷だね、って」

 

 

 

─────────

 

 

 

 迅が自身のサイドエフェクトについて話した時、招木は酷く顔を歪めていた。嫌悪感をこれ以上ないほどわかりやすく全面に押し出したのだ。

 それは嵐山の「家族が大事」という考え方を拒絶した時によく似ていた。

 

『君は未来の奴隷だね』

 

 はっきりと、侮蔑を込めて、招木が吐き捨てた。

 迅の未来視は、幸運体質を持つ彼女にとって大きな地雷だったのだ。

 

 当時の招木の思考回路を解説すると以下の通りだ。

 幸運体質? 生きているだけで恵まれている? 冗談じゃない。やることなすこと全てを「神の御技」と崇められ、望まない結果であれば「祈りが足りない」と折檻された。

 その内望んだ事象を引き起こすコツを理解したが、家族を憎く思えばそれも使えなくなった。

 幸運は決められた結果を辿らせるための呪いであり、選択肢なんてない。何をしようと何をしなくとも意味はない。何も変わらない。

 

 それなのに、目の前の男。迅の持つサイドエフェクトは未来視だと言うじゃないか。

 未来が見える? じゃあ良い未来をいくらでも選べるじゃないか。この男が望めば何でもできる。

 短絡的で視野の狭い招木は、彼が背負う責任の重さに気づかずに詰った。八つ当たりだったし、明確にこの男を傷つけたいと思ったのだ。

 何をしても結果は変わらない招木と、何かをしなければ結果を変えられない迅。この二人の相性は致命的だった。

 

『……、そう言われるとわかってたけど、きついな』

 

 この未来を選んだのは自分だが、かなり堪えた。

 忘れられそうにない胸の痛みに、彼女を変えるのは自分じゃないと思った。……そういう未来を選択した。この苦しみを抱えたまま招木と仲良くできるほど迅は成熟していなかった。

 それからクラスメイトに避けられる日々が続いたが、やがては終わりを迎える。

 招木が丸くなったのだ。

 

『あの、迅。少しいい?』

 

 色んな人との交流を経て、招木は迅に「謝らなきゃ」となった。傷つけたことを反省し、謝りに来たのである。

 迅には二つの未来があった。招木に謝られて、許して、仲良くなる未来。そしてもう一つ。

 彼が選んだのは後者だった。

 

『後ろ向いてくれる?』

『後ろ?』

 

 くるりと背中を向けた招木の尻をすぺんと撫でる。

 

『!??』

 

 招木がビャッと後退した。何が起きたかわかっていない顔である。

 ああそうか、わからないんだ、と自然に思って迅は言った。

 

『嫌だったでしょ』

『??』

『おれは招木に嫌なことしたよ。嫌われるくらい嫌なこと』

『どういうこと?』

 

 しかし招木はまだまだコミュニケーションが苦手なので、迅の求めていることがわからない。

 コミュニケーションというかパーソナルスペースがおかしいというか危機管理能力に欠けているからだ。

 なので仕方なく、本当に仕方なく迅は招木が「嫌」と言うまで尻を触った。これは誓って不可抗力であり、ここまで手こずると思っていなかったことを彼の名誉のために明記する。

 

『迅。嫌い』

 

 やっとのことで答えを引き出すと、迅は「まあまあ。これでおあいこってことで」と言った。

 招木の謝罪をなかったことにしたのだ。

 何故なら迅も招木のサイドエフェクトに苦手意識があったから。

 

 彼女が抱える幸運には二種類存在する。

 招木が認識する、利益があると思い込む幸運。そして認識していない、無意識的に幸運体質が決める幸運だ。

 やり方次第で強制ハッピーエンドにいける下地があるのに、その道を選ばない彼女が理解できなかった。生きているだけで幸せを確約された一本道を歩けるのに、それを放棄する彼女が憎かった。

 

 けれど迅が見た招木の未来は、どれもバッドエンドで終わっている。いや、彼にとってのバッドエンドであり、彼女にとってはハッピーエンドなのだろう。

 招木は抗えない幸運によってそう思い込まされている。

 なら迅はそれを変えたいと願った。

 招木が周りの人間を巻き込む幸せを願えば、必然的に迅にとってのハッピーエンドに繋がるから。

 自分のために、みんなのために、招木の幸せを歪めることを選んだ。

 迅が未来の奴隷とするならば、招木は幸運の奴隷だった。

 

『おれのこと嫌っていいよ』

 

 おれのこと許さないでね、という意味だった。

 謝らないでね、という意思表示だった。

 傷つけたことを謝りたいだけで、招木はいまだに未来視が苦手だし迅も幸運体質は苦手だ。この意識はそう簡単に拭えるものじゃない。

 それに招木は自分が関わらずともあんなに良い成長を遂げた。ならおれじゃなくて大丈夫だ。おれが友達じゃない嫌われ者でも。

 迅は招木と深く関わる未来を選ばなかった。

 サイドエフェクトをあのタイミングで語ったこと、招木の謝罪をなかったことにしたこと、既に二回迅は招木を遠ざけている。

 しかし。

 

『話がある。迅、来てほしい』

『またぁ?』

 

 招木は素直なので、やっぱり時間が経つと「あの時のこと謝らなきゃ」となる。「迅嫌いモード」の隙間に「申し訳ないモード」が来る。

 その度に迅が尻を触り、謝らせないようにした。嫌われるように仕向けた。ここまでしないと招木は絶対に謝ってくるのだ。

 迅が違う方の良い未来を掴もうとしているのに、招木は二人が友人になるルートを強制的に選んでくる。

 それが不可解で、どうしようもなく嬉しくて、けれど胸の痛みを受け入れることができなくて、後回しにしてしまう。

 

『、っ』

『これは抵抗できないんだね』

 

 迅が招木の尻を撫でる時、相手の身体は不自然に硬直する。幸運体質のせいで動けないのだ。

 つまり無意識に幸運体質が謝らないルートを選択した。彼女は意識的に謝ろうとしているのに、その自我を上回っていることになる。本人が幸運体質を自分のものだと認識したところで、意志が強く分たれている時は馴染むまで時間がかかるみたいだ。

 まあその方が助かるけど、と思いつつ、理性が本能を打ち破る日を待ち遠しく思う自分もいた。

 いや早く来てもらわないと困る。合法的に尻を触れるからって既に一番尻を触った相手になっている。このままだと会うたびに謝ろうとする招木と尻を触る迅という最悪の構図ができてしまう。

 

『おれ、あと何回触ればいいの?』

 

 しかも相手が強制的に回避できないから罪悪感がすごかった。ほとんど撫でられ待ちみたいになっている。

 ビンタの一つでもくれたらいいのに、招木は「嫌い」と言うだけだった。耐久力も上がっているみたいでセクハラの時間も伸びているし。

 これ絶対良くないよなと思いつつ、正直満更でもないと思う自分がいた。男なので。







嵐山は家族方面で招木と考えが合わないし、迅もサイドエフェクト方面で交わらないです。おいしいですね。


自分は欲深いので、尻を触られても嫌と思わない招木を心の底から嫌と思わせるまで迅が尻を撫で続けたシーンで1話描きたいなと思いました。

あとお姉さまたちに触られた時の学習を間違った方向に出力してしまい「嫌だったでしょ」「ううん、嬉しい」「!!?」て事故るバージョンも見たい。
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